The Style of Salon de Plus
ファッショニスタの隠れ家 サロン ド プリュス、クールの秘密
September 2023
神宮前のビル内にひっそりと佇むパーソナル・オーダーサロン。その特徴は、贅沢な素材とニュアンス・カラー。とりきりのセンスで貫かれたアイテムたちが、お洒落通の間で話題となっている。
text kentaro matsuo
神宮前サロン ド プリュス店内にて。得意のニュアンス・カラーの着こなしを披露。Tetsuya wears: アラシャン・カシミア製ジャケット ¥440,000、ブラックデニム製トラウザーズ ¥68,000 both by Salon de Plus Stockman wears: アラシャン・カシミア製ダブルコート¥780,000、コットンジャージー製トラウザーズ¥62,800、モックネックニット ¥17,600 Nomiamo、シューズ ¥204,600 Edward Green all by Salon de Plus
伊藤哲也氏
1978年、東京都生まれ。LINK+代表取締役。サロン ド プリュスの経営・企画・接客のすべてを担当する。有名セレクトショップ勤務20年超を経て、2018年にサロン ド プリュスをオープン。独自の感性によって貫かれたオーダーサロンとして、お洒落通の間で話題となっている。
―サロン ド プリュスとは何ですか?
モダンな意匠でまとめられたサロン ド プリュス店内。オーダー価格はコート¥120,000〜、ジャケット¥90,000〜、スーツ¥120,000〜、トラウザー¥38,000〜。東京都渋谷区神宮前3丁目6-4 フォーラムビル3F TEL.03-6434-0470
「2018年夏にオープンさせたパーソナル・オーダーサロンです。完全予約制で、一回に一組のお客様しかお呼びしません。基本的に生地見本を見て頂き、お客様の身体に合った洋服をオーダーして頂くMTM(メイド・トゥ・メジャー)のシステムなのですが、サロンドプリュスの特徴は、たくさんのデザイン・サンプルが置かれていることです。通常のテーラーとは、少しテイストが違うのです。基本はクラシックですが、贅沢な素材、ニュアンスカラーと呼ばれる中間色、そしてリラックスした、モダンなデザインを特徴としています。初心者の方はもちろん、オーダーメイドを極められた方にも好評です」
―ニュアンス・カラーとは何ですか?
「ニュアンスは“あいまい”という意味で、サロン ド プリュスの最大の特徴のひとつです。柔らかな中間色をトーン・オン・トーンで重ねていくスタイルのことですね。こうすると土臭くなく、都会的な雰囲気を演出でき、何より生地の表情を生かすことができます。ドレープが美しく見えるのです。それから女子ウケもいいんですよ(笑)。ニュアンス・カラーは、高級なウィメンズのカラーリングで多用されている手法ですから」
―今季イチオシのジャケットを教えて下さい。
アラシャン・カシミア製の看板アンコン・ジャケット。ダークグレー・モカ。460g/m ¥440,000(オーダー価格) Salon de Plus
「今季イチオシなのはイタリアの超一流ミル、ピアチェンツァ製のアラシャン・カシミアを使ったジャケットです。内モンゴルのアラシャン地方で採れるカシミアで、素晴らしい光沢を持っています。ピアチェンツァのものは表面を天然アザミで毛羽立たせてあり、ふんわりとした質感が堪りません。発色も類を見ないものです。これを副資材を省いたセンツァ・インテルノで仕立てました。とにかく軽く着やすい。例えば、内側の大見返しは“細見返し”仕様にして、さらに軽量にしてあるのです。しかし卓越したアイロンワークによって、きちんとしたシルエットは出しています」
―おすすめのスーツは?
スーパー150’Sの高級感と扱いやすさを両立したBLAZON製スーツ。250g/m ¥268,000(オーダー価格) Salon de Plus
「イタリアの高級品専門マーチャント、ドラッパーズの“BLAZON Super150’S”で仕立てられることを強くおすすめします。ファクトリーはカノニコで、同社では最上クラスの生地です。一般的にスーパー150’Sクラスになると、質感・高級感は素晴らしいものの、扱いが難しくなりますよね。しかし、これはコシ・ハリがあり、シワにならず、丈夫で耐久性もあります。打ち込みの加減が絶妙なのですね。ビジネス用として毎日着ることができます。デザインパターンも豊富で、特に無地ネイビー〜グレーのカラーバリエーションが豊富です」
―ベストセラーの靴があると聞きましたが・・?
