I’VE SEEN THE LIGHT

初めてのモーニングコートを誂える

December 2018

text wei koh
photography kim lang

完成したグレイ・モーニング。バックのボタンはかつて前裾を留めていた名残り。シャツとタイは、パリのシャルベにて調達。木製の柄のついた傘を持つのが正しい。

 シューズは、ブローギング(穴飾り)を施していないオックスフォードを、軍事パレードの参加者のごとく磨き上げる。乗馬に関する場では、ジョッパーやチェルシーブーツという選択肢もある。シャツの襟とカフスは白で、タイは適切な位置にタイピンで留める。ブートニエールとチーフが必要なのはいうまでもない。

 モーニングのてっぺんで輝くアイテムは、シルクのトップハットだが、本物のシルク帽を製造する工場は何十年も前に全焼し、その製法も失われてしまった。そのため今日のハットは、艶を放つように仕上げたラビット・ファー製である。

 グレイのモーニングコートはブラックよりカジュアルだとされていたが、アスコット競馬などで人気を博し認識は変化した。グレイのモーニングを、ロイヤル・ウェディングのような場でも着用できるよう押し上げた人物がいる。それはチャールズ皇太子に他ならない。殿下は世界で最も見事なミドルグレイのモーニングをお持ちだ。アンダーソン&シェパード時代のジョン・ヒッチコック氏が手がけたもので、殿下はハリー王子とメーガンさんの結婚式でもお召しになった。

モーニングは英国文化 モーニングコートの製作を決意した私に、シャリーがさらなる助言をくれた。「真に完璧で正しいものにするために、イギリスのテーラーへ行ってはどうだろう」と言うのだ。そこで私が向かったのは、サヴィル・ロウの老舗ハンツマンだ。

 カッターのダリオ・カルネラ氏は、きわめて謙虚で親しみやすい男性だ。私は彼にすべてをお任せすることにした。ロイヤル・エンクロージャー(特別観覧席)で、私が成り上がりアジア人のように見られる事態を、この人なら防いでくれるだろう、という期待を込めて。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 25
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