Exclusive Interview: MICHAEL SHANNON
俳優:マイケル・シャノン
名声に対する無関心
November 2022
photography michael schwartz
fashion direction grace gilfeather
ジャケット Private White V.C.
Tシャツ 参考商品 Sunspel
トラウザーズ 参考商品 Brioni
ソックス London Sock Co.
シューズ「デューク ファセットダービー シューズ」 ¥130,900 Dunhill
ロケ地を変更したわけ シャノンは近々、ブレット・ヌヴーの戯曲を同名で映画化する『Eric LaRue(原題)』で監督デビューを果たそうとしている。実は、この初監督作のロケ地が倫理面での判断により変更を余儀なくされたことで、仕事も生活も、そして我々とのやりとりも中断を余儀なくされた。
「ちょうどアーカンソー州で撮影を行おうとしていたところで、とてもわくわくしていたんだよ。そんな矢先、最高裁があんなことをやらかして(妊娠中絶の権利を認めた1973年のロー対ウェイド判決を覆した)、アーカンソー州ではトリガー法が既に成立していたから即座に施行された。つまりどんな状況であっても、州内ではすべての妊娠中絶が禁止されることになった。女友達と話していたら、『あんなところで映画を撮ったらだめよ』と言われたんだ。そのときはここまできて変更するなんて、と思ったんだけど、考えれば考えるほど彼女の意見が正しく思えてね。プロデューサーも同意してくれたからロケ地を変えたんだ。大変だったけど、何より行動で示したかった。女性が自分の身体を思い通りにする権利のない土地で仕事をするなんて想像できないよ。主人公は女性だしね」
『Eric LaRue』は、クラスメート3人を射殺した17歳の少年の母親の苦境を描いた作品だ。ちょうど今年5月にテキサス州ユバルディの小学校で銃乱射事件があったがゆえ、この題材はタイムリーになったといえるのではないか。
「そうかもしれない。でもこの作品は政治的な映画ではないよ。解決策を示したり、世界を変える方法をアドバイスしたりする映画でもない。それよりも、混沌としたこの国で暮らす僕が感じた、一般的な感情についての作品。『アメリカは偉大だ』とか『アメリカはダメだ』とか、人はわめき散らすのが好きだけど、僕にとってアメリカはとても複雑怪奇なもの。アメリカとは何か、なんて僕にはわからない。アメリカ人であることの意味みたいなものも、僕にはわからない」
シャノンは勢い込んでこう続けた。
「一方では、今の状況はお腹に宿ったすべての赤ん坊が貧しい生活を強いられるかもしれない、あるいは学校へ行ったら脳味噌を吹っ飛ばされるかもしれない、それを皆が受け入れざるを得ないかもしれない、そういうことなんだ。まったく馬鹿げてるだろ。僕の映画の主人公も混乱しているんだ。自分のアイデンティティも、自分が何者なのかも、社会でどんな役割を求められているのかも、彼女にはわからない。そういったストーリーは伝える意義があるものだと思う。『テイク・シェルター』(2011年)に出演したとき、いろんな人に『精神疾患を扱った素晴らしい映画だね』と言われたけど、僕は『必ずしも精神疾患の映画じゃないけどね』と答えた。混乱したルールや規則のある場所で暮らす場合に、どうすれば精神を病まずに済むかという話じゃない。ただ普通に生きるにはどうすればいいか、あれこれ思い悩むなんてナンセンスだよ」
PHOTO ASSISTANTS: KRYSTALLYNNE GONZALEZ, BRANDON ABREU, TE LARA-POWELL
DIGITAL TECH: ERIC BOUTHILLER
PRODUCER: AIM WAGEMANS
PRODUCTION MANAGER: NIKKI CARDONA
LOCATION: ANDREW SAMAHA
MICHAEL SHANNON C/O NARRATIVE PR, CELENA MADLANSACAY
本記事は2022年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 49