Tuesday, February 17th, 2015

マーキス ビスポーク

MARQUESS BESPOKE
本家英国の靴名人に心酔された男

SHOJI KAWAGUCHI 川口昭司
1980年福岡県生まれ。2002年に渡英し、靴職業訓練学校で靴作りを学び、2003年よりビスポーク靴職人に弟子入り。
フォスター&サン、エドワード グリーン、ガジアーノ&ガーリングなどのビスポーク靴の製作に従事し、2008年に帰国。
2011年に自身のブランド“マーキス ビスポーク”を始動。
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究極のフォーマルシューズ左:大変貴重なベビーカーフのパテントレザーで仕立てたサイドエラスティックシューズ。プレーンだからこそ美しさがより際立つ、この上なくフォーマルな一足。スリッポンは2足目からの対応となる。¥348,000~ Marquess Bespoke

息をのむ美しさの“マーキスラウンド”右:上から見るとラウンドトウ、横から見るとチゼルトウという、スぺシャルなトウフォルム“マーキスラウンド”のフルブローグ。縫製の美しさ、ピンキングの繊細さも目を見張るものがある。¥318,000~ Marquess Bespoke

 いつもニコニコ、笑顔が最高だ。周囲からは“ショージ”の愛称で親しまれている。2002年に渡英し、靴職業訓練学校卒業後はジョージ クレバリー、ジョン ロブパリなどのビスポーク靴職人であったポール・ウィルソン氏に師事。その後数々のビスポークシューメーカーのアウトワーカーとして働き、2008年に帰国した。
 が、その腕があまりによかったこともあり、2011年に自身のブランドを始めるまで、日本にいながら英国ビスポークシューメーカーのアウトワーカーを頼まれ続けていた。郵送のコストを考えるとかなり割高になるにもかかわらず、だ。なかなかのエピソードである。
 2011年に自身のブランドを始動すると、マーキス ビスポークの靴は瞬時に注目を集めた。満を持してのデビューだったこともあり、新人とは思えない別格のクオリティを誇っていた。彼が当時から一貫して好んでいるのは、20世紀初頭に作られた、英国のハンドソーンウェルテッドシューズだという。そこにあるのは、靴としての究極の作りと、シンプルさを突き詰めたことから生まれるエレガンス。華美な色気ではなく、日本の侘び寂びに通じる世界に惹かれたのだという。そしてそれは、マーキスの靴を言い表すのにもぴったりの表現だ。
 フィッティングに対しても強いこだわりをもち、いかに快適に、かつ美しく見せるかにこだわっている。“快適に”の部分では、ベロのアタリを出さないよう、裏の充て革を省いたり、ライニングのステッチを最小限に抑えたりするこだわりようだ。“美しく”に関しては、正解はひとつではないが、例えば足の肉を縦に持ち上げてフィットさせ、その状態でどこで支えるかをその人の足から判断してラストメイキングし、足を細く見せている。
 奥様である由利子さんの存在も欠かせない。同じ師匠のもとで同時期に英国で靴作りを学んだ彼女は、凄腕のアッパーの縫製担当として氏の仕事を支えている。最高の理解者であり最良のパートナーだ。
 はたしてこれ以上進化の余地があるのだろうか、とマーキスの靴は思わせるが、いや彼は絶対に止まらない。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 02

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