Tivoli President Milano Hotel

華美ではなく、心地よさを選ぶ「チボリ プレジデント ミラノ ホテル」

July 2026

ミラノ中心部に「チボリ プレジデント ミラノ ホテル(Tivoli President Milano Hotel)」が誕生した。
既存のホテルを全面改装し、華やかさを過剰に演出しない、自然体で過ごせるより素晴らしい空間へと生まれ変わった。

 
 

text Yuko Fujita

 

ミラノの中心で自然体に戻れる5ツ星ホテル

 1回のイタリア滞在で10都市以上のホテルに泊まることも珍しくなく、これまでイタリアだけでも80を超える都市、150を超える宿に泊まってきた。今回、ミラノ中心部で新たな装いに生まれ変わったチボリ プレジデント ミラノ ホテルに宿泊する機会に恵まれたが、自分へのフィット感という点で、ここの心地よさは際立っていた。

 

 ホテルに何を求めるかは、滞在の目的によって異なる。ここには過度な演出に頼らない節度があり、品のよさと自然体でいられる素晴らしい快適さがある。落ち着いた色彩と温かみのあるマテリアルによって、ロビーも客室も穏やかな雰囲気に包まれている。

 

約145平方メートルのプレジデンシャルスイート。木とテラコッタカラーを基調に、曲線的な家具を配した落ち着きある空間。専用テラスからはドゥオモとミラノの街並みを望める。

 

 サービスはかしこまりすぎず、どちらかというとフレンドリー。が、ゲストの様子をよく見ていて、必要なときに声をかけてくれる、その距離感も心地いい。空間とサービスの双方から、等身大のエレガンスを感じられるホテルだ。

 

 THE RAKEの読者にとっても、ミラノは仕事や旅で訪れる機会の多い都市のひとつだろう。数多くの選択肢がある街だからこそ、華やかさだけでなく、繰り返し滞在したくなる一軒を知っておく価値は大きい。実際に過ごしてみて、チボリ プレジデント ミラノ ホテルは、ミラノを訪れる際にぜひお薦めしたいホテルだと感じた。

ミラノの中心に誕生した、新たなチボリ

 チボリ プレジデント ミラノ ホテルは、旧「NH コレクション ミラノ プレジデント」を全面リニューアルし、チボリブランドの5つ星ホテルとして2026年4月にリブランドオープンした。

 

 ドゥオモとサン バビラの間に位置し、ガッレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世、スカラ座、モンテナポレオーネ通りへも徒歩圏内にある。

 

ルイージ・フィジーニとジーノ・ポッリーニが設計した1960年代の建物。合理主義建築の端正な美しさを受け継ぐ外観を残しながら、5つ星ホテルとして新たな装いを得た。

 

 1960年代に完成した建物は、イタリア合理主義建築を代表するルイージ・フィジーニとジーノ・ポッリーニによる設計で、都市建築らしい端正で力強い外観を残しながら、館内は温かく柔らかな印象に仕上げられている。チボリブランドのホテルへと生まれ変わるにあたり、インテリアを手がけたのは、ミラノを拠点とするロドリゴ・イスキエルド。グリーン、ブラウン、ベージュを中心とした色彩に、石や木の質感、曲線的な家具や照明を重ねた。

 

木や石の質感に、柔らかな色調の家具と大ぶりの照明を重ねたロビーラウンジ。開放感がありながら、落ち着いて食事や会話を楽しめる空間に仕上げられている。

 

 ミラノには、強いコンセプトや視覚的な驚きを前面に出すホテルも少なくない。それもミラノの個性ではあるが、滞在が続くと、デザインの強さが疲れにつながることもある。一方、チボリ プレジデント ミラノ ホテルの客室には、長く過ごしても疲れない落ち着きがある。広さや設備の豪華さ以上に、その心地よさが印象に残った。

 

 客室は全239室で、60室のスイートを含む。そのうち6室はドゥオモを望むスイートだ。テラス付きの客室や市街を見渡す部屋、独立したリビングを備えたスイートまで、カテゴリーは幅広い。大きすぎず小さすぎない規模感もちょうどよく、館内を移動する際にも落ち着きがある。

 

最上位のプレジデンシャルスイートは約145平方メートル。ドゥオモやミラノ市街を望む専用テラスを備え、ホテルのルーフトップに繋がっている。

 

同じくプレジデンシャルスイートの寝室。木の質感と温かな色調、曲線的な家具が、落ち着いた時間をもたらしてくれる。

食事にも通じる、軽やかな節度

 初日はディナー直前に、長時間の移動を経てミラノへ到着した。そのまま1階のThe Lobby Barで夕食を取ったが、外へ出直すことなく、魚介を中心とした軽やかな料理とワインをカジュアルに楽しめるのはありがたかった。

 

大理石のカウンターを中心に、柔らかな色調の家具を配したThe Lobby Bar。落ち着きのある空間の中で、ドリンクだけでなく魚介料理などの食事もカジュアルに楽しめ、到着日の夜は非常に助かった。

 

 ホテルでは現在、シチリア料理を現代的に表現するシェフ、ナターレ・ジュンタが手がけるシチリアの食文化に着想を得た新たなダイニングも計画されているほか、今後はドゥオモとミラノの街並みを一望するルーフトップや、先進的な機器を備えたウェルネス施設のオープンも予定されている。

 

取材中にStarpoolで体験した「Zerobody」シリーズは、ホテル内のウェルネス施設にも導入予定。温水に浮かぶ「Dry Float」は、重力から解放されたような感覚のなかで深いリラクゼーションへと導き、ストレスの軽減や睡眠、集中力の向上をサポートする。4〜6℃の冷水を用いる「Cryo」は、心身を目覚めさせ、気分をリフレッシュする冷温療法だ。

ホテルを起点に、ミラノの美意識と食を巡る

 チボリ プレジデント ミラノ ホテルを拠点に、ミラノの建築やデザイン、ファッション、食を巡るのもいい。

 私のお気に入りのひとつが、ホテルから歩いて行けるヴィッラ・ネッキ・カンピリオ(Villa Necchi Campiglio)だ。1930年代に建築家ピエロ・ポルタルッピが手がけた邸宅で、建築や家具、美術品、庭園を通して、当時の上流階級の暮らしを今に伝えている。近年では、トッズのメンズコレクションの発表会場としてもお馴染みだ。

 

ピエロ・ポルタルッピが1930年代に設計したヴィッラ・ネッキ・カンピリオの書斎。重厚な木製書棚や家具、美術品が、当時のミラノ上流階級の美意識と教養を今に伝える。ミラノを訪れたなら、ぜひ足を運びたい場所のひとつだ。

 

 街の西側、トルトーナ地区で訪れたいのが、アルマーニ/シーロス(Armani/Silos)だ。ジョルジオ・アルマーニが手がけてきた服やアクセサリー、スケッチ、映像などを通して、その美意識と仕事の変遷を辿れる。

 

 ミラノ中心部の南東、ポルタ・ロマーナ地区にあるフォンダツィオーネ・プラダ(Fondaione Prada)も訪れたい。ミウッチャ・プラダとパトリツィオ・ベルテッリが設立した文化財団で、かつての蒸留所を再生した広大な敷地では、現代美術を中心とする展覧会のほか、映画や建築など多彩な文化プログラムが展開されている。建築そのものも含め、見応えは十分!

 

 ミラノといえば、ついついコストレッタを食べたくなる。イタリア語ではコトレッタとコストレッタの双方が使われるが、骨付きの仔牛肉を使う伝統的なミラノ風は、より厳密にはコストレッタと呼ぶ。Trattoria Masuelli San MarcoAntica Osteria della Pesaなど、お気に入りの店はいくつかあるが、Cantina della VetraOsteria Afroditeの2軒を訪れ、味わった。

 

Cantina della Vetraは、骨付き肉と香ばしい衣を主役にしたクラシックなコストレッタ。

 

Osteria Afroditeの「Costoletta alla Milanese vestita」は、肉を薄く大きく伸ばした、「象の耳」を意味するオレッキア・ディ・エレファンテを思わせる形。上にルッコラと色鮮やかなトマトを重ねている。「vestita」は「着飾った」という意味で、名前の通り、伝統的なコストレッタを華やかに装ったひと皿だ。

 

 同じミラノの郷土料理でも、店によって姿も味わいも大きく異なる。その違いを食べ比べるのも、ミラノの楽しみのひとつである。

世界へ広がる、チボリとマイナー・ホテルズ

 ここで、チボリというブランドについて触れておきたい。チボリは、タイを起点に世界へ成長した国際的なホスピタリティグループ、マイナー・ホテルズのホテルブランドのひとつである。

 

 傘下には、土地の文化や自然を深く体験するアナンタラ、歴史と普遍的なエレガンスを重視するチボリ、都市の個性と機能性を備えたNH Collection、アートや音楽を大胆に取り入れるnhow、現代的で軽快なAvaniのほか、NH HotelsやOaksなど、多彩なブランドが揃う。

 

 それぞれの個性を明確にすることで、都市滞在からリゾート、長期滞在まで、旅の目的に合ったホテルを選べることがマイナー・ホテルズの強みだ。ひとつのスタイルを世界中に当てはめるのではなく、土地や滞在の目的に応じて異なる体験を提供している。

 

 そのラグジュアリーポートフォリオを担うチボリは、1933年にリスボンで誕生し、ポルトガルを代表するホテルブランドとして歴史を築いてきた。すべてのホテルを同じ様式に揃えるのではなく、それぞれの土地の建築や文化を生かしながら、時代に左右されないエレガンスと温かなホスピタリティを提供している。

 

 チボリ プレジデント ミラノ ホテルにも、その姿勢が表れている。1960年代の建築がもつ端正な力強さを残しながら、現代的なインテリアと快適さを加え、ミラノという街にふさわしいホテルへと生まれ変わった。

 

 日本では、2035年までにアナンタラ、アヴァニ、チボリの3ブランドで21軒のホテル開業を目指している。日本においても、旅の目的や滞在スタイルに応じて、異なる個性をもつホテルが選べるようになる。

 

 数多くのホテルが揃うミラノだが、次もここに泊まりたいと思える一軒に出合うことは、意外と少ない。チボリ プレジデント ミラノ ホテルは、立地、デザイン、食、サービスのすべての満足度が非常に高く、質の高い滞在を約束してくれる。

 

 華美な演出や過剰なサービスではなく、品のよさ、落ち着き、自然体で過ごせる快適さを求める人に、ぜひお薦めしたいホテルだ。

 

 

 

Tivoli President Milano Hotel

Largo Augusto, 10, 20122 Milano, Italy

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