‘MERINO WOOL SWIMWEAR HANGS BEAUTIFULLY, LIKE A WELL-TAILORED SUIT'

CEOインタビュー:南仏のセレブに愛されたスイムウェア“ヴィルブレクイン”

November 2023

1970年代のサン・トロペで生まれたブランド、ヴィルブレクインは、世界一ラグジュアリーなスイムウェアを売る店として知られている。そのCEO、ローラン・ハーロリーにインタビューした。

 

 

text charlie thomas

 

 

Roland Herlory/ローラン・ハーロリー

ヴィルブレクインCEO。エルメスで20年間、特別注文のディレクターやラテンアメリカのリージョナル・ディレクターを務めた後、2012年にヴィルブレクインのCEOに就任した。モダンアートの収集家であり、旅行と海を愛している。ラグジュアリー・ビジネスの専門知識を生かし、ファッションとサステナビリティの両立を目指す。

 

 

 

 ヴィルブレクインの設立者フレッド・プリスケルは、ブランドを立ち上げる前は、F1ジャーナリストだった。グラハム・ヒル、サー・ジャッキー・スチュワート、ジョン・サーティースなど、伝説的なドライバーたちを追いかけて、ヨーロッパ中を駆け巡っていたのだ。

 

 モナコからドイツのニュルブルクリンクまで、サーキットの内外を問わず、ドライバーたちはそのプレイボーイぶりを発揮していた。実に華麗な時代だったのである。1971年、プリスケルが南仏サン・トロペにオープンさせたショップ=ヴィルブレクインは、そんな華やかさでいっぱいだった。鮮やかな色彩、美しいフィット、リラックスしたエレガントなデザインを特徴としていた。プールサイドで、海で、そしてバーで、南仏で最もクールなスポットで、ブランドはジェットセッターたちに愛された。短期間のうちに、ヴィルブレクインはフレンチ・リヴィエラと、そこに集まるセレブリティを象徴する存在となったのだ。

 

 それは今日においても変わらない。「2023年春夏コレクションの新作には、ヴィルブレクインの生まれ故郷である南仏の、温かみのあるカラーが使われています」とブランドのCEO、ローラン・ハーロリーは言う。サンシャインイエロー、コバルトブルー、サーモンピンク、コーラルレッドといった鮮やかなカラーは、遠くからでもよく目立つ。その色調はスリム・アーロンズの写真を彷彿とさせ、見る者をコート・ダジュールの海へと誘う。

 

「今シーズンは、太陽の光を浴びたようなオレンジやレッドがあちこちに見られます。特にふたつのプリント模様が、今回のコレクションを代表しています。ひとつ目の“サニー・ストリート”は、サン・トロペを散策しているような気分にさせてくれます。描かれている村の黄土色の壁は、夏の美と“ノンシャラン”な気分をよく表しています。ふたつ目は“プロヴァンス・マーケット”で、地中海のグルメをプリントしたものです。トマト、アーティチョーク、ナス、そしてニンニクです」とハーロリーは言う。

 

 

ヴィルブレクインのシグネチャーであるウミガメのモチーフのトランクスと腰部に取り付けられたロゴパッチ。

 

 

 

 ヴィルブレクインは、鮮やかな色彩と多様な柄のスイムショーツで人気のブランドだ。シグネチャーであるウミガメのモチーフから、マッシモ・ヴィターリのようなフォトグラファーとのコラボレーションまで、その水着は数多くのイメージで彩られてきた。しかし今シーズンは、ウールマーク・カンパニーとのコラボレーションで、高級テーラリングの世界からインスパイアされた、落ち着いたデザインのシリーズを発表した。プリンス・オブ・ウェールズ・チェック、クラシックなギンガムチェックなどを含むコレクションは、すべてウールマーク認定のメリノウールで作られている。

 

 その製作には32もの工程が必要で、型紙を使って高級トラウザーズと同じように裁断される。重要なのはサステナビリティの要素だろう。ほとんどのブランドがスイムショーツにナイロンの混紡素材を使用しているが、メリノウールは環境に優しく、驚くことに乾くのも早い。

 

「ウールマーク・カンパニーとの最近のコラボレーションをとても誇りに思っています。これはバージン・メリノウールだけで作られた、初めてのスイム・トランクスなのです」とハーロリー。

 

「メリノウールは天然素材100%で、再生可能で、水に強い。また、ほとんどの化学繊維に比べ、乾燥時間が短いのです。これはスイムウェアのテクノロジーにおける大きな進歩です。軽量で通気性に優れ、仕立てのよいスーツのように美しいドレープを描くので、エレガントに見えるのです」

 

 その仕上がりを見ると、なぜ今までウール素材の水着がなかったのかと不思議に思うだろう。ハーロリーはこう続ける。

 

「メゾンの創始者は、かつてパリのサン・ピエール市場に速乾性のあるテキスタイルを探しに行っていました。彼は、ヨットの帆に使われるスピネーカー地でも、アフリカでの兵役中に見つけたワックス地でも、何でも試したそうです。スイムウェアには独特の必須条件があります。生地は丈夫で、塩素や海水に強く、速乾性に優れていなければなりません。私もずっと、化学繊維しかないと思っていました。しかし、メリノウールに出合って、考えが変わりました。技術を駆使すれば、性能を犠牲にすることなく、天然繊維を水着に取り入れられると思ったのです。今回のプロジェクトで、それを証明することができました」

 

 

画期的なメリノウール100%の素材を使用したスイム・トランクス。ネイビーのPOW柄。

 

 

南仏プロヴァンスで収穫されるさまざまな旬の野菜が描かれた“プロヴァンス・マーケット”柄のトランクス。

 

 

 

 ヴィルブレクインを他のブランドから際立たせているのは、サステナビリティについての取り組みだ。彼らはアパレル産業が地球に与える影響について、真剣に考えている。

 

「サステナビリティについては、より環境に優しい生地から、ゴミや二酸化炭素の排出量の管理まで、あらゆるレベルで取り組んでいます。企業文化を根底から変えることを目指しています」とハーロリーは胸を張る。

 

「ヴィルブレクインにとって、サステナビリティにはいくつかの意味があります。まず第一に、そしておそらく最も重要なことですが、高品質の服を提供することです。ヴィルブレクインのスイムウェアは、一生使えるように作られています。愛され、持ち続けられ、そして受け継がれていきます。メッシュ地からウエストバンド、ドローストリングに至るまで、リクエストに応じてリペアすることができます。私は“クオリティ”という言葉の本当の意味は“修理が可能である”ことだと思っています。製品の寿命を延ばすために、クオリティにお金をかけることは、サステナビリティの最も重要な部分です。使用する素材についても、常に見直してきました。現在、メンズ・スイムウェアの100%がリサイクル繊維で作られており、93%がリサイクル素材やオーガニック素材から調達されています」

 

 これは、どの企業も考えなければならないテーマだ。ヴィルブレクインの魅力は、70年代から続くチャーミングなブランド・ストーリーにある。しかし最も注目すべきは、今日行われているサステナビリティへの取り組みなのだ。

 

 

ヴィルブレクインのスイムウェアの特徴は、親子サイズで同じ柄のアイテムが用意されていることだ。家族全員でお揃いの水着を着ることができるのである。