完全主義者の美意識
BERLUTI “Zero Cut Shoes”
Saturday, December 22nd, 2018
photography jun udagawa styling akihiro shikata
1895年創業の老舗にして、フランス靴を代表するブランド、ベルルッティの“アレッサンドロ”は靴ファンなら必ず知っている名作だ。Uの字型にカットされた一枚革をぐるりと巻いて作られたアッパーは、ヒール以外のどこにも継ぎ目がなく、高級靴=ホールピースというイメージを確立した。
そんなアレッサンドロに、完全無欠の一足が登場した。“ゼロカット”である。これは文字通り、アッパーのどこにも繫ぎ目がないというもの。ヒールカップはおろか、ベロの内側まで縫い目がなく、アッパー全体が大きな一枚の革でできている。
ベルルッティのアイコン的シューズ、アレッサンドロをベロの内側まで完全シームレスとした一足。その製作には軽量シューツリーやアウトソールのウッドネイルなど、特別なツールを必要としたという。ディープブラックのヴェネチアン・レザーのほか、エメラルド・カラーのアリゲーター(スペシャルオーダーのみ)も存在する。¥520,000 Berluti
もちろん、こういった靴を仕立てるのは簡単ではない。無理に形作ろうとすれば、革が裂けてしまうからだ。上質でソフトな素材を選別し、じっくりと時間をかけて、本来平面である革を、少しずつ「騙して」いく必要がある。職人に高度な技術が要求されるのは、言うまでもない。製作にあまりにも手間がかかるため、その月産はわずか15足が限界だという。
一見実にシンプルな一足だが、愛好家はシームレスなヒールカップを見て驚愕し、そして羨望の眼差しを送るのである。
ベルルッティ・インフォメーション・デスク
TEL: 0120-203-718
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