コツコツと実直で、温かい人が出世する
赤石貢一郎さん
Tuesday, July 10th, 2018
赤石貢一郎さん
グレーディーS.R.L社長
text kentaro matsuo photography tatsuya ozawa
グレーディーS.R.Lの社長、赤石貢一郎さんのご登場です。同社は、ナポリのサルト「ルカ・グラッシア」やタイの「スパッカ・ネアポリス」、ニットの「フランカ ペルージャ」、レザーの「リフージョ」、カプリシャツの「マッシモ・ダウグスト」、そしてバッグの「アカーテ」など、8つのブランドをイタリアから輸入・企画している新進のアパレル・インポーターです。これらのブランドは最近、有名セレクトショップなどでも取り扱いが増えているため、目にしたことがある方も多いでしょう。
かつて在籍していた親会社のギャレットでは、ファッション雑貨の国内営業をご担当されていました。若干35歳で社長に大抜擢された赤石さんにとって、イタリア人と直接やり合うのは始めての経験です。
「イタリア人はクリエイティブだけれど、頑固なところもありますね。彼らの個性を尊重しつつも、社長として対等に付き合い、日本のマーケットに合った商品を提供しなければならない。そこが一番難しいところです」
ヘビーオンスのリネン・スーツは、ルカ・グラッシアで仕立てたもの。ナポリ発の注目サルトです。
「三代続く、クラシックなテーラーです。しかし三代目のルカはアーティストに近く、とても新しい感覚を持っている。特徴としてはラペル幅が広く、ベントが深い。これがジャケットの独特の色気を生んでいます。またサルトなのに、シーズンごとにテーマがあるのも面白い。ちなみに今季のテーマは“水と土”です」
タイは、スパッカ・ネアポリス。こちらもナポリです。
「ニコラ・ラダーノという人が、学生時代から始めたブランドです。お父さんがネクタイ・コレクターだったとか。自分で小紋の柄からデザインしてしまう、こだわりがすごいです」
シャツはバルバ。
時計はパネライのルミノール。
「25歳の時に自分へのご褒美として買いました。シンプルでどんなスタイルにも似合うところがいいですね。ストラップは後付けなのですが、実は私の父親に作ってもらったものです。父の本業は消防士なのですが、昔から手先が器用で、私にいろいろなモノを作ってくれるのです。頼みもしていないのに、ある日突然、財布が送られてきたりします(笑)」
それは素晴らしいお父上ですね。ステッチもキレイで、まさに玄人はだしです。
靴はジョン ロブのロペス。私も大好きな一足です。
ちらりと見えるシューズ・イン・ソックスは、ギャレットのオリジナル。かつて赤石さんは、こういったものを扱われていました。
さて、赤石さんと話していると、どうしても、この言葉が頭に浮かびます。
それは“いい人”という言葉。とことん温厚なお人柄です。
例えば、こんなエピソードがあります。
「若い頃働いていた家具ショップで、大事故に遭いました。ノコギリで間違って自分の親指を切り落としてしまったのです。しかし、その時心配だったのは、指のことよりも、『社長に怒られる!』ということでした。血をどくどく流しながら、『すみません、すみません』と何度も謝っていました・・」
その後、親指は無事くっついたので、皆さんご安心を。しかし、とことんお人好しですねぇ・・
私が調子に乗って、赤石さんって、怒ったりすることあるのですか? と聞くと、
「半年にいっぺんくらいかなぁ・・」と頭をポリポリ。
その理由は何でした? と尋ねると、
「すみません、覚えていません・・」とのお答え。
以前このブログにご登場頂いたギャレット専務、藤原寛一さんは、実は赤石さんの上司にあたるのですが、曰く、
「今回のプロジェクトは、一緒にやっていて楽しい人間とやりたかった。だから彼を社長に抜擢した」そうです。
バリバリ仕事はこなすけれど、ツンケンしたタイプより、コツコツと実直で、温かい人のほうが出世する―——これが世の中の真理です。そのお人柄は、きっとイタリア人にも通じますよ。がんばって下さいね!