I’VE SEEN THE LIGHT

初めてのモーニングコートを誂える

December 2018

THE RAKEの創始者ウェイ・コーが、初めてのモーニングスーツを仕立てた。
選んだのは、英国サヴィル・ロウの老舗ハンツマンだ。
新たな装いは、晴れやかなふたつのサマーイベントで披露された。
text wei koh
photography kim lang

パイピングを施した、ブラックのモーニングコートとウエストコートとともに、カシミア・ストライプ(この場合は柄を指す。生地はウール製)のトラウザーズを身に着けたウェイ・コー。仕立ては英国サヴィル・ロウの老舗、ハンツマンだ。

 私の親友、アーメド・“シャリー”・ラーマン氏は、底なしに気前がいい。そんな彼から、伝説的な競馬イベント、ロイヤル・アスコットに誘われるたび、私は決まって「モーニングコートを持っていないんだ」と答えてきた。

 仕方ない、実情をお話ししよう。ファッション雑誌の創始者としては大変お恥ずかしいことに、私は少々だらしがない。前回のピッティ ウォモで、気温が40度近くに達する中、私は改まった格好を真っ先に諦めて、ルビナッチのグルカショーツとシャツを身に着けた。そのシャツたるや、東南アジアの売春宿で、ドアマンが着ているような代物だった。

 その日がリングヂャケットの社長、福島薫一氏と会う日であることを、私はもちろん忘れていた。私は「THE RAKE の創始者」として紹介されたが、彼は私のけばけばしいアンサンブルを二度見して「本当ですか?」と答えた。

正しいモーニングとは? 私のような初心者のためにご説明すると、モーニングコートの起源は19世紀にさかのぼる。当時の紳士はよく、前裾を斜めに裁ったロングジャケットを身に着け、朝に馬を走らせていた。そして20世紀になると、昼間用礼装として、フロックコートよりも好まれるようになった。

 最もフォーマルで正しいモーニングコートは、ピークドラペル(剣襟)のシングルブレステッドで、リンク式の留め具部分から前裾を斜めに裁っており、丈は膝まである。へちま襟またはピーク襟が付いたダブルのウエストコートを合わせ、それらにはパイピングを施すことができ、ドレススリップを採用する。ドレススリップとは、ウエストコートの上端に付ける白い生地で、下側にもう1層あるかのような錯覚を与えるというものだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 25
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