TRICKER'S: ENGLAND'S OLDEST SHOEMAKER

トリッカーズ:英国一の老舗靴

July 2020

 

「われわれは1904年以来、変わらずここにおり、伝統を守っていますが、同時にハイテクの変化にも対応していかなければなりません」

 

 メイソンは2015年に同社に入社して以来、eコマースサイトのローンチやシーズンごとのコレクションなどを牽引して来た。そのどちらをも成功させたメイソンには、大きな信頼が寄せられている。輸出も伸びており、特にアジア地域での躍進は目覚ましい。

 

 メイソンはノーザンプトンの靴メーカーについて、それぞれのブランドを代表する“定番”が人気を持つ時代になっているという。トリッカーズの場合は、間違いなく“カントリー”のシリーズだ。それは同社の最高峰モデルでもある。

 

 

 

 

 ノーザンプトンの高級靴メーカーの例に漏れず、トリッカーズはその昔ながらの工房の中で、すべてのアッパーをひとつずつ手作業でカットしている。そして熟練した職人が操るさまざまな工作機械を使って、一足の靴に仕上げていく。職人たちが特に集中するのは、同社を代表するベビーウエイトのブローギング・シューズを作るときである。それはさまざまな特徴的なディテールを持っている。

 

 工房で行われるプロセスは、靴の持つ美しさを維持するために必要なものばかりだ。ブローギング(穴あけ)の工程は、1927年にデザインされ、同社の最も人気のあるふたつのモデル、バートンとストウを作るにおいて特に重要だ。

 

 メイソンはバートンを手に取り、工房内を歩きつつこういった。

 

「われわれにとってカントリー・シューズはアイデンティティそのものです。もし他の会社がこれをやろうと思っても、絶対に同じものはできないと断言できます」

 

 アッパーが仕上がると、次はラスティングのプロセスに移る。全体的に、トリッカーズのラストは幅広である。細くて上品なヨーロピアン・スタイルと違い、典型的な英国スタイルは、短く丸いトゥを特徴とする。

 

 アッパーはラストの上に留められて、革を馴染ませるために、そのままの姿で数週間寝かされる。これに続いて、グッドイヤー・ウェルテッドによる底付けが行なわれる。ご存知の通り、主要パーツであるウェルトが交換可能なので、グッドイヤーの靴は何十年も履くことができる。

 

 近年“グッドイヤー”の名前は、いい靴を表す代名詞となっており、やたらと乱用されているが、ノーザンプトンをおいて、その本場と言える場所はない。

 

 

 

 

 アッパーとウェルトは、インソールに接着されたリブへと取り付けられ、その状態で2〜3週間置かれた後、コルクを詰めて、アウトソールが縫い付けられ、トリミングなどの仕上げ工程を経て靴が完成する。

 

 それは驚くべき職人技の集積であり、クラフツマンシップの粋である。こうしてトリッカーズならではの無骨な、しかし美しい靴が生まれるのだ。

 

 靴はそれからポリッシングなどの最終工程を経て、顧客の元へ届けられる。トリッカーズのカントリー・シューズには、さまざまな色合いのブラウンが揃っており、それらは履き込むほどに味わいを増す。

 

 

 

 

 トリッカーズはいまや世界的なシューメーカーとなった。頑丈で丈夫なプレタポルテの靴となると、世界一のブランドといえる。

 

 「人々は今、オリジナルであるもの、そして唯一無二なものを求めています。私たちのようなブランドにとって、そしてノーザンプトンのすべての靴メーカーにとって、今のような時代は大きなチャンスだと思います」とメイソンは語った。

 

 

 

 そのクオリティ、時代を超越したデザイン、そして素晴らしい歴史を持つトリッカーズは、英国ブランドの白眉である。もしあなたが、トリッカーズのことをよく知らないのなら、バートンかストウからの購入を強くおすすめする。彼らは多くの先人が認めたベストセラー・モデルであり、すぐにあなたのワードローブのベスト・フレンドになるだろう。

 

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