TUDOR: BLACK BAY 31 / 36 / 39 / 41 S&G
印象をコントロールする“サイズ”選び
November 2022
時計選びにおいて、ケースサイズは大きな悩みどころである。チューダーは単一のコンビモデルに対して4サイズを用意し、選ぶ楽しさを広げた。
text tetsuo shinoda
photography jun udagawa
BLACK BAY 31 / 36 / 39 / 41 S&G
ベゼル、リュウズ、ブレスレットのコマに18Kイエローゴールド素材を使用した、スポーティかつ華やかなコンビモデル。4つのケース径で展開するが、インデックスのデザインや針の長さなど、全体のプロポーションは統一。ダイヤルカラーは、写真のブラック、シルバーのほか、シャンパンゴールドもラインナップ。すべてのモデルが、100m防水。自動巻き、SS×18KYGケース。上から時計回りに：31mm、41mm、36mm、39mm
ファッションにおいてサイジングは重要なポイントであると同時に、時代のトレンドが反映されやすい部分でもある。例えばモードファッションのシルエットは時代で異なるように、スーツも着丈やシルエットの潮流が時代によって異なる。紳士服において「身体に合っていること」は大切だが、その解釈は実にさまざまなのだ。
このサイズ感覚の問題は、時計選びにおいても悩ましいものである。スーツやシャツと同様に、腕時計もまた身体と無関係ではない。ケースが大きくなればそれだけ堅牢性が増し、ダイヤルが広がれば視認性も向上するというメリットがあるが、大きくなりすぎれば手首へのフィット感は損なわれるし、悪目立ちすることもある。逆にケースが小さくなると、フィット感は向上するが視認性が低下するし、容積が小さくなるため物理的に機能を加えるのが難しくもなる。時計のケースサイズに正解はなく、大きすぎても小さすぎても一長一短である。だからこそ、サイズ選びには持ち主の考えが表れるし、機構やデザインとも違った観点での“選ぶ楽しさ”がある。どんなサイズの時計を選ぶのか。それもまたひとつの個性の表現なのだ。
搭載している自社製ムーブメントは、31mmモデルがキャリバーMT5201（写真）、36mmモデルがキャリバーMT5400、39mmモデルがキャリバーMT5602、41mmモデルがキャリバーMT5601。すべて、高精度の証となるCOSCクロノメーター認定を取得している。最も径が小さいMT5201のみ、パワーリザーブは約50時間となっているが、ほか3モデルは約70時間を誇る。
時計業界全体のトレンドとしては、特に2000年代以降、ケースサイズが拡大し続けていたが、昨今はひと息ついて、小径へと戻りつつある。ジェンダーレスという世相の影響もあってか、小径＝女性用、大径＝男性用と決めず、多彩なサイズを用意するブランドも増えている。
しかし単一モデルにおいて4サイズも展開しているのは、チューダーをおいて他にはあるまい。新作「ブラック ベイ S＆G」は、チューダーらしい堅牢なケースはそのままに、ベゼルはシンプルな仕上げとなっており、ダイヤルの大型インデックスによるタイムレスなデザインを特徴とする。「S＆G」とは、「Steel & Gold」の意味で、すなわちコンビネーションケースのこと。スポーティさとエレガンスが同居するこのモデルは、サイズによって着用の印象をガラリと変えるため、どのサイズを選ぶか、そして何色のダイヤルを合わせるかを検討する楽しみがある。
さらにこの4モデルは、細かなディテールにまで気が配られている。それぞれがキャリバーナンバーの異なるマニュファクチュールムーブメントを採用している。通常、カレンダーなどの表示位置はムーブメントによって左右されるものだが、このモデルは4モデルともノンデイト＆センターセコンドのため、表示のデザインが崩れることはないし、針の長さやダイヤル内の表記などもダイヤル径に合わせて調整されているため、バランスも悪くならない。どのサイズを選んでも間違いはないのだ。
個人的には、チューダーが得意とする39mmサイズが最もバランスがよいと考える。標準的なサイズ感で、収まりもいいだろう。またかつての紳士時計のスタンダードなサイズだった36mmなら、レトロな雰囲気を楽しめそうだ。もちろん腕元に迫力を加えたいなら41mmの存在感は見逃せないし、コンビケースだからこそ31mmの小径モデルをブレスレット感覚でサラリと着けるのも大いにアリだ。いずれにせよ、ブティックで試着してじっくり悩んで選んでほしい。
この写真の着用モデルは最も大きい41mm径だが、大きすぎるという印象はない。コンビケースで華やかさがありながらも、ブラックダイヤルにより、やや引き締まった印象を与える。
The Rake Japan Edition Issue48
