WELCOME TO DOM PÉRIGNON RE:UNION CHEF’S TABLE

日本を代表するシェフが勢揃い
1日限りの異色のコラボイベント

July 2022

6月某日、東京・虎ノ門で1日限りのイベント『DOM PÉRIGNON RE:UNION CHEF’S TABLE』が開催された。

その様子をレポートする。

 

 

photography natsuko okada, tatsuya ozawa

 

 

 

 

 

 いまや世界的にその名を知らしめているシャンパーニュメゾン「ドン ペリニヨン」だが、その確固たる地位に満足することなく、常にさまざまな取り組みを積極的に行っているのをご存じだろうか。一般向けの特別なイベントはもちろん、ドン ペリニヨンとの関係を深めることやシェフたちの交流を育むことを目的に作られた「Dom Pérignon Society」や「DOM PÉRIGNON RE:UNION」といったクローズドなコミュニティ活動も、そんな取り組みのひとつである。

 

 なかでも、再会という意味を持ち、シェフたちが気軽に戻ってこられる場所でありたいという思いが込められた「DOM PÉRIGNON RE:UNION」は、日本のトップシェフで構成されたコミュニティ。このコミュニティがシェフたちの新たな刺激、そしてインスピレーション源となることで、日本のガストロノミー業界のさらなる活性化へとつながってほしい、との期待を込めて立ち上げたという。これまで同コミュニティを介したワークショップの実施など、さまざまな会を催してきたドン ペリニヨンだが、第三弾が開催されるにあたり、初めてメディアがその会へ足を踏み入れる機会を得た。本記事では、その様子をレポートしたい。

 

 まず今回のイベント『DOM PÉRIGNON RE:UNION CHEF’S TABLE』は、異なるジャンルのトップシェフたちが3つのグループにわかれ、ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008 をテイスティングしながら即興でペアリングディッシュを考案し、それぞれのテーマに合った料理を作り上げるというものだった。

 

 

 

 

 当日は合計14名のスターシェフが集結。午前と午後で計2セッション開催され、筆者が参加した午後の部では、イタリアン「ラ・ブリアンツァ」の奥野氏、焼鳥「鳥しき」の池川氏、天ぷら「くすのき」の楠木氏、元The Burn料理長で7月4日に「No Code」をオープンしたばかりの米澤氏、日本料理店「宮坂」の宮坂氏、そしてフレンチ「élan」の信太氏、石川・小松に7月14日にオープンする「オーベルジュ eaufeu」の糸井氏、そして精進料理「醍醐」の野村氏という錚々たる8名が登場した。Team1は米澤氏と宮坂氏、Team2には奥野氏・池川氏・楠木氏の3名、そしてTeam3は信太氏、・糸井氏・野村氏と、ジャンルも全く異なるシェフたちが3つのチームに分けられた。

 

 イベントの主役ともいえる「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008」は、酸味やピノ・ノワールの力強さ、華やかな香りのすべてが見事に調和しながらも、合わせる料理やあらゆるオケージョンに寄り添い、すべてをやさしく包み込んでくれる味わいが特徴の1本。かの有名なワイン評論家のジェームズ・サックリングに「100点満点中99点。このドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008は最上のロゼかもしれない」と言わしめた代物だ。

 

 5つのキーワード「Chiaroscuro(光と闇のコントラスト)」「Untamed & Carnal(大胆で野生的)」「Magnetic(惹きつけるような魅力)」「Vibrant(躍動感あふれる鮮やかさ)」「Tactile(触感)」で表現されるこの傑作に合わせて、シェフたちはどういった一皿を作り上げていくのだろう。

 

 

 

 

 料理で使用するメイン食材は、Team1には「フェンネル」、Team2には「タコ」、そしてTeam3には「ラム」が割り振られ、いかにドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008とペアリングさせた一品に仕上げるか、シェフ同士のディスカッションからイベントはスタートした。

 

 

日本料理店「宮坂」の宮坂氏が鰯を丁寧に下ごしらえ。

 

左から順に:天ぷら「くすのき」の楠木氏、イタリアン「ラ・ブリアンツァ」の奥野氏、焼鳥「鳥しき」の池川氏。

 

左が「オーベルジュ eaufeu」の糸井氏(左)と精進料理「醍醐」の野村氏(右)。右がフレンチ「élan」の信太氏。

 

 

 シェフたちに与えられた時間は、1時間半。ディスカッションを早々に終え、各チームが調理にとりかかる。ラム肉を捌き、タコを切り分け、フェンネルを刻む……シェフの華麗な手捌きに見惚れていたら、下ごしらえが済んでいたり、ソースが出来上がっていたりと、みるみるうちに完成へと近づいていく。とはいえ見ているこちらはどういった料理が出来上がるのかまったく検討がつかない。想像力を膨らませながら、漂ってくるおいしい香りを鼻腔いっぱいに広げ、すこし泡が収まったことで、開けたてとはまた異なる味わいの「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008」を堪能する。これ以上ない贅沢な瞬間だった。

