NH Collection Roma Palazzo Cinquecento

テルミニ駅前でローマを楽しむ、セルウィウス城壁の遺構を望む5ツ星ホテル

July 2026

ローマの玄関口、テルミニ駅前に立つ「NH コレクション ローマ パラッツォ チンクエチェント」。
古代城壁の遺構を残すこのホテルを起点に、歴史、食、クルマ、人が交差するローマを巡った。

 

 

text Yuko Fujita

 

テルミニ駅前で叶う、静かで快適なローマ滞在

ヴェネト通りのホテル群がローマの華やかな社交を物語る存在であるなら、「NH コレクション ローマ パラッツォ チンクエチェント」は、ローマの歴史を落ち着いて感じさせるホテルだ。

ローマの玄関口、テルミニ駅を出ると、チンクエチェント広場の右手にすぐその姿が現れる。20世紀初頭のリバティ様式の建築を生かした5ツ星ホテルで、かつてはイタリアの鉄道および郵便関連機関の本部として使われていたという。さらに庭には、紀元前6世紀に遡るセルウィウス城壁の遺構が残る。駅前という都市的な立地にありながら、ホテルの敷地内には、ローマの古層が静かに息づいている。

私は2025年の約4分の1をイタリアで過ごし、2026年も6月末の時点で既に約50日をイタリアで過ごしている。各都市のホテルを転々としてきた経験から言えば、「NH コレクション ローマ パラッツォ チンクエチェント」は、ローマで最も利便性の高いホテルのひとつだ。

 

セルウィウス城壁の遺構を望む庭から見た、NH コレクション ローマ パラッツォ チンクエチェントの外観。

 
 

ローマに入るときも、各地へ出かけるときも、市内を歩くときも、この立地の価値ははっきりわかる。テルミニ駅からすぐというだけで、荷物を抱えた移動はぐっと楽になる。ナポリまでは高速鉄道で約1時間10分、フィレンツェまでは約1時間30分。鉄道移動にもローマ観光にも、これ以上ない拠点である。

テルミニ駅の目の前という立地でありながら、ホテルに一歩入ると、外の喧騒はすっと遠のく。客室は、クラシックな建物の外観とは対照的に、モダンで端正な印象だ。落ち着いた色調でまとめられ、過剰な装飾に頼らない。歴史的建築を用いたホテルでありながら、滞在感は現代的で快適である。

 

客室は明るくモダンな印象。クラシックな建物の外観とは対照的に、端正で快適な滞在空間に整えられている。

 
 

1階のリストランテ「Grand Tour」も、ホテルの落ち着いた空気をそのまま映したようなダイニングだ。自然光の入るエレガントな空間で、窓の向こうには手入れの行き届いた庭が広がる。料理はローマの味を土台にしながら、現代的に整えられている。テルミニ駅前にありながら、街の喧騒から少し離れて食事ができるのもいい。

 

テルミニ駅前の喧騒が嘘のように遠のく、リストランテ「Grand Tour」のテラス席。古代城壁の遺構を望みながら、穏やかな時間を過ごせる。

 

リストランテ「Grand Tour」の一皿。ローマの伝統を土台にしながら、軽やかで現代的な感覚に仕上げている。

 
 

このホテルの立地のよさは、街歩きだけでなく、ローマでの体験の選択肢も広げてくれる。今回楽しんだのは、Facile Toursの「Dolce Vita Tours: Rome’s Premier Experience」。電動ヴィンテージカー「eFiat 500」でローマを巡る市内ツアーだ。

 

ホテル前に停められた電動ヴィンテージカー「eFiat 500」。テルミニ駅前から、ローマの街へ軽やかに走り出す。

 
 

クラシックなフィアット500の姿はそのままに、走りは静かな電動仕様。カブリオレの小さな車体で、ローマの石畳を軽やかに駆け抜けていく。コロッセオ、チルコ・マッシモを経て、アヴェンティーノの丘にあるオレンジ庭園へ。さらに真実の口、カンピドリオの丘、ナヴォーナ広場、パンテオン、トレビの泉など、ローマの名所を巡っていく。徒歩で一度に回るには欲張りな距離だが、この車なら街並みそのものを楽しみながら移動できる。

そして、この車はよく見られる。信号待ちをしていると、通りすがりの人がこちらに目を向け、笑って手を振ってくる。こちらがローマを眺めているはずなのに、いつの間にか自分が街の小さなシーンの一部になっている。ホテル発着のツアーなので、到着日や出発日にも組み込みやすい。チェックイン前やチェックアウト後でも、荷物をホテルに預けて身軽に出かけられる。テルミニ駅前に泊まる便利さは、こういう場面でも実感できる。

 
 

eFiat 500の小さな車体でパンテオン前へ。石畳の道、馬車、観光客が重なり、ローマらしい風景が広がる。

 
 

ローマ市内を走るピンクのeFiat 500。小さなカブリオレだからこそ、街との距離が近く、視線も自然に交わる。

 
 

