January 2024

Exclusive Interview: THE RUSSELL GROUP

俳優:カート・ラッセル、ワイアット・ラッセル ラッセル親子が歩む道

カート・ラッセルとその息子ワイアット・ラッセルが、家族の絆、映画製作の課題、それぞれの人生で歩んできた道について語り合う。愛溢れる親子の対談をお楽しみいただこう。
photography justin stephens
stylist alison edmond
special thanks to the maybourne beverly hills

Wyatt Russell / ワイアット・ラッセル(左)1986年カリフォルニア州生まれ。母は女優のゴールディ・ホーン。父カートの主演作『エスケープ・フロム・L.A.』(1996年)などに子役として出演。アイスホッケー選手となるが、怪我で引退。俳優へ転向。『カウボーイ&エイリアン』(2011年)などで活躍。「ゴジラ」初のドラマシリーズ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』(2023年〜)で父カートと共演。

Kurt Russell / カート・ラッセル(右)1951年マサチューセッツ州生まれ。野球選手から俳優へ転向した父の影響で10代からTVシリーズに出演。ジョン・カーペンター監督作の『ニューヨーク1997』(1981年)、『遊星からの物体X』(1982年)でブレイク。近年は「ワイルド・スピード」シリーズや、タランティーノ作品で活躍。私生活では、子供時代のニックネームを冠したワイン造りに励む。

Wyatt wears: スーツ ¥535,700、シャツ ¥79,200、タイ ¥37,400 all by Ralph Lauren Purple Label サングラス ¥115,500 Jacques Marie Mage

Kurt wears: タキシードジャケット ¥473,000、シャツ ¥88,000、タイ ¥34,100、トラウザーズ ¥163,900 all by Dolce&Gabbana サングラス ¥123,200 Jacques Marie Mage

 親の恩恵を受けて仕事をすることは、祝福であり、呪いでもある。学びたい、真似したいという欲求は、自分自身で道を切り開いて成功したいという欲求と同じくらい強いものだ。どうやら人間というものは本質的に、家族代々伝わるものへの興味から離れられないようだ。

 カート・ラッセルとゴールディ・ホーンは、40年ほど事実婚を貫くハリウッドきってのおしどりカップルだ。そのふたりの息子で、やはり俳優となったワイアット・ラッセルは今、父親の30代の頃と同じように人々の注目を浴びている。

 THE RAKEはこれまで、父親が人格や理念、価値観を通じて息子の人生に影響を与えられることを浮き彫りにした記事を好んで紹介してきた。今回は72歳の父と37歳の息子の対談をご覧いただこう。ワイアットがカートのキャリアを追いかけるとは限らなかったが、予測できないのが人生の醍醐味である。明らかなのは、ふたりはずっと支え合い、気遣いと愛を原動力にしてきたということだ。

―おふたりとも「俳優の父」のもとで育ちましたが、世代は違いますよね。違いや共通点はありましたか。

Kurt: 私が初めて映画の撮影現場に行ったのは、父がウエスタン映画に出演していたとき。そこで小道具係が木製の銃をくれたんだ。役者たちが銃で撃ち合いしているのを見たものだから、あんな面白いことをしてお金をもらえるなら、自分もやってみたいと思ったんだよ。

Wyatt: 撮影現場に行ったとき、俳優になって演技しようと思ったってこと?

Kurt: いや、金が欲しかったんだ。楽しいことをして金をもらいたかったのさ。

Wyatt: 僕とはだいぶ違うね。僕が父さんと撮影現場に行ったときに感じたのは、楽しくてお金も稼げるということより、ものすごくハードでストレスフルな仕事なんだなということ。その日の撮影が終わってホテルに戻ったとき、父さんは僕を寝かしつけたあと、キッチンの丸テーブルでタバコを吸いながら朝方まで書き物をしたりしていたことを憶えてる。そういうところを見るのは好きだったな。

Kurt: 思い出話はいろいろあるな。お前がまだ小さかった頃、大勢で感動するシーンを撮っていたら、お前が「ねえ、何が起こってるの?」みたいな顔で辺りを見回して、外に連れ出されたことを憶えてるよ(笑)。でも父と私も、私とお前も、決して役者の世界だけに没頭したわけではないよな。その点は似ているかもしれない。父と私は野球だったが、私とお前はアイスホッケーだった。

Wyatt: うちの家族の役者としての能力の類似点はスポーツに由来するところが大きいね。自分が何者で映画に何をもたらすことができるかという、現実的に一番大事なところは、この世界に足を踏み入れるずっと前から形作られてたと思う。

Kurt: (スポーツの経験は)闘いという意味で、世界について学ぶようなものだったよな。つまり生き残るか負けるか。役者の世界は競争というより共同作業。大歓声を浴びたからといって成功したわけではなく、失敗すればすぐに自分でわかる業界。そうやって人生を学ぶんだ。

Wyatt: 演技の話はしてこなかったね。爺ちゃんといるときは、スポーツの話のほうがはるかに面白かったな。まだ行われていない試合の話で盛り上がったよね。

Wyatt wears: ジャケット ¥460,000、シャツ ¥105,000(参考価格)、トラウザーズ ¥260,000 all by Dior

Kurt wears: スーツ ¥630,000 Dior スカーフ property of stylist

―皆、父親から似たところを受け継ぐものですが、役へのアプローチについて、おふたりに違いはありますか。

Wyatt: そんなに違わないと思うな。キャラクターを創り出して、うまく演じるという点では父さんに似ていると思う。家族がみんな家に帰ってきてから映画についてあれこれ話しているのを聞いていたけど、ストーリーのことばかりだった。役への準備は父さんに教わったわけじゃないけど、いい方法と思ったから真似ているだけ。父さんは成功したしね。

Kurt: お前はそこからどう役作りしてる?

Wyatt: まずその役の100%のところまで行ってみる。自分とは全然違う、100%振り切ったところを経験して、そこから5%のところまで戻していく。そうすると、役の5%だけがのった自分になる。それができないと、ちょっと戸惑ってしまうね。父さんはどうしてる?

Kurt: こんな話をしたことはなかったな。リアルでなければならないし、対話しながら役作りしていかなきゃならない。それから3つ目の大事な要素は監督だ。監督が思い描く作品が製作できるように、役者は自分の考えを働かせなければならない。信頼とはそのためにあるんだ。お前が所属していたアイスホッケーチームのコーチが言っていただろ。「いいプレイをすれば、他のメンバーが自分のプレイに専念できる」と。それと同じさ。

STYLIST’S ASSISTANT: CAMERON GREENE
WYATT’S GROOMER: MOLLY GREENWALD AT A-FRAME
KURT’S GROOMER: DENNIS LIDDIARD
PRODUCTION: CAMP PRODUCTIONS

本記事は2024年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 56