Dressing for a New Era 01

THE RAKEが注目するファッショニスタたち vol.1

April 2021

人々の価値観、ライフスタイルがドラスティックに変化していく中で、装いの中身も大きく変わっていきそうな2021年。
THE RAKEが注目するファッショニスタたちが考える新たな装いとは?
1. 南雲 浩二郎
BEAMSディレクターズルーム
クリエイティブ ディレクター
ルールを知り尽くして
ルールに縛られない着こなし
text yuko fujita
photography jun udagawa

Kojiro Nagumo1964年生まれ。1985年にビームス入社。インターナショナルギャラリー ビームスに11年勤務。アシスタントバイヤーや、数店舗でマネージャーを務める傍ら、VMDの総合ディレクターを兼任。「BEAMS MODERN LIVING」のMDなどを経て、現在はビームスに限らず内外の店舗やオフィス内装のデザインディレクションを手がけている。

流行りがこなければ廃れることもないということで、このリラックスした着こなしはもう5年の間、まるで同じコーディネイトで楽しんでいるという。次写真とのギャップもなかなかだが、視点を変えれば、サヴィル・ロウのスーツであってもこれだけ楽しめるというわけだ。アイク ベーハーのラウンドカラーシャツに無印良品の白Tシャツの合わせも新鮮だ。

 南雲氏はかつてビームスで開催していたファーラン&ハーヴィーとジョージ クレバリーのビスポーク受注会の責任者を務めていた。装いのルールに関しては英国人から徹底的に叩き込まれて誰よりも熟知している。それをリスペクトしつつ、南雲氏の装いには、リラックスした遊びがある。あえて流行と距離を置き、あえての組み合わせをし、あえての素材選び等、“紳士のハズシ”をゲームのように楽しんでいる。

 着用のスーツはファーラン&ハーヴィー。7~8年前に展開した既製服で、南雲氏が生地とデザインを決めたものだ。スポーティなコットン素材をダブルブレステッドでドレッシーに、柄はストライプでドレッシーめでも貝ボタンでスポーティにしたあたりは、トーン&マナーを知っているからこそで、装いもパンツの裾をあえてシングルにし、アイク べーハーのラウンドカラーシャツ、無印良品のTシャツ、ナイキのスニーカーを組み合わせている。

「だいぶ大人になったのでこのくらい遊んでもいいかなと(笑)。ただ、闇雲にそうしているわけではありません。コットンスーツだからスニーカーを合わせたのであって、ウールのスーツだったらそうはしていなかったと思います」と南雲氏。

 同じスーツにピオンボの柄が大きめなギンガムチェックシャツ、ビームスFのタイ、オールデンのトムラストのタッセルスリッポンの格好もまたユニーク。

「未だ差別がなくならない世の中で、さまざまなオリジナルを混ぜてアメリカもイギリスもイタリアもいいよっていうリベラルな感覚もありますね。地位や権力を示す道具としてのスーツではなくファッションとしてのスーツが再び浮上してくるのでは?とも感じています。高価でも、質が高く、着回しができて何倍も長く着られればサステナブルともいえるわけです。ファッションを生業としている我々は、もっとそれをメッセージとして出していかないといけませんよね」

ファーラン&ハーヴィーのダブルのコットンスーツに、ありそうでない大きめな柄のギンガムチェックシャツ、ビームスFのタイ、オールデンのトムラストタッセルスリッポン。フツウのようで、さまざまなテクニックが詰まった装い。あえてこだわったというパンツのシングル裾もいい。ヴィンテージのブレスレットは蚤の市にて購入。

南雲氏の注目&愛用アイテム

本記事は2021年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 38

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