Interview - WILHELM SCHMID / A.LANGE & SÖHNE CEO

ドイツ古豪を成長させる手腕

May 2020

 私のクルマへの情熱は、カーディーラーのオーナーだった父から受け継ぎました。17歳のとき、人生初のヴィンテージカーである1963年式のMGB マークI ロードスターを購入しました。このクルマは今でも持っています。その後、2台のロードスターを入手しました。ミニマルで虚飾を排した実直さが大好きです。

 

 クラシックカーの魅力を知りたい方に適しているのは、パワフルで気品に満ち、心に響く物語を持つクルマでしょう。私にとって、速さ、色気、スタイルをすべて備えたクルマといえば、アルブレヒト・フォン・ゲルツ伯爵がデザインしたBMW507ロードスターです。誕生から60年以上経った今でも、以前と変わらぬ魅力を放っています。エルヴィス・プレスリー、アラン・ドロン、ウルスラ・アンドレスといったスターたちも、252台しか生産されなかったこのデザインアイコンを所有しました。

 

 

上下:A.ランゲ&ゾーネの工房にて、「1815クロノグラフ」を組み立てている様子。時計製造技術の伝統は今も脈々と受け継がれている。

 

 

 クルマと機械式時計には共通の魅力があります。どちらもどうやって動いているのか不思議に思うでしょう。時計ならば、小さな部品の数々をどう組み立てるのだろう、パーペチュアルカレンダーやトゥールビヨンが機械的に可能なのはなぜだろう、と。そこが魅力だと思うのです。

 

 自分が全面的に支持していないものを売るのは得意ではありません。もし私が以前から時計のコレクターでなければ、そしてA.ランゲ&ゾーネの事業を理解できると心から思っていなければ、ランゲの一員になることはなかったでしょう。幸いにも私は当社に自然になじめました。A.ランゲ&ゾーネは、ひと手間を惜しまないことや、いかなる近道も認めないことを大切にしているからです。私が重視したのは、自分たちの価値観を見失うことなく、よりグローバルなチームを形成し、チームの現代性を高めること。それが私の主な仕事でした。

 

 時計1本はアクセサリー、時計のコレクションは芸術だと考えています。2本以上の時計を持つ必要は必ずしもありませんから。ハイエンドな時計にも違いがなければなりません。時計はタイやカフリンクスとは違う、アクセサリーを超越したものなのです。高価な機械式時計の収集は、芸術品の収集に似ていますね。

 

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