Dressing for a New Era 06
THE RAKEが注目するファッショニスタたち vol.6
April 2021
SARTORIA CORCOS
研ぎ澄まされた感性で
世界に広める
still photography kotaro miyahira
Kotaro Miyahira1982年、大阪府生まれ。16歳でセレクトショップの販売員、その後リングヂャケットの貝塚工場を経て、2004年にフィレンツェに渡る。セミナーラで4年、フランチェスコ グイーダのもとで3年、その間ナポリにも通って修業を積み、2011年に独立。フィレンツェにサルトリア コルコスを構える。
サンタ トリニータ橋からヴェッキオ橋(ポンテ ヴェッキオ)を背景に撮った、宮平康太郎氏。この日のスタイルに限らず、彼の装いはいつもフィレンツェの街に溶け込んでいる。コットンギャバジンのシワもいい感じだ。靴はロベルト・ウゴリーニ。
これは自分の考え方だが、伝統の文化・技術を受け継ぎ、その世界で生きる素晴らしい職人は、それを今に、そして後世に伝える責任感のようなものが自然と芽生えてくる。それを100%受け入れ、最高のパフォーマンスでまっとうしているのがフィレンツェのサルト、宮平康太郎氏だ。
ジュゼッペ・セミナーラ氏やフランチェスコ・グイーダ氏、さらには伝説のジョヴァンニ・マイアーノ氏からも技術、文化、考え方を習得した彼は、自身が心酔している“サルトリア フィオレンティーナ”の世界を、今日、我々に非常に魅力的に伝えてくれている。ある人には退屈といわれてしまうクラシック(これは大きな勘違いだ)を、掘り下げるほど深淵で、僅かな差で変わる大変面白いものであることを、世界に向けて発信しているのだ。
ドレスアップする楽しさを、自分が習得した文化の領域まで含めて伝えられるのは、サルトとして非常に大きな武器だ。そこに新しい時代に向けてのサルトリア文化継承の鍵があると思う。
伝統的なサルトリア フィオレンティーナを代表するコート“コッロ バスタルド”や“カバン”はまだ耳慣れない言葉だが、宮平氏はそれをどのような場でどのように着るかまで踏み込んで世に広めている。2~3年後には、サルト文化を愛する人たちの間ではもっと知られたものになっているかもしれない。伝統的なフィレンツェの仕立て、伝統的なフィレンツェの色彩。本物は褪せることがないし、2021年も輝き続けるのだ。
宮平氏的
フィレンツェスタイルの色彩
宮平氏からコーディネイトの提案を聞くことは、サルトリア コルコスで服を仕立てる楽しみのひとつだ。シャツは白を好み、柄に柄を乗せることは滅多にない。色彩のコントラストは控えめだが、それはフィレンツェ的な奥ゆかしさの醍醐味で、辿っていくと愛するトスカーナの自然、山や丘陵地帯の色彩から来ていて奥深い。コルコスはシャツのビスポークとネクタイのコレクションもオススメだ。
宮平氏の注目&愛用アイテム
最近はサルトリア コルコスのお客さんに向け、トスカーナの素晴らしいニットメーカーと組んでオリジナルのニット製品を企画し、注文を受けている。写真のニットポロ、おばあちゃんの手織りのマフラーがそれだ。ボストンは同じフィレンツェ在住の大平知生氏に作ってもらったもの。宮平氏はまさにフィレンツェと、そしてトスカーナの大地とともに生きている生粋のサルトである。
本記事は2021年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 38