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ジー ゼニアの洗えるスーツ

IN A SPIN OVER Z ZEGNA 01

Thursday, November 22nd, 2018

マシンウォッシャブルスーツは、もはやラグジュアリーなクラフトマンシップを冒とくするものでも、

矛盾するものでもない。事実、ジー ゼニアの画期的なTechmerino Wash & Goラインは、

テーラーリングに革命を起こすかもしれない。

 

 

text nick scott

photography kim lang

 

 

 

 読者の多くも同じような経験があると思うが、大事なスーツを街のドライクリーニング店に出して、それなりの代金を払ったのに、上質な生地の天然油がすっかり落ちてパサパサになってしまうのはしゃくに障る。

 

 愛する家族から受け継いだ機械式時計を、不器用な原始人に修理してもらうために金を払うようなものだ。ホテルに着くと、持ってきたスーツにシャワーの蒸気をあてて、スーツケースの中でできたシワを伸ばさなければならないのも面倒くさい。

 

 だから、ジー ゼニアがTechmerino Wash & Go コレクションを発表したときは、メンズウェア業界から喜びの声が上がった。ちなみに、このコレクションはtherake.comでも購入できる。

 

 このコレクションは、マシンウォッシャブル、つまり洗濯機で洗えるスーツだ。乾かしたらアイロンをかけなくても着用できる。独自の工夫によって、ドライクリーニングのダメージもアイロンがけの手間もいらない。ウール繊維にありがちな毛羽立ちや洗濯による型くずれの心配がないうえ、ジー ゼニアらしいエレガントなドレープや美しいシルエット、肌触りのよい素材、比類のないスタイリッシュさがある万能スーツなのだ。

 

 

 

 

 この画期的なスーツの開発は、エルメネジルド ゼニアのアーティスティック ディレクター、アレッサンドロ・サルトリがベルルッティを経て、2016年初めに返り咲く前から始まっていた。彼は本誌にこう語っている。

 

「復帰したときにはもうTechmerino(テック メリノ)というすばらしいプロジェクトが進んでいました。目指したのは、テーラーリング的に満足できるアクティブウェアです。この商品に関わるスタッフや技術者と話して、大きな可能性を感じたので、コンセプトを拡大することにしました。ピュアウールの分野でこそ、こうした特性がとりわけ威力を発揮することに気づいたのです」

 

 

 サルトリはこの可能性に胸を躍らせた。自らが革新的なサルトリアルの最前線にいて、テーラーリングそのものを新たな方向に持って行くチャンスがあることを察知したのである。彼はこう語る。

 

「私は昔から、モダン・テーラーリングということが大好きです。テーラーリングのような素材使いを取り入れたスポーツウェアも、逆にスポーツウェアやカジュアルウェアのアイディアを取り入れたテーラーリングも、数々の新たな可能性をもたらします」

 

 

 

 ジー ゼニアのTechmerino素材はいいことずくめだとサルトリは言う。

 

「この生地はウールの長所をもれなく備えています。さまざまな気候に対応できて、手触りがすばらしく、通気性があるのでアウターウェアにもぴったり。伸縮性に優れているためフィット感があり、触れたり畳んだり着たりするときも天然繊維なので肌になじみます。しかも、上質なナイロンのような撥水性など、ハイテク素材ならではの長所も兼ね備えています。そこで私たちは、Techmerino素材のこうした機能性と天然繊維の特性を組み合わせ、アウターウェアからジャージ、ニットウェア、テーラーリングからアクセサリー、シューズまであらゆる商品に活かすことにしました」

 

 

 

 サルトリによれば3段階で高度な技術を取り入れているという。

 

「ウール繊維を顕微鏡で見てみると、不規則に並んでいることがわかります。だから、洗濯すると風合いが損なわれるのです。そこで、この繊維が規則的に並ぶよう機械的な加工を施しました。加えて、Wash & Goコレクションでは製糸工程も改良し、1メートルあたりの撚糸回数を増やすことで、ハリや弾力性に優れた生地を実現しました。さらに、裏地や芯地、ショルダーラインからボタンに至るまで、さまざまなディテールに工夫を凝らしました。ですから、洗濯機で洗えますし、アイロンをかけなくても型くずれしないのです。私自身もこのコレクションのスーツを4着持っていますが、10~12回洗濯しているのに何の問題もありません。アイロンをかけたこともありません」

 

 独自に考案したTechmerinoがザ・ウールマーク・カンパニーのお墨付きを得ているということも、このスーツが“本物”であることの証だといえよう。

 

 

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