ATTAIN PERFECTION
赤峰幸生が最後に辿り着いた服 第3回:愛してやまないフォックス ブラザーズ
January 2023
photography tatsuya ozawa
special thanks to RISTORANTE LA BISBOCCIA
赤峰幸生 / Yukio Akamine(左)1944年、東京都生まれ。90年、自身の会社インコントロを設立。98年、イタリア生産による紳士服ブランド「Y.Akamine」をスタート。2008年、カスタムクロージングのブランド「Akamine Royal Line」を立ち上げる。今、大切にしているのは「クラシック」の本質を若い世代に継承してもらうこと。20代、30代の赤峰ファン多数!
ダグラス・コルドー / Douglas Cordeaux(右)1964年生まれ。テキスタイルデザイナーとして17年間のキャリアを積む。2008年にフォックス ブラザーズの経営権を取得。CEOに就任し、破綻寸前だった同社の立て直しに成功。英国屈指のウェルドレッサーとしても名高い。この日はミラノのA.カラチェーニで仕立てたフランネルスーツを着用。シャツはバドシャツメーカーのビスポーク、タイはドレイクスだ。
素晴らしい生地のコレクションを前にすると、ひとつひとつ手で触れて確かめては満面の笑みを浮かべる赤峰幸生氏。氏が惚れ込んだ生地は、晴れてアカミネロイヤルラインの生地コレクションの仲間入りを果たすわけだが、フランネルの大半を占めているのが、英国南西部サマセットのウェリントンにて1772年に創業したフォックス ブラザーズのそれである。来日していたCEOのダグラス・コルドー氏にも加わってもらい、広尾のリストランテ「ラ・ビスボッチャ」で話を伺った。
赤峰 ダグラスさんが入ってから、フォックス ブラザーズは毎シーズン新しい生地コレクションを発表するようになって、定番生地の中に新しい色柄が入ってくるようになりました。ダグラスさんはジェントリーで大変趣味がよいので、それらの生地はいつもずっと眺めていられるほど素晴らしい。そして、今でもついつい欲しくなってしまうんです。これだけは歳を重ねても一向に直らないですね。
生地を眺め、触りながら、楽しそうに歓談するふたり。コルドー氏は生地を企画する際、毎回赤峰氏からさまざまな助言を得ているという。
コルドー ははは、赤峰さんにそういってもらえると、とても嬉しいです。幸いにも創業250周年を迎えるフォックス ブラザーズの本社屋には膨大な量のアーカイブがあるのですが、新しいコレクションはすべてそこからヒントを得て生まれます。そして今回、赤峰さんにとても気に入ってもらえたのが、カシミア混フランネルです。創業250周年を記念して生まれた生地ですが、カシミア混にしたことで、従来よりも柔らかみが増して、それでいて芯はしっかり備えた生地で、色合いも美しく、とても素晴らしい仕上がりです。
赤峰 フォックス ブラザーズのフランネルはコシがあってしっかり芯を残し、反発力を備えているのが魅力なのですが、カシミア混フランネルは一歩進んだところでそれが表現されています。グレイ、ブルー、ブラウンと、それぞれ色幅を揃えていて、私の好みど真ん中のものがしっかり入っています。ダグラスさんが企画する生地はサスガだな、というところでしょうか。私はフォックス ブラザーズの生地を何十年と着てきて、それが素晴らしいものであることを肌でわかっています。一生付き合っていける生地ですから、作るのは早ければ早いほどいい(笑)。
ダグラス そうですね!
こちらはウールンフランネル。柄ものに関しては、特に写真のガンクラブチェックとハウンドトゥースチェックが好みという。
左:ウール100%のフランネルでは、ヴィンテージテイストのストライプが好みだそうだ/右:クラシックなウール100%のブルーフランネルならこちらの色。独自のレシピによる、芯があってしなやかさを備えた風合いが堪らないという。
コルドー氏が今回日本に持ってきた中で特に赤峰氏の目を引いたのが、創業250周年を記念して企画された「1772」コレクションの、ウール90%、カシミア10%のフランネル(現在バンチブックを製作中)。赤峰氏が気に入ったのは、明るいトーンの上品な色合いによる、こちらの三つ。カシミア混によって風合いも柔らかになったが、色合いもまたより美しくなっている。