CHOPARD “ALPINE EAGLE”

完璧なる新コレクションの全貌

October 2019

text mitsuru shibata
photography hiromasa sasaki(AVGVST)
styling akihiro shikata
grooming hiroki kitada

細部にまでこだわり抜かれたデザイン機能美を漂わせるスクリューやコンパスローズを象ったリュウズ、鷲の羽毛をモチーフにした秒針など細部のデザインにもこだわる。そして緻密に施されたケースのファセットは、力強い硬質感とも調和するのだ。採用されたルーセント スティール A223は、4年の開発をかけて実用化し、ゴールドに匹敵する輝きと質感に、ポリッシュとヘアーラインの仕上げが美しさをより一層際立たせる。

 時代は移り、5年前のある日、カール-フリッツ・ショイフレ氏は、父のデスクに置かれた「サンモリッツ」を見た。そしてぜひこれを現代的に再解釈したいと考えるようになったのである。

 しかしそんな息子の意見に、今度はカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏が興味を示さなかった。「サンモリッツ」は自らが手がけた不変のアイコンだったからだ。とはいえ息子の情熱にカール-フリードリッヒ・ショイフレ氏はかつての自分を重ねたに違いない。次世代への期待と新作の可能性を予見し、プロジェクトを認めた。こうしてファミリーヒストリーは紡がれたのだ。

 デザインは、「サンモリッツ」の特徴だった8本のスクリューで留められたベゼルを踏襲しつつ、力強さを増した。その硬質なイメージに対し、文字盤は鷲の虹彩をモチーフに仕上げ、美しいコントラストを
なす。そしてケースから一体感あるシャープな連なりを見せるのがブレスレットだ。リンクはアルプスの岸壁を思わせ、滑らかなポリッシュにジュエラーで培われた美意識が漂う。

 素材にはルーセント スティールA223と呼ばれる新しいステンレススティールを採用し、低刺激性で肌との高い適合性を備えるとともに、通常に比べて1.5倍の摩耗耐性を誇る。さらに焼成を繰り返すことで不純物を除き、ゴールドに匹敵するシャイニーでしっとりした輝きを放つ。「アルパイン イーグル」は、かつてステンレススティールにゴールドと同等の価値を与えた「サンモリッツ」のコンセプトを継承し、さらに進化させたのである。

 その晩、ディナーパーティがショイフレ家の別荘で行われた。そこは一家が休暇を過ごす第二の我が家であり、その温かいもてなしに、連綿と続く一族の信念や絆とともに、ショパールというブランドの真価が伝わってくる。だからこそこのグシュタードを選んだのだろう。

 アルプスの峻険な山は、挑戦者に立ちはだかる。だがこれを越えた先に未来は現れる。飛翔する鷲、「アルパイン イーグル」はまさにその象徴なのだ。

THE RAKE JAPAN EDITION ISSUE 30
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