イタリア？ 英国？ アメリカ？
トラウザーズの選び方

　着用するトラウザーズのスタイルは、主に選択した上着のスタイルによって決まる。トラウザーズは、単独で足を覆うだけではなく、むしろ上着のスタイリングを完成させる存在なのだ。

 

　上着とトラウザーズの組み合わせを見るとき、トラウザーズはセットアップであっても、スーツの一部であっても、単独で考えることはできない。それは結婚を間近にしたカップルが“結婚カウンセリング”に単独で参加できないのと同じだ。したがって、トラウザーズのフィット感を確認した後、一緒に着る予定のスーツの上着、またはジャケットを身につけてみてほしい。

 

　多くのイタリアとフランスのメゾンが提供しているような超スリムな上着は、同様にスリムで折返しのないトラウザーズで補完され、狭い裾幅に似合うレースアップシューズで完成となる。

 

 

 

　逆に、構築的な上着を愛するサヴィル・ロウの伝統主義者や英国趣味のアメリカ人は、プリーツと2インチの袖口を備えたフルカットのトラウザーズを愛し続けている。ウィングチップやブローギング・シューズの上で描かれる、その優雅なブレイクは、葛飾北斎の“富嶽三十六景”に出てくる美しい波のようだ。

 

　次の質問を自らに問うてほしい。上着の肩はどのように構成されているか？　ポケットのフラップ、チケットポケット、ターンバック・カフスなどの要素はいくつあるか？　ラペルの幅とボリュームはどのくらいか？　袖の直径はどのくらいか？　裾の開き具合はどのくらいか？　上半身にボリュームがあるアイテムが来る場合、常識的には、下半身のバランスをとるために、フルカットのトラウザーズが必要になると思われる。

 

 

 

　“愛国心とは、自分が生まれたという理由で、その国が他よりも優れているという思い込みのことである”と文学者ジョージ・バーナード・ショーは書いた。地理的な忠誠心を盲目的に信じることは、最悪の傲慢と愚かさだというわけだ。

 

　トラウザーズに関しては、確かにそうだ。国籍にこだわることなく、テイストとフォルムに基づいて、慎重に選択する必要があるのだ。