THE ART OF TAILORING
鴨志田康人の仕立てコレクション
December 2021
サルトリア仕立てをこよなく愛する鴨志田康人氏はロンドンのアンダーソン&シェパードやパリのチフォネリで仕立てたこともあるというが、今回お持ちいただいたものは、すべてイタリアで仕立てたダブルブレステッド。
それぞれのサルトリアの特徴が出ていて、大変興味深い。
photography tatsuya ozawa
text yuko fujita
鴨志田康人/Yasuto Kamoshita
1957年生まれ。ビームスを経て1989年、ユナイテッドアローズの設立に参画。クリエイティブディレクターを経て2018年よりクリエイティブ アドバイザーに就任。2008年よりスタートした自身のブランド「カモシタ ユナイテッドアローズ」が世界中で人気を集めているほか、2019 年よりポール・スチュアートの日本のディレクターも務めている。
鴨志田氏:Liverano & Liverano (2010)/トルソー:A. Caraceni (2003)
ある意味対極にあるふたつの服
「着用しているのは、最も自分らしく自然体でいられる、アントニオ・リヴェラーノが仕立てた服です。タブカラーシャツにニットタイの合わせは、個人的にはとてもリラックスできる、大好きな装いです。それと比較し、カラチェニの服はコンケーブした肩や内蔵物がしっかり入った典型的なミラノのスタイルで、威厳があります。マリオ・カラチェニさんと一緒に選んだ、油が抜けたドライなフランネルのストライプ生地が気に入っていて、着るシーンはやや限られますが、華やかなシーンで活躍しています」
鴨志田氏着用:Liverano&Liveranoのスーツ、Sovereignのシャツ、Liverano&Liveranoのタイ、Chartのチーフ、Rivoltaの靴、トルソー:A.Caraceniのスーツ、Charvetのシャツ、Ralph Lauren Purple Labelのタイ、ヴィンテージのチーフ/すべて本人私物
Antonio Panico (2002)
カットの美しさに純粋に
惚れ込んで仕立てた一着
「アントニオ・パニコさんの純粋に美しくとてもエレガントなナポリスタイルのスーツを堪能したくて、結婚式でも着られるような服をということで、ネイビーのモヘアウール生地で仕立てたものです。英国の恐らくハルステッドあたりのモヘアかと思うのですが、さすがのカッティングだと感心します。パニコさんのカットは前からとても好きだったので、リクエストは一切していません。皆さんもハウスカットが自分の好みでしたら、あまり注文をつけずにお任せで作ってもらうところから始めるのがオススメです」
Antonio Panicoのスーツ、Charvetのシャツ、Fermo Fossatiのタイ、ヴィンテージのチーフ、Sutor Mantellassiの靴/すべて本人私物
London House (2002)
マリアーノ・ルビナッチの
エレガントな肩に惚れ惚れ
「マリアーノ・ルビナッチさんが着ているドロップ気味のナチュラルな肩のラインがとてもエレガントで好みでしたので、それと同じように作ってくださいとだけリクエストして仕立てたものです。ロンドンハウスはヴィンテージの生地が膨大に積まれている宝庫でしたので、それを選ぶところから楽しみました。重みのある素晴らしいグレンプレイドの生地は、ヴィンテージ特有の油分の抜けた感じが気に入っています。今年心斎橋リフォームで大々的に直したのを機に、またよく着るようになりました」
London Houseのスーツ、Paul Stuartのシャツ、Charvetのタイ、Simonnot Godardのチーフ、Rivoltaの靴/すべて本人私物
Musella Dembech (2018)
ミラネーゼというより
フレンチの薫りがある服
「ムゼッラは当時アーモリーのスタッフだったアレッサンドロ・ピロウニスさんに紹介してもらって行ったのですが、親子揃ってとてもいい人で、2回目に訪ねたときにヴィンテージのいいギャバジンがあったのと、サンプルの中にこれに近いゴージの切り方をしているのがあって、それがとても気に入って作りました。黄味を帯びたギャバジンと独特のカッティングに70年代のフレンチの薫りを感じたので、4Bのダブルブレステッドにて仕立ててもらいました。初めてだったこともあり仮縫いは3回してもらったため、出来上がるまで一年半かかりました(笑)」
Musella Dembechのスーツ、Charvetのシャツとタイ、ヴィンテージのチーフ、Carminaの靴/すべて本人私物
Sartoria Dalcuore (2019)
遊びのシーンには最適な
羽織り感覚で着るスーツ
「ちょっと派手めなブルーのハイツイストウールで仕立てたダルクオーレのスーツは形がとてもよく大変軽やかで、今日のようにノータイだったりTシャツに合わせる羽織り感覚で着る一着として、今年の夏も大変重宝しました。もともと重厚感があるダブルの服をいかに軽く着るか、いかに肩の力を抜いてコンフォートな雰囲気に見せるかが自分の好きな着方なので、足元も軽やかなスリッポンを選ぶことが多いですね」
Sartoria Dalcuoreのスーツ、Liverano & Liveranoのシャツ、ヴィンテージのチーフ、Baudoin & Langeの靴/すべて本人私物