Niigata’s Finest Nodoguro “Bihou”
新潟から届いた極上のどぐろ「美宝」── 選ばれし一尾の魅力とは
Wednesday, June 11th, 2025
世界的に評価が高まる食材の宝庫・新潟で、いま特に味わいたい旬の一尾があります。厳格な基準を満たしたブランドのどぐろ「美宝(びほう)」です。選ばれた港と漁法、極められた鮮度と美しさ。その魅力を、東京・東麻布のレストラン「Crony(クローニー)」で体験してきました。
新潟には、ブランド米や多くの日本酒、しいたけ、梨、いちじく、栃尾揚げに加え、「大口れんこん」や「越後姫(いちご)」、「新潟茶豆」、西洋なし「ル レクチエ」など、この地ならではの特産野菜・果物が多彩にあります。
昨年には、世界的な食のアワード「We’re Smart® ベストベジタブルレストラン」の授賞式が開催されるなど、多くのシェフや食通たちも注目するこの食材の宝庫において、まさにこれからの季節に旬を迎えるとっておきの食材に出合いました。いくつもの厳しい規格をクリアした、ブランドのどくろ「美宝(びほう)」です。今回はその貴重な「美宝」を試食させていただく機会に恵まれたので、早速その魅力をお伝えしたいと思います。
「美宝(びほう)」の特徴は、新潟県産のどぐろのなかでも、400g以上という大型であること、うろこが一枚も剥がれていないこと、はえ縄漁および刺網漁で取り上げられたものなど、厳格な基準が設けられている点にあります。
しかも、選ばれた3つの港の7漁船のみが獲ることを認められており、船によっては漁獲後に一尾ずつ袋に入れるなど、品質管理も他とは比べ物にならないほどに徹底されています。また、日帰り漁業が主体の新潟県であるからこそ、獲られたその日のうちに市場へ出荷されるため、鮮度も抜群。その美しさは、漁師たちの徹底した品質管理によって最高レベルで保たれています。
そんな「美宝」の魅力を、今回は特別に東麻布の「Crony(クローニー)」で、体験することができました。のどぐろが持つ本来の味、そしてその美しい鱗を、最高に美味しい状態で楽しめるようにと、シェフの春田氏渾身の炙り・生・昆布締め・蒸し焼き・焼きの全5つによる調理方法で、多彩な料理が振る舞われました。
Crony(クローニー)の春田理宏(はるた みちひろ)シェフ。
何よりも驚いたのは、その大きさ。ぱっと見は大ぶりなきんきかと思ってしまうほど立派な、1キロ前後もののどぐろでした。
切り身になって出てきても、その大きさは圧倒的。3センチはあろうかという身の厚さに加え、びっしりと美しくならぶ鱗。加熱されていくと、花が咲くように見事に鱗が立ちます。油を引いたフライパンへと移され、さっとグリルされていくと、立ち上ってくるのは、香ばしく芳醇な香り。オーブンへと移され、黄金色になった身をカットしていくと、美しいピンク色のレアな断面が現れ、肉汁ならぬ魚汁が溢れ出します。塩のみの味付けとは思えないほど、口いっぱいに広がる濃厚な旨味と出汁のジュース。コース開始前にすでに満足度が100%だったのは私だけではなかったと思います。
調理を経て見事な黄金色に変身したのどぐろの切り身。
そのあとのコースでは、生・昆布締め・蒸し焼き・焼きの4つのアプローチでのどぐろが用意されました。最初のふた品は生で、サクサクの生地に包まれたのどぐろの甘みが際立つ一口サイズのアミューズに、千切りにされた生のアスパラガスと生ののどぐろを合わせた、鮮度が際立つ一口タルトが登場しました。
続いてのハーブが香るスナップエンドウの前菜では、のどぐろを昆布締めに。ここでは、昆布の味を身に染み込ませるというよりは、脱水をさせることで旨味を増やしたといいます。スープとともに楽しむ、スナップエンドウのプチプチ感、すこしドライになって旨味が凝縮したのどぐろ、適度な塩気のキャビア、そのバランスが秀逸でした。
しかもこの料理をさらに昇華させたのが、同店の名物ソムリエである小沢一貴氏のペアリング。今回のコースでは、小沢氏によるペアリングが用意されており、この前菜に合わせられた、しっかりと冷えた「金鶴 本醸造 生酒」を飲むことで、料理だけでは味わえなかった美味しさがむくむくと出てきました。提供温度を一度単位で考えているという小沢氏ならではの、ペアリングの妙を感じずにはいられませんでした。
3品目では、フランス料理のように、タルタルにしたのどぐろを花ズッキーニに詰めて、ベニエのように天ぷらのように揚げたもの。天ぷらは揚げ物ではなく、蒸しものだというシェフも多いとか。衣で包むことにより、なかの水分をキープしながら蒸しているのだそう。黒ニンニクやエビのムースとともに、味の変化をも楽しめる絶品でした。
4品目には、グリルされたのどぐろが登場しました。焦げ目をつけて焼かれたアスパラガス、木の芽や山椒を添え、アスパラガスの皮とのどぐろの骨で出汁をとったソースとともに頂きました。フレンチなのに、和を感じられる繊細な味わいに、終始おいしい、と唸る声がそこかしこから聞こえてきました。食材を余すことなく使う、クローニーのシェフ春田氏のこだわりが伺える一品でもありました。
「美宝」が秘める可能性が解き放たれた今回の試食会。フーディの方にもそうでない方にも、ぜひ一度味わっていただきたい「美宝」の取扱店舗は、公式サイトで確認していただけます。掲載されていない名店で、運よく出会えることもあるとか。
新潟の食文化の底力を象徴する逸品が、いままさに旬を迎えています。次なる“美食体験”を求めるなら、「美宝」こそ、その筆頭に挙げたい一尾です。
「美宝」公式サイト
筆者 トッキー(時田幸奈)/ Yukina Tokida
THE RAKE日本版のシニアエディター兼ウェブディレクター。