 

 チーム内でシェフ同士が互いに作ったソースなどの味見をしながら、微調整が進められていく。「うん、いいね」。そんな会話があちこちで聞こえてきたと思ったら、あっという間にタイムリミットだ。それでは完成した料理を紹介していこう。

 

 まずチーム1が作り上げたのは細く切ったイワシの上に、角切りにしたフェンネル、千切りにしたアスパラや赤色の万願寺、黄色の人参や茗荷を出汁につけたものをフワッと盛り付け、仕上げにフェンネルの葉やシード、花を散りばめた「フェンネルと鰯 夏野菜 出汁ひたし」。

 

 ライムジュースとラズベリーをアクセントにしたマスタードソースのさわやかな酸味、夏野菜のシャキシャキ感、イワシのフレッシュさ、生花の苦味、ほのかに香る出汁……酸味を感じさせながら、しっかりと受け止めてくれるドン ペリニヨンのロゼとこれ以上ないほどに絶妙にマッチングする。初夏を感じさせる、目にも鮮やかで爽やかな前菜だ。

 

 

「フェンネルと鰯 夏野菜 出汁ひたし」。

 

 

 タコをメイン食材として割り振られたチーム2は、「タコのミンチのキョッキ ドン ペリニヨンのフランベ」「タコの三草焼き」の2品を作り上げた。前者は、プリプリに揚げられたタコをメインに、粉末状にした桜海老を加えクッキーのように焼き上げた軽やかなメレンゲと発酵バターで焼かれたジャガイモのニョッキ、そしてシャキシャキの歯ごたえが心地よいアスパラガスなど、食べ進めるにつれて異なる食感、味わいが楽しめる一品。

 

 ソースは、たこの頭と口先の部分をミンチにし、フェンネルと生クリーム、バターを加え、「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008」でフランベしたものと、トマトとワサビ、パセリを使ったオイルの2種。

 

 主役であるタコは柚子胡椒と青さのり、そして海老の旨味を加えた衣でフリットされており、噛むほどに磯や海老の香りとタコの甘みが口いっぱいに広がる。それぞれの余韻を感じながら、ロゼを流し込めば、そのふくよかさがすべてを包み込み、また新たな味わいを生み出す。どれかが強すぎても、弱すぎてもここまでロゼの良さを引き出せないのだろう。シェフたちによって華麗なまでに計算された塩梅が、見事なマリアージュを叶えていた。

 

 もうひと品の“焼き”をテーマに仕上げたという「タコの三草焼き」には、醤油を使用し、日本らしさも表現。食材はズッキーニ、パプリカ、玉ねぎ、じゃがいも、ニンニク、そして紫蘇の花。こちらも食べる組み合わせによって味わいが異なり、ロゼを口に含むとこれまた違った顔を見せてくれる。ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008の深みのあるボディにも負けない、いや、互いを引き立て合うコンビネーションが心地よい余韻を生み出していた。

 

 

「タコのミンチのキョッキ ドン ペリニヨンのフランベ」。

 

「タコの三草焼き」。

 

 

 チーム3が作り上げたのは、ラムを使用した「Domタコス Pérc’ソースを あgnon時の甘いひととき」(誤字ではない)。「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008」を使用したピリッと辛味の効いたソース、実山椒やヘーゼルナッツ、クミン、コリアンダーといった華やかなスパイスが印象のタコスと、グリルしたラムをワンプレートで楽しめる一皿。オレンジピールやローズマリーを使いつつ、あえてシンプルにラムを焼き上げることで、ロゼが持つナッティさを引き立て、添えられたいちじくのフルーティさや甘味、そしてラムのジューシーさと絶妙に調和していた。

 

 “ドンタコス”は、角切りにしたパプリカやトマト、玉ねぎ、トマト、バジルといったフレッシュな野菜で仕上げた冷たいサルサと薄切りにしたラムをオリジナルのトルティーヤで包み、最後にコリアンダーをたっぷりと。辛味がアクセントのソース、その見た目からは想像できないほど豊かなスパイスの味わい、そして期待以上のコンビネーションの良さに、誰もが唸った。

 

 一見相反する“スパイシー”と“ロゼ”だが、スパイシーさを爽やかに、かつすっきりとまとめあげるロゼの力強さ、そして包容力を再認識させてくれるような一品だった。

 

 

「Domタコス Pérc’ソースを あgnon時の甘いひととき」。

 

 

「ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ 2008」は、類稀な可能性を秘めている。その絶対的な包容力、度肝を抜く多面性、そしてその力強くも繊細な仕上がりは、あえて料理と合わせることにより、さらなる高みへ昇華するのだ。

 

 異なるジャンルを専門とするシェフが知恵を絞り、さまざまな技術を凝縮しながら、ひとつの料理をともに作り上げていく–––新たなガストロノミー文化は、こうして生まれていくに違いない。「DOM PÉRIGNON RE: UNION」がもたらす、底知れぬ影響力を見せつけられた1日だった。