From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

イタリア流、ファミリーの絆の深め方
ブルーノ・ランディさん

Friday, October 25th, 2019

ブルーノ・ランディさん

ヴィターレ・バルベリス・カノニコ グローバル セールス マネージャー

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

ヴィダーレ・バルベリス・カノニコ(VBC)は、イタリア製ウールの最大の製造企業です。創業350年という圧倒的な歴史を誇ります。そこでグローバル・セールスのトップを務める、ブルーノ・ランディさんのご登場です。生地ビジネスのプロフェッショナルで、もう45年以上もテキスタイルに関わられています。生地の世界では、彼を知らない人はいないという有名人です。

「大学ではテキスタイルと化学を専攻していた。あまり勉強はしなかったけれど、試験ではなぜかトップランクの成績で、1973年の卒業後、エルメネジルド ゼニアに呼ばれて、そのまま入社したんだ。最初は生地のそのものに関わっていたが、だんだんとセールスやマネジメントの仕事も任されるようになり、80年代からは、ほうぼうを飛び回るようになった」

 

当時のエピソードで、今でも印象に残っているのは、ミラノ〜ナポリ間のフライトだそうです。

「それは世界一エレガントなフライトだった。機内は素晴らしいスーツに身を包んだ紳士でいっぱいだった。弁護士や会社のエグゼクティブのような人物たちが、こぞってナポリへスーツを作りに行っていたんだ。その頃のナポリには、今より数多くのテーラーがあった」

 

ナポリのテーラーの質が高い理由を、彼はこう説明します。

「かつてナポリには大勢の貴族がいた。彼らは何もやることがないから、テーラーを呼びつけて、スーツのあちらこちらをいじって楽しんでいた。ラペルの幅を数ミリ変えてみたりね。だからナポリのテーラーのレベルが上がって、よりマニアックになったんだ」

ブルーノさんの生地とファッションに関する造詣は、業界でも指折りといわれています。

ナポリ製のスーツは、スティレ ラティーノによるもの。

「(当主でアットリーニ家の長男の)ヴィンチェンツォとは古い友人なんだ。だからスティレ ラティーノではよく作る。生地はドラッパーズのヴィンテージ・コットンで、460g/㎡もある重いもの。冬でも着られるよ。私はスーパー180’sなどの柔らかい生地はあまり好まない。実用的なほうが好きなんだ」

 

シャツは、ミラノのそばのラボラトリオ・デル・カルミネ。生地はアルビニ製。

 

タイは、ラルフ ローレン。

私が、イタリア物以外もお召しになるのですね、と聞くと、

「かつてアメリカ・マーケットを担当していたことがあるからね。これは1983年に買ったもの。ラルフ ローレンと彼のタイは大好きだ。彼はもともとネクタイのセールスマンだっただろう?」

 

ブルーノさんのネクタイ・コレクションはすごいらしい。

「ネクタイだけで2000本近く持っている。ちなみにスーツも100着以上ある。かつて息子や娘の部屋だったところは、彼らが独り立ちしたいまでは、私のクローゼットになっている。ワイフにはクレイジーだといわれているよ(笑)」

時計はロレックスのデイトナ。

「ロレックスも好きで、20本以上持っている。ロレックスとVBCは、よく似ていると思う。クオリティは素晴らしいが、パテックやオーデマ ピゲのように超ラグジュアリーというわけではない。“ヴァリュー・フォー・マネー”で人を選ばないんだ」

 

シューズはエドワード・グリーン。

「持っている靴の8割はエドワード・グリーンだ。あとはオールデンも好きだね。日曜日には、いつも靴磨きをしているよ(笑)」

センスと知性に溢れた“テキスタイル博士”といった印象のブルーノさんですが、実はかなりの肉体派でもあります。

「趣味はエクササイズ。次男がフィジカル・セラピスト(理学療法士)をやっていて、メニューを考えてくれるので、毎日20分欠かさずやっている。それからジム通い。毎朝6時半には、必ずジムにいる。今朝も一汗かいてきたんだ。週末はサイクリング。愛車はビアンキのカーボン製ロードバイクで、12年前のモデルだが、まだまだイケるよ」

 

リングヂャケットの福島薫一社長は、自転車仲間だとか。

「彼もビアンキに乗っている。サイクリングを始めたのは私より遅かったのに、今では私より10倍も強くなってしまった。彼は年間5000キロも走るというから、クレイジーだよ(笑)」

 

この仕事の醍醐味は、

「世界中を旅して、行く先々に友人ができること」

だというブル―ノさんですが、やはりイタリア人らしく、いちばん大切なのは“ファミリー”です。

「息子ふたりと娘ひとりがいる。それぞれ1ヶ月に1回は、皆で集まって、食事をするんだ。それにクリスマスには3人に“旅行”をプレゼントする。兄弟3人だけで、好きな場所へ行ってもらうんだ。ボーイフレンドやガールフレンドを連れて行くのは禁止。支払いは私がする。兄弟の絆を深めるのには、いい方法だろう?」

 

なるほど、イタリア人のパパは考えることが粋ですね。

「実は“グランパ”でもあるんだ。孫がふたりいるんだよ。写真を見るかい?」

女の子は2歳、男の子は5ヶ月。まさにかわいいさかり。スマホの写真を見せつつ、相好を崩すブルーノさんは、優しいおじいちゃんの顔になっていました。

 

 

 

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