鴨志田康人:大研究
世界が見る鴨志田康人のスタイル vol.3
May 2021
photography jamie ferguson
Allan Baudoin / アラン・ボードインリセ・サンルイ、ユニバーシティ・カレッジ・オブ・ロンドン卒業後、ロンドンビジネススクールで修士号を取る。アップル社を経て、2013年アラン・ボードイン・ブートメーカーを創業。投資家でありレーシングドライバーのボー・ヴァン・ラグヴェルドと共に2016年ボードイン&ランジを設立。クリエイティブディレクターも兼任。
鴨志田氏はボードイン&ランジを日本市場へ紹介した先駆けのひとりだ。
「ベルジャンシューズはニューヨークのストアのオリジナルが好きだったし、コピー商品も出回っていましたが、彼のものは一見似ているけれど、コンセプトも作りも違う。より洗練されたデザインです。その後、彼のサンジェルマンにある家を訪ねたりするうちに、その美意識がどこから来ているのか、理解するようになりました」
ボードイン&ランジのクリエイティブディレクター、アラン・ボードイン氏は彼のスタイルとの共通点をあげる。
「彼は日本市場に紹介前にウェブサイトでいち早く購入してくれ、注文を入れてくれた。それが2017年2月でした。
初対面は非常にシリアスな人という印象でしたが、今は全く違います。
素材や質感、カラーパレットへのアプローチと研究は非常に日本的ですが、その深度は何かを証明するためではなく、情熱や知的好奇心に基づいている。
彼の作る服や着こなしには文化的な背景があり、これはとてもヨーロッパ的です。パリやミラノのバーやカフェでのサービスといった些細なディテールに価値を見いだしている。私と同じ、パリジャン的な人生の捉え方です。
これが彼のスタイルだと特定するのは難しいのですが、〝こうするべき〟だという装いを明らかにわかっていて、意図的にルールに従わないやり方は私も同様です。これも実にフランス的だと思います。
さらにその部屋の中で“ベストドレッサー”には決してなりたくない。過剰な自意識はエレガントでないからです。
スタイルについて考えるとき、私は父や祖父を思い出します。エレガントであるというのは、自分が誰であるか、人にどう接するかによって決まります。
フランス語ではエレガントというのは人々の行いに対する表現なのです」
以前から鴨志田氏と共通の美意識を感じていたというボードイン氏。「数年前、ピッティの数日前、余りの暑さにテニスショーツと半袖シャツという普通では考えられない気軽な服装で街を散策中に、全く同様の装いの鴨志田氏を見かけたんです。知り合う前でしたが挨拶を交わし、人生や仕事に対して小さなリスクを恐れずに人生を楽しむ姿勢が同じだとわかりました」