Vacheron Constantin: 20th anniversary of the Patrimony collection

パトリモニー20周年を記念し、オラ・イトとの限定モデルが登場

November 2024

ヴァシュロン・コンスタンタンは「パトリモニー」コレクションの20周年を記念し、メゾンの「One of Not Many(少数精鋭の一員)」キャンペーンのタレントを務めるフランス人デザイナー、オラ・イトとの特別限定モデルを発表した。技術的な複雑さとシンプルで控えめなスタイルを持つパトリモニーが、オラ・イトとコラボレートするのは自然な流れだった。

 

 

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 ヴァシュロン・コンスタンタンのパトリモニーは、昔からあるクラシカルなコレクションのように感じられるかもしれない。しかし、実は今年で誕生20周年である。2004年に発表されたこのコレクションは、その精神とスタイルにおいて、同社の1950年代のタイムピース、特に、超薄型の手巻きムーブメントを搭載したRef.6179とRef.6187にインスパイアされている。

 

 その美しい意匠の忠実な再現には、目を見張るものがある。ラウンドケースにスリムなベゼルの組み合わせ、ドーム型のダイヤルと、そこに沿うように緩やかな曲線を描く細身のアプライドインデックス、バトン型の時分針、パール状のミニッツトラック、そして洗練された仕上げ。ミニマリズムの美学とメカニカルな卓越性を組み合わせる時計製造の伝統が、そこかしこに息づいている。パトリモニーはこの20年間、そのスタイルを貫きつつ、当時世界最薄を記録したミニッツ・リピーターをはじめ、パーペチュアル・カレンダー、ムーンフェイズ&レトログラード・デイトなど、さまざまな機構を搭載したバリエーションを展開し、人気を博してきた。

 

 


左:1957年に発表されたRef.6179。右:同じく1957年のRef.6187。どちらもラウンドケース、スリムなベゼル、短いラグ、フラットな文字盤、そしてパール状のミニッツトラックを備えており、超薄型の手巻きキャリバーを搭載していた。

 

 

 

 パトリモニーの20周年を記念した登場したのは、メゾンが2019年にスタートさせた「One of Not Many(少数精鋭の一員)」キャンペーンにおいてタレントを務めるフランス人デザイナー、オラ・イトとのコラボレーションにより生まれたモデルだ。

 

 彼は、建築における家具だけでなく、香り、電話、公共交通機関にいたるまで、さまざまな分野で活躍している。「良いデザインとは使い捨てのものではなく、永遠に残るように本質を見据えてデザインされたものである」と信じ、複雑な問題に対してシンプルな対策を提案する「Simplexity(シンプレキシティ)」という造語を自身のデザイン哲学とする。目に見えない複雑さ(complex)を伴う対象に、シンプル(simplicity)な外観を与えるのだ。この、一見相反するふたつの概念を融合させるのが彼の得意とするところであり、その精神はパトリモニーと見事に合致する。

 

 

 

オラ・イト
1977年生まれ。19歳からさまざまなブランドの3Dオブジェクトの制作を始め、以降、商品デザインや建築の分野で活躍。2011年にはフランスで芸術文化勲章を受賞。

 

 

 

 実際に長年パトリモニーを愛用してきた彼が、このプロジェクトを進めることがどれほど困難なことであったかは想像に難くない。パトリモニーは究極のミニマルウォッチであり、わずかなディテールにまでスタイルの精神を宿しているため、デザインやディテールを一歩間違えれば、パトリモニーではなくなってしまう。

 

 そこで彼が取り組んだテーマは、1950年代に流行したイエローゴールドによる“モノクローム”だ。このワントーンによって、ヴィンテージのインスピレーションを強調し、既存のスタイルを壊すことなく、彼らしさを見事に融合させている。

 

 

 

 

 40mmのイエローゴールドケースに合わせられたイエローゴールドの文字盤には、さざ波を思わせる同心円が描かれている。光を取り込む無数の同心円が輝くことで、ドーム状のダイヤルの表面にシンプルな円形の幾何学模様が波紋のように広がる。また、アプライド・インデックス、パール状のミニッツトラック、ダイヤルの湾曲に沿って緩やかにカーブした針が同じくイエローゴールドにより統一され、レトロな雰囲気と圧倒的な存在感を放っている。ロゴは、文字盤上ではなくサファイアクリスタルの裏側に施した。日付表示もまたゴールドとし、数字はストラップと同様のバーガンディとした。このストラップは、最も印象的に大きい特徴かもしれない。丸みを帯びたエッジのレクタンギュラー型のエンボスパターンは、ミッドセンチュリーを感じさせるこの時計にぴったりであると同時に、ある種のレトロなスポーティさも感じさせる。彼はパトリモニーのスタイルを尊重しながらも、新たな領域へと慎重に押し進めたのだ。

 

 

 

 

 ケースバックからは、自社製の自動巻きキャリバー2450 Q6が見える。ペルラージュ仕上げが施されたメインプレート、コート・ド・ジュネーブ模様で飾られたブリッジ、マルタ十字から着想を得たオープンワークのローターなどが美しい。

 

 厚さわずか3.6mmのこのムーブメントには、196個の部品が使用され、振動数は4Hz、パワーリザーブは40時間。ジュネーブ・シールの認定も受けており、機能性も申し分ない。

 

 

 

 

 ヴァシュロン・コンスタンタンは、その豊かな伝統に忠実でありながら、現代人のニーズやトレンドにもアピールする。この100本限定モデルは、イエローゴールドのインパクトと親しみやすさ、そして現代人が求める実用性を兼ね備えている。じっくりと鑑賞する価値のある、特別なエレガンスを纏ったタイムピースである。

 

 

 

 

パトリモニー・オートマティック

世界限定100本

自動巻き、18KYGケース、40mm

¥5,280,000(発売時期は要問い合わせ) Vacheron Constantin

 

 

ヴァシュロン・コンスタンタン

TEL.0120-63-1755

www.vacheron-constantin.com/