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これ以上のトラウザーズはない
“アンブロージ”のトラウザーズ

AMBROSI "Trousers"

Wednesday, October 17th, 2018

アントニオとサルヴァトーレ・アンブロージ、

強い絆で結ばれた、父と息子のチームが手がける、

世界一のトラウザーズを身に着ける。

 

text wei koh photography jun udagawa, yuko fujita  styling akihiro shikata

 

 

 

 

背が高く見えるパンツ

 

 アンブロージでは、サイズ測定はあっという間に行われる。息子のサルヴァトーレがサイズを測る間、父のアントニオは客の脚をじっと見ている。それは約30秒間続き、それですべては終わりとなる。

 

「メジャーメントをする時間としては、十分ではないと思うでしょう。しかしトラウザーズは、今まで穿いたどの品よりもフィットします。そして死ぬまで、アンブロージが作ったものよりも、よいものを見つけることはできないでしょう」

 

 ふたりが作っているのは、ほぼ1種類のトラウザーズだ。適度にスリムで、ダブルプリーツ、ゆったりとしたウエスト回り、大きい折り返しなど、典型的なナポリ・スタイルだ。シルエットは穿いた人の体重を10ポンド軽く、身長を3インチ高く見せる。サルヴァトーレは、「南イタリアの男性は、皆、背が低いのです。だから私たちは背が高く見えるトラウザーズを作る必要があったのです」と笑った。

 

トラウザーズを入念に調べると、高度なテクニックが使われていることに気づく。サイドの縫い目は前方に大きく持ち上げられ、ヒップポケットの上で湾曲している。素材は脚に沿ってタイトにカットされているが、太もも部分では絶妙のゆとりがある。正面のダブルプリーツが、動きやすさに貢献している。逆向きに付けられた力ボタンは本格の証。長い持ち出しも特徴だ。裏地に使われたシャツ地、各部の補強ステッチなど、美しい手仕上げを観賞できる。

 

 

 魔法が起きるのは、歩きだしてからだ。脚を交互に振り出しても、ウエストラインは水平なまま。歩行中のトラウザーズは完全に無重力で、引っ張られたり、まとわりついたりすることがない。

 

「カッティングに秘密があります。ナポリは暑いので、テーラーは軽く、芯地なしの仕立てを追求しています。私たちはトラウザーズで同じことをしているのです」

 

 いずれにせよ、アンブロージのトラウザーズは、内容を考えると、実にリーズナブルだ。一生ものになり得るかどうかはともかく(ウエストの肥大化には、一般的な品よりずっと対応できるが、それも限度がある)、お買い得だとは断言できる。

 

 

 

 

グレイのウール・トラウザーズ¥88,000 Ambrosi / Bryceland’s Co.(ブライスランズ Tel.03-6721-0133)

ベージュのコットン・トラウザーズ ¥88,000 Ambrosi / Bryceland’s Co.(ブライスランズ Tel.03-6721-0133)

サイドアジャスター付きウール・トラウザーズ ¥110,000 Ambrosi / Isetan Shinjuku(伊勢丹新宿店 Tel.03-3352-1111)

 

 

 

アンブロージのアトリエの入口はかつてナポリの決して治安がいいとはいえないエリア、ジョヴァンニ・ニコーテラ通りに位置していたが、3年前に隣下のパラッツォに引っ越して工房を拡大。中心部のキアイア通りから入れるようになった。アントニオ(左)がトラウザーズをカットし、サルヴァトーレ(右)と一緒に縫い合わせている。