VACHERON CONSTANTIN 2023 NEW MODELS

レトログラードで魅せるエレガンス

March 2023

1755年、スイス・ジュネーヴで創業したヴァシュロン・コンスタンタンは、世界最古のマニュファクチュールとして知られている。創業以来、一度も途絶えることなく時計製造を続けてきたという矜持を持ちつつも、常に革新的な技術力を取り入れることにより、時計を芸術品として洗練させることに努めてきた。愛好家たちからも高い支持を得る実力派ブランドの新作が発表された。

 

 

by the rake

 

 

 

 

 今季のテーマは「Less’ential(レセンシャル)」。これは「Less」と「Essential」を組み合わせた造語であり、バウハウスムーブメントの原則“Less is more(少ないことは豊かである)”に基づいている。つまり、メゾンの時計製造において「シンプルなデザインを追求することで、より美しく、豊かなものが生まれる」という考えを意味する。そこで新作の中から、ヴァシュロン・コンスタンタンを代表する機構、レトログラードを搭載した3本に注目したい。

 

 レトログラードとは、機械式時計における表示機構のひとつ。針が1周する通常の表示方法とは異なり、扇状の表示の弧に沿って針が始点から終点へと進み、終点に到達すると瞬時に始点に戻って再び進み始めるという、ユニークな表示方法である。耐久性と正確な作動が要求されるため、極めて高度な技術力と精密な加工を必要とする機構だが、視覚的にも楽しめる、ミニマルで美しいデザイン要素のひとつとなるのだ。

 

 ヴァシュロン・コンスタンタンは、このレトログラード機構を早くから得意としてきた。最初に⼈気を集めたのは1920年代のこと。当時はアールデコのデザイン様式から着想を得たスタイルで頭⾓を現していたが、以降も絶えず進化を続け、現在にまで続いている。今年は主軸コレクションである「パトリモニー」「トラディショナル」「オーヴァーシーズ」の3つに、特徴的なレトログラードを搭載してきた。それぞれをチェックしていこう。

 

 

 

1.「パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト」

 

 

 

 1920年代〜30年代の特殊なレトログラード表⽰から着想を得たミニマルなデザインのモデルから、2023年の限定生産としてプラチナケースとサーモンカラーダイヤルの組み合わせが登場。日付と曜日のそれぞれに、伝統的なブルースティール針によるレトログラード表示を採用し、ダブルレトログラードとなっている。時間と分は18Kホワイトゴールドの針で表⽰する。

 

 

 

 

 サーモンカラーダイヤルは1940年代から採⽤されているが、プラチナケースとの組み合わせは1990年代に注目を集め、近年は年間限定⽣産でさまざまなコレクションで展開。メゾンのヘリテージの⼀部を表現するデザインとなっている。ダイヤルはサンバースト仕上げが施されており、「パトリモニー」コレクションらしい、控え⽬でありながら調和の取れたエレガントな雰囲気だ。

 

 

 

 

 ムーブメントは、⾃社製の⾃動巻きキャリバー2460 R31R7/3。振動数は毎時2万8800回。マルタ⼗字から着想を得てデザインされた22Kゴールド製ローターが備わり、パワーリザーブは約40時間。ブリッジの⾓のポリッシュ仕上げや、部品の側⾯を滑らかにするストレートグレイン仕上げは⼿作業により丁寧に⾏われ、スクリューも⼊念に磨き上げられている。メインプレートは両⾯にペルラージュ模様、ブリッジはコート・ド・ジュネーブ模様で装飾されている。

 

 

パトリモニー・レトログラード・デイ/デイト

2023年限定生産。ブティック限定モデル。

自動巻き、Ptケース、42.5mm ¥9,970,400(予価/今夏以降発売予定) Vacheron Constantin

 

 

 

2.「トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス」

 

 

 

「トラディショナル」コレクションならではの伝統的なディテールを残しつつも、現代的なデザインを取り入れたアバンギャルドなモデル。何よりも目を引くのは、マルタ⼗字を象ったトゥールビヨンとレトログラード・デイト、そしてオープンワークによって見ることのできるそのメカニズムだ。

 

 

 

 

 オープンワークとは、ダイヤルが部分的にくり抜かれ、内部の機構が見えるようになっていること。これもまた、ヴァシュロン・コンスタンタンが得意とする技術のひとつである。1918年に天⽂カレンダーを搭載した懐中時計で採用されたその表現は、21世紀に再び蘇りさまざまなモデルで見られるようになった。このモデルでは、トゥールビヨンとダイヤルの中央上半分、ちょうどレトログラード表⽰の下がオープンワークになっている。表面がNAC処理によりスレートグレーに仕上げられた自社製キャリバー2162 R31の一部が露わになり、ダイヤルやストラップのグレーと相まって現代的なデザイン性を高めている。

 

 

 

 

 毎時1万8000回の振動、厚さ6.25mmのキャリバー2162 R31は、トゥールビヨンとレトログラード・デイトを組み合わせ、242個の部品から成る。ジュネーブ・シールを取得しており、約72時間のロングパワーリザーブを確保。装飾を施したゴールド製ペリフェラルローターを搭載するなど、ケースバックからも視覚的に楽しめる仕様となっている。

 

 

トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス

自動巻き、18KPGケース、41mm ¥28,798,000(予価/5月以降発売予定) Vacheron Constantin

 

 

 

3.「オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト」

 

 

 

 マルタ⼗字を思わせる特徴的なベゼルや、ポリッシュとサテンブラッシュを組み合わせた仕上げ、半透明のラッカーダイヤル、夜光性のインデックスと針、工具不要でブレスレットやストラップを交換できるインターチェンジャブルシステムなど、スポーティシックなスタイルが人気の「オーヴァーシーズ」。その特徴を保持しつつも、コレクションで初となるレトログラード・デイトと⾼精度ムーンフェイズを搭載したモデルが登場した。

 

 

 

 

 サンバーストサテン仕上げを施すことにより光の加減でさまざまな表情を⾒せる半透明ブルーラッカーのダイヤルを採用。この上半分に、レトログラード・デイト表示が取り入れられている。6時位置には、スポーティな雰囲気を損なうことなくムーンフェイズを配置。外周の⽬盛りから⽉齢(新⽉から経過した⽇数)を読み取ることができ、122年で1⽇の修正しか必要としない高精度なものだ。

 

 

 

 

 搭載のムーブメントは、厚さ5.4mmの自社製キャリバー2460 R31L/2。ペルラージュ模様を施した地板や、旅や冒険のテーマを想起させる⽅位図のモチーフを象った22Kゴールド製ローターは、サファイアクリスタルのケースバックから鑑賞することができる。パワーリザーブは40時間。レトログラードの⽇付やムーンフェイズの修正も含め、すべての調整はリュウズひとつで⾏うことができる。

 

 

 

 

 ステンレススティールブレスレットに加えて、カーフスキンのレザーストラップ、ブルーのラバーストラップも付属する。もちろん、シンプルで実⽤的なインターチェンジャブルシステムも健在。工具を使うことなく、自身で交換することが可能だ。

 

 

オーヴァーシーズ・ムーンフェイズ・レトログラード・デイト

自動巻き、SSケース、41mm ¥7,114,800(予価/今夏以降発売予定) Vacheron Constantin

 

 

 

ヴァシュロン・コンスタンタン

TEL.0120-63-1755

www.vacheron-constantin.com/jp/