VENICE FILM FESTIVAL’S GREATEST DRESSED
ヴェネツィア国際映画祭で
お洒落だったセレブたち
September 2022
壮大さ、エレガンス、そして気品……。
世界最古の映画祭、ヴェネツィア国際映画祭の期間中に訪れるセレブたちは、街の美しさに負けじとその装いを競い合う。
ここでは過去のベストドレッサーたちを紹介しよう。
text: CHRIS COTONOU
ヴェネツィアで撮影されたフランスの歌手・女優、フランソワーズ・アルディ(1964年)。
ヴェネツィアは、街の美しさに溶け込むよう、訪れる人々を鼓舞する。リド島では、世界の名だたる俳優や映画監督たちが最高の仕立て服とガウンを身に纏い、100年近い伝統を誇る映画祭のメイン会場サラ・グランデでのプレミア上映に参加する。
劇場を離れても、ゴンドラや宮殿、サン・マルコ広場を歩き回るスターたちの姿がカメラマンによって撮影されている。ここでは、リドで撮影された不朽の名作を紹介するとともに、時代を超えたタイムリーなスタイルを紹介しよう。
<マルチェロ・マストロヤンニ>
まずは、イタリアン・メンズウェアの偉大なヒーローからご紹介しよう。マルチェロ・マストロヤンニは元祖「ラテン・ラヴァー」であり、『甘い生活』(1960年)、『イタリア式離婚狂想曲』(1962年)、『8 1/2』(1963年)、『ああ結婚』(1964年)といった名作に出演。名匠フェデリコ・フェリーニ監督の下で多くの役をこなした。
イタリア・ローマのテーラリングと英国の靴を好んでいたマストロヤンニ。ヴェネツィア時代の写真からは、オフホワイトのコットンやリネンの軽やかなソフト・テーラリングを好んでいることがわかる。カトリーヌ・ドヌーヴやソフィア・ローレンを魅了したのも不思議ではない。
<三船敏郎>
ヴェネツィアを歩き回る日本の俳優、三船敏郎の画像は、ファッション系SNSにおいてもはや定番となっている。黒澤明監督の『羅生門』(1950年)や『七人の侍』(1954年)に主演した日本のレジェンドは、サン・マルコ広場で鳩と遊んだり、ゴンドラでタバコを片手に寛いだりして、最高の時間を過ごしているように見える。
三船の1950年代におけるアイビーリーグ・スタイルは非の打ち所がなく(日本人はこれを極め続けている)、彼のポロシャツとチノーズは、スマートカジュアル・ルックのお手本といえるだろう。
<ポール・ニューマン>
ヴェネツィアでのポール・ニューマンのこの写真は、すべてが完璧のひと言である。ブラックのディナースーツ、手首のチェーン(服装と同じくらい重要)、立派なブロンドの髭を蓄えて大運河をクルーズするハリウッドの伝説的人物の姿には、男性的な気品が溢れている。派手な服を着て目立とうとするのは簡単だが、ヴェネツィアのセレブリティの中で本当に印象を残すには、ニューマン風のシンプルさが一番だということを思い知らされる。
<ジャン=ポール・ベルモンド>
映画祭では、皆がタキシードを着ているわけではない。大きな鼻と痩せたボクサーのような体型だったジャン=ポール・ベルモンドは、1960年代の映画界においていつもノンシャランなバッドボーイであった。『勝手にしやがれ』(1960年)と『気狂いピエロ』(1965年)でスターになった彼は、チノーズ、Vネックのセーター、ストライプ・シャツでヴェネツィアの街に繰り出した。
これはベルモンドの時代を超越したスタイルが感じられる素晴らしい写真だ。午後の上映会からハリーズ・バーでのディナーまで、理想的なアンサンブルである。
<フランソワーズ・アルディ>
率直に言って、シンガーソングライターのフランソワーズ・アルディの装いは、多くの男性にとってカジュアルウェアの着こなしの手本となり得る。ヴェネツィアで多くの時を過ごした彼女のレザージャケットとホワイトジーンズのルックは、フランスのロックンロール・シックを象徴するものだ。
ホワイトジーンズは、チノーズやフォーマルなトラウザーズに代わる素晴らしいアイテムで、デニムシャツやお気に入りのロゴ入りTシャツにも合わせられる。彼女がミック・ジャガーを魅了したのも不思議ではない。