サロン ド プリュスが別注したラバーソールのローファー。ブラックカーフ製。¥204,600 Edward Green / Salon de Plus
「英国エドワード グリーンの“デューク”をラバーソールで別注したモデルがもうびっくりするくらい売れました(笑)。サロン ド プリュスのシグネチャー・ローファーです。革底に比べ、ラバーソールは履いていてラクで疲れず、雨の日でもOKで滑りません。靴としての“スタミナ”が違うのです。ブラックのソールで足元も引き締まります。よい靴を気兼ねなく履きたいという方に大好評で、アッパーの素材違いで何足も買われる方もいらっしゃいました」
―最高に贅沢な1着はありますか?
神の繊維ビキューナを混ぜ込んだ最高級素材“COCOON”を使ったジャケット。350g/m ¥880,000(オーダー価格) Salon de Plus
「イタリアのピアチェンツァの“COCOON”を使ったジャケットはいかがでしょう? ビキューナ20%✕ベビーカシミア80%の混紡地となります。とにかく獣毛としては頂上素材であるビキューナを手に取り、感じて頂くことができます。ふんわりと空気を含み、コクがあってまろやか。“コクまろ”ですね(笑)。着た感じもぜんぜん違います。ホイップクリームのような着心地……とでも申しましょうか? これは他の素材では体験し得ないものです。希少性が高く、値段もどんどん上がっています。ピアチェンツァは自社農場を抱えており、ビキューナのなかでも特に質のいいものを提供しています。混紡されているベビーカシミアもモンゴル産の最高級品で、染色技術もパーフェクト。ビキューナ100%に比べると、価格がリーズナブルなところも魅力です」
―カジュアルなアウターでおすすめは?
ピンウェール(極細コーデュロイ)素材で仕立てられたハリントン・ジャケット。¥168,000(オーダー価格) Salon de Plus
ピアチェンツァのアラシャン・カシミア製ジャージー素材が使われた最高級ハリントン。¥440,000(オーダー価格) Salon de Plus
「クラシックなハリントン・ジャケットを現代風にモダナイズさせた1着がシグネチャー・アイテムです。ラグランスリーブで袖のパターンを工夫し、生地のドレープ感がキレイに出るようデザインされています。ベーシックですが、オヤジ臭くならない。晩秋まではアウターブルゾンとして着られますし、真冬になったら、この上からコートを羽織ってもいいのです。インナーもモックネックやパーカなど、何にでも合わせることができます。汎用性の高さが一番の魅力だと思います」
―インナーには何を着たらいいですか?
スーパー100’Sの原毛を24ゲージで編んだ国産モックネック・ニット。ブラックとグレーの2色展開。¥17,600 Nomiamo/Salon de Plus
「元ストラスブルゴにいた神藤光太郎さんが手掛けているNomiamo(ノミアモ)のモックネック・ニットが売れています。国内の工場で24ゲージにてふんわりと編まれており、素晴らしいクオリティです。ウール100%ですが、まったくチクチクしません。毎日着られるハイクオリティなニットといえます。ウチのお客様はなぜかタートルは好まれない。しかしクルーネックだと首が露出しすぎる。ということでモックネックが人気なのです。まとめ買いされる方が多いですね」
―トラウザーズで今季のおすすめは?