「NH コレクション ローマ パラッツォ チンクエチェント」を展開するマイナー・ホテルズは、世界各地でホテルやリゾートを運営する国際的なホスピタリティグループである。アナンタラのようなその土地の文化を取り入れつつグループ独自ブランドとしての個性を放つラグジュアリーリゾート&ホテルから、歴史的建築や都市の個性を生かしたNH コレクション、長い歴史や伝統を持ちつつ時代を超えたエレガンスを纏うチボリ、モダンでカジュアルなアヴァニまで、そのブランドは多彩だ。

会員プログラム「Minor DISCOVERY」を利用すれば、宿泊やホテル内での利用に応じてDISCOVERY Dollars(D$)を獲得でき、次回以降の滞在やダイニングなどに使うことができる。会員限定料金やステータスに応じた特典も用意されており、旅を重ねるほどメリットを実感しやすいプログラムである。

マイナー・ホテルズの魅力は、旅の目的に合わせてホテルを選べる幅の広さにある。そして、その幅広さを象徴するようなイベントが、2026年4月にローマで初開催された「Anantara Concorso Roma」だった。

アナンタラ・コンコルソ・ローマ・ホテルで触れた
イタリア車と社交の華やかな世界

アナンタラ・パラッツォ・ナイアディ・ローマ・ホテルを拠点に行われたこのイベントのテーマは、“La Dolce Vita delle Automobili”。直訳すれば「自動車の甘い生活」だが、ここではイタリア車がもたらす豊かな時間や美意識までを含んだ言葉として捉えたい。フェデリコ・フェリーニの映画『甘い生活(La Dolce Vita)』で知られるローマを舞台に、イタリア車の美しさ、ホテル、食、社交、装いがひとつに溶け合うコンコルソである。

 

アナンタラ・パラッツォ・ナイアディ・ローマ・ホテル前、レプッブリカ広場に並ぶコンコルソ出展車。赤いカバー越しにも名車の気配が漂う。手前は1954年製のフェラーリ 340 MM スパイダー スカリエッティ。

 
 

集まったのは、20世紀初頭の戦前モデルから、1950〜60年代のグラントゥーリズモ、ランボルギーニ・ミウラに象徴されるスーパーカーの時代、そして1990年代のブガッティEB110まで。アルファ ロメオ、ランチア、マセラティ、フェラーリなど、イタリア車の歴史を形づくってきた名車たちが、共和国広場やヴィッラ ボルゲーゼを舞台に並んだ。ローマという都市そのものが、彼らのためのショーフィールドになっていた。

 

ヴィッラ ボルゲーゼ内にある新古典主義様式のカシーナ・ヴァラディエールを舞台に開かれた、アナンタラ・コンコルソ・ローマ。名車と装いが、ローマの社交を彩る。

 
 

プログラムには、共和国広場を起点にローマ市内を巡る「Giro d’Anantara」、カシーナ・ヴァラディエールでの審査、パラッツォ・ブランカッチョでのブラックタイディナー、そして各クラスの受賞車とBest of Showを発表するアワードプレゼンテーションが含まれる。単なるクラシックカーの展示ではなく、名車を走らせ、眺め、語り、その余韻を食卓やドレスコードまで広げていくイベントである。

Best of Showに選ばれたのは、1932年のMaserati V4 Sport Zagatoだった。戦前のザガート・ボディを持つこのマセラティは、ローマに集まった数々のイタリア車の中でも、とりわけ強い存在感を放つ一台だった。

 
 

Best of Showに選ばれた、1932年製、Maserati V4 Sport Zagato。

 
 

木漏れ日の下に並ぶ、往年のイタリアン・グラントゥーリズモ。ローマの庭園が、名車たちの舞台となる。

 
 

出展車を審査するコンコルソの審査員たち。細部を見極めるまなざしが、名車の価値を静かに掘り起こす。

 
 

パラッツォのきらびやかな空間で開かれたブラックタイディナー。名車の余韻は、夜の社交へと引き継がれていく。

 
 

このイベントの本質は、車だけを主役にしていないところにある。名車はもちろん美しい。しかし、それらがホテル、広場、庭園、食、音楽、ドレスコードと結びつくことで、イタリア車が単なる工業製品ではなく、ライフスタイルや美意識の一部であることが見えてくる。アナンタラ・コンコルソ・ローマは、ホテルが都市の文化を体験するための入口になり得ることを示すイベントでもある。

テルミニ駅前に立つ「NH コレクション ローマ パラッツォ チンクエチェント」は、ローマを効率よく旅するのに最適のホテルと言っていい。しかし、今回の滞在で見えてきたのは、それだけではなかった。eFiat 500で街を巡る時間も、アナンタラ・コンコルソ・ローマが描き出す華やかな社交も、ホテルを起点にローマという都市の楽しみ方が広がっていくことを示している。

歴史、移動、食、車、社交。そのすべてがひとつの街の中で自然につながるところに、ローマという都市の豊かさがあるのだ。

 
 

NH Collection Roma Palazzo Cinquecento
Piazza dei Cinquecento, 90, 00185 Roma RM, Italy
http://www.nh-collection.com/en/hotel/nh-collection-roma-palazzo-cinquecento

 

Anantara Palazzo Naiadi Rome Hotel
Piazza della Repubblica, 48-49, 00185 Roma RM, Italy
https://www.anantara.com/ja/palazzo-naiadi-rome

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