HERITAGE IN MOTION: THE WORLD OF JCW
英国レーシングの血統 —— ジョン・クーパー・ワークスの世界
October 2025
JCW=“ジョン・クーパー・ワークス”シリーズはレースにかけたひとりの男の情熱を、現代に伝えるものである。
text tatsuya kushima
MINI JOHN COOPER WORKS ACEMAN E
(ミニ・ジョン クーパー ワークス・エースマン E)
“エースマン”は、5ドアボディのコンパクトSUVでBEV専用車となっている。広々とした車内にはJCWスポーツシートが奢られ、スパルタンにまとめられている。大人5人がゆったりと寛ぐことができ、なおかつスポーツカーとしての楽しさも満点なのである。全長×全幅×全高:4,080×1,755×1,515mm 最高出力:190(258)kW(ps) 0-100km/h加速:6.4秒 一充電走行距離:403km(WLTCモード)¥6,410,000~ Mini
BMWにMシリーズが、メルセデス・ベンツにAMGが あるように、MINIにはJCWがある。ジョン・クーパー・ワークスの頭文字をとったそれは、スペシャルなモデルであることを表している。MINIチャレンジと呼ばれるワンメイクレースでも、JCWは専用クラスでカップカーを製造販売しているほどだ。
ジョン・クーパー・ワークスは文字通りジョン・クーパー氏の作品である。彼自身はすでに他界しているが、1960年代の功績を讃えるような位置づけだ。それは当時レーシングガレージを営んでいた彼がMINIを改造しラリーで輝かしい成績を残したことに端を発する。その頃のモンテカルロラリーでの三連勝がそれ。彼はMINIのポテンシャルに目をつけレーシングカーに仕上げた。
そして今日MINIの開発陣はその功績と理念のもと、スタンダードモデルをベースにレーシーなJCWをラインナップする。先日英国で行われたメディア向け国際試乗会はその最新モデルを試すもので、当日は4種類の車両が並んでいた。2リッター直4ターボエンジンを積んだ3ドアハッチバックとコンバーチブル、電池を動力源とするBEVの3ドアハッチバックとエースマンだ。
MINIは昨年ほとんどのモデルが新世代へと進化した。と同時に、“MINI”は“MINIクーパー”と、“クロスオーバー”は“カントリーマン”と伝統の名前を継承。そして今年それをベースにJCWが誕生した。ガソリンエンジン車はスタンダード車同様の2リッター直4ターボだが、パワーはクーパー Sの204psから231psにアップしている。
見どころはJCW初の電気自動車で、そこに新境地が生まれた。床下にバッテリーを敷き詰めた重いボディのクルマをどうJCW風に仕 上げるかというところだ。現地で開発者と話をしたときもその折の苦労を語っていた。
それを踏まえてステアリングを握ったBEVのエースマンE JCWはなかなか興味深いものだった。そもそもスタートダッシュを含め、加速のいいBEVがさらに反応よくなっているのだから恐れ入る。出力は258ps、0-100km/h加速は6.4秒とスペック表示されるが、体感はそれをはるかに超える。
しかもハンドリングは軽快でMINIらしさは失われていない。開発陣は重くなったボディの動きを心配していたが、仕上がりは上出来だ。それにサスペンションのセッティングをこれまでのJCWと変えたことで乗り心地もよくなった。これにはちょっと驚きで、これまでのようなピッチングはかなり消された。そこはまさに新境地である。
というのが新型の印象だが、その礎には英国的クルマの楽しいほうがあると感じた。比較的小さなボディをキビキビ走らせるのがそれだ。その意味で新型JCWもまたクラシックMINIの時代からの血統を引き継いだといえる。
新世代MINIのデザインをまとったエースマン E JCW。このモデルは今回初のお目見えとなるBEV専用車である。よってヘッドライトの形状は個性的。MINIの伝統を引き継ぎながら新しさを表現する。ダッシュボードの大型センターモニターは新世代の証し。MINIブランドのみで採用することを鑑みればかなりコストがかかっている。新型JCWはカラーが豊富なのもポイントだ。
『THE RAKE 日本版』Issue65より抜粋