ナポリ・カチョッポリ製コットン98%✕ポリウレタン2%のストレッチ素材を使ったトラウザーズ。¥62,800 (オーダー価格) Salon de Plus
日本を代表する有名産地のブラックデニムを使ったツープリーツ・トラウザーズ。¥68,000(オーダー価格) Salon de Plus
「今シーズンおすすめしたいボトムスは新しいゆったりしたシルエットのトラウザーズです。ツーインプリーツで、腰回りにゆとりがあります。ベルトループの他にドローコードがついていて、ウエストを絞ることができます。締め上げたときに、フロントのドレープがキレイに出るよう計算して作られています。ウエストは、どんどんドローコード仕様になっていますね。クラシックが好きな人は、最初は嫌がるのですが、一回作るとそのラクさにすっかりハマってしまうのです」
―足がキレイにみえる定番のトラウザーズがあると聞きましたが?
ピンウェール素材のトラウザーズはサロン ド プリュスの定番。1本持っておくと非常に便利。¥62,800(オーダー価格) Salon de Plus
「ピンウェール(極細コーデュロイ)のトラウザーズは1本持っているととても便利なアイテムです。プレーンなコットンだとのっぺりしてしまうのですが、ピンウェールだと他の起毛素材と相性がいいのです。それに太いコーデュロイは土臭いものですが、細いとモダンな雰囲気が漂います。こちらはアウトプリーツで、やはりドローコードが付きます。ドローコードをつけると、合わせる靴の範囲も広くなります。このトラウザーズには、レザーシューズはもちろん、オールスターなどのスニーカーもしっくりくるのです。ウチのキラーアイテム。常連のお客様は必ずお持ちになっています」
―コートはどんなものがいいですか?
上2点:伊ピアチェンツァの厚手アラシャン・カシミアで仕立てたダブルコート。460g/m ¥638,000(オーダー価格) Salon de Plus
伊ピアチェンツァのアラシャン・カシミアで仕立てたシングル・ラグランスリーブのコート。基本の1着が欲しいならこちらを。460g/m ¥580,000(オーダー価格) Salon de Plus
上2点:伊ピアチェンツァの3プライ・アラシャン・カシミアで仕立てたダブルコート。素晴らしい風合い。550g/m ¥780,000(オーダー価格) Salon de Plus
「ピアチェンツァのアラシャン・カシミア製で厚手の生地を使ったものにトドメを刺します。軽くて温かく、とろけるような風合いで、優雅なドレープを描きます。まさにラグジュアリーな1着です。シングルもありますが、圧倒的にダブル・ブレステッドが売れています。少しモードな雰囲気が漂うところが人気の秘密だと思います。肩はラグラン・スリーブになっていて、体を包み込むような着心地です。もちろんチェスターやポロコートも作ることは出来ますが、ウチではセットイン・スリーブのものよりも、ラグランが人気です。ドレープ感にハマる人が続出しています(笑)。ピアチェンツァのアラシャン・カシミアは染色の技術が高いことでも有名で、さまざまなカラーバリエーションからお選び頂くことができます」
―コーディネイトのコツを教えてください。
コート ¥780,000、ハリントン・ジャケット ¥168,000、トラウザーズ ¥62,800(以上オーダー価格)、インナー 参考商品、シューズ ¥204,600 Edward Green all by Salon de Plus
「ニュアンス・カラーを生かした、実にサロン ド プリュスらしいコーディネイトです。色を丁寧に重ねていったトーン・オン・トーンの組み合わせ。カシミア製のアウターに、コットン製のブルゾンとトラウザーズを合わせていますが、色のバランスを取ると違和感がなく、それぞれの素材の表情が生きてきます。コツはトーンの変化をつけすぎないこと。例えばトラウザーズの色はアイスグレーを選んでいます。これがホワイトだと、ちょっとクリア過ぎるのです。メリハリはシューズでつけましょう」
―大人のためのモードを提案しているとか……どんなものですか?
ベルベット・コーデュロイのジャケット。カラーはブラック、メタルボタン付き。¥158,000(オーダー価格)Salon de Plus
ベルベット・コーデュロイのジャケット。カラーはブラック・グリーン、メタルボタン付き。¥168,000(オーダー価格)Salon de Plus
ブラックデニムのトラウザーズ。¥68,000(オーダー価格)Salon de Plus
「シックなムードを楽しむ“大人のためのモード”をご提案しています。いまブラックの服が新鮮だと思うのです