A BLISSFUL SILENCE

ラルディーニが尊敬する国、ニッポン

April 2021

イタリアの人気ブランド、ラルディーニは、2021年春夏コレクションで、イタリア人のイマジネーションと日本の自然の美しさを融合させた。

 

 

 

text chris cotonou

 

 

ラルディーニの創設者にしてクリエイティブ・ディレクター、ルイジ・ラルディーニ。

 

 

 

 日本で“スーツ”を意味する“背広”は、イギリスのサヴィル・ロウにちなんで名づけられたといわれている。しかし、日本人が現代的なスーツの作り方を学んだのはイタリアの“センセイ”たちからだった。彼らはソフトショルダーのシルエットやロールラペルを、ナポリから持ち帰ったのである。

 

 では逆に、イタリアのデザイナーが、日本に目を向けるとどうなるのだろうか? イタリアのクリエイションと日本の瞑想的秩序を融合させ、陽と陰ともいえる両者の文化が、中間地点で出会うと何が起こるのか?その答えがラルディーニの2021年春夏コレクション“アート・オブ・サイレンス”だ。

 

 創業者でクリエイティブ・ディレクターのルイジ・ラルディーニは語る。

 

「日本とイタリアのクラフツマンシップは、お互いに尊敬し、理解し合ってきました。それが私にインスピレーションを与えてくれたのです」

 

 1978年に彼が10代で設立したブランドは、イタリアのマルケを拠点とし、革新的なテキスタイル、ファミリーの強い絆、サステナビリティなどで知られている。それは日本のブランドとの共通点でもある。

 

 

ブランド・マネージャーであり2代目でもあるアレッシオ・ラルディーニ。

 

 

 

 ルイジとブランドマネージャーであり2代目でもあるアレッシオ・ラルディーニは、アート・オブ・サイレンスのために日本を旅し、大いなる自然の恵みにインスピレーションを受けた。さまざまな織柄やモチーフは、農村の風景や竹林の色、桜の静けさなどをモチーフとしたものだ。イタリア人としての矜持を感じさせつつ、古き良き日本の美を感じさせるコレクションだ。

 

 環境にも配慮されている。製品にはペットボトルから作られた“レクスクルーシブ”ファブリックが使われている。ハンドプリントのサファリジャケット、新しいナチュラルカラーの“ルクソール”トラウザーズ、リネン×シルク素材のアンコン・ジャケット、そしてトンボや竹のイラストをあしらったフィルクーペコットンのボウリングカラーのシャツなどが登場している。

 

 コレクションの名前は、自然と静寂に関する日本の文学に由来している。江戸時代の俳人、松尾芭蕉は“When the temple bell stops, the sound keeps coming out of the flowers(鐘消えて花の香は撞く夕べかな)”と詠んだ。ラペルにあしらわれる、ラルディーニのシンボルもまた花である。

 

 ルイジとアレッシオは、彼らの旅がいかにして“沈黙の芸術”にインスピレーションを与えたかを語っている。彼らは日本を旅しつつ、温泉から美しい女性まで、細かいところまで観察し、感銘を受けたという。

 

 

ラルディーニの2021春夏最新コレクションより。

 

 

 

ルイジ:「日本を旅して驚かされるのは、“秩序”がとても大きな役割を果たしていることです。イタリアに比べて、フィジカル・コンタクトはあまり一般的ではありません。この国の文化では、お互いを尊敬することが大切なのです。東洋の人々は、イタリアのイマジネーションを楽しんでくれています。彼らはオリジナリティを高く評価してくれます。そしてそれには、私たちのクラフツマンシップも含まれているのです」

 

アレッシオ:「仕事以外でも、日本の文化についての理解を深めるために、観光客として何度も日本を訪れています。私たちと同じように、彼らには古くて長い歴史があります。強固な遺産の継続――それが私たちの共通点です。私の日本での経験によると、彼らはイタリアのファッションとスタイルをとても高く評価してくれています。そして、私たちは彼らの歴史に敬意を表し、そこからインスピレーションを得ているのです」

 

ルイジ:「日本を訪れ、日本人に会うたびに、礼儀作法である“お辞儀”に魅了されます。それは頭を下げ、相手を認め、尊敬の念を抱く行為なのです。日本で特に印象に残っているのは温泉です。北海道を訪れてからは、私の毎日の生活習慣の一部として、欠かせないものになりました。忙しい日常からスローダウンでき、文化についてより深く考えることができるからです。日本は私に自然への新たな敬意を教えてくれましたが、それはこのコレクションにも反映されています。日本の公共空間は清潔で、手入れが行き届いていて、日本人はそれを誇りに思っています。私は桜など、時期によって色鮮やかに変化する日本の自然が大好きです」

 

 

ラルディーニの2021春夏最新コレクションより。

 

 

ルイジ:「私はいつも日本の女性にインスパイアされています。彼女たちの美しさ、着こなし、使う色、フィット感などに感心しています。それを新しいコレクションのための、男性的なキーに再解釈しています。私はデザイナーとして、日本に西洋的なテーラーリングが紹介される前から存在した、伝統的な“キモノ”に魅了されてきました。何年もの間、それらはラルディーニのインスピレーションの源となってきました」

 

アレッシオ:「私がインスピレーションを受けたのは、日本の芸術に描かれている自然の色です。花、植物、動物(トンボのプリントのような)、繊細な色合いなど、すべてが調和しています。ジャケット、シャツ、ネクタイのテキスタイルは、日本的な色合いであるグリーン、ブラウン、さらには桜色のピンクを取り入れたものです。ラルディーニ・スピリット・イン・ジャパンです」

 

 

生地も構造も非常に軽量なダブル・ブレステッド・ジャケット。通気性の良いリネン素材を使用し、フロントにはパッチポケットが付いている。THE RAKEのサイトでは、さまざまなラルディーニのアイテムを購入できる。他の多彩なアイテムはこちらより:Lardini at The Rake

 

 

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THE RAKE JAPAN EDITION issue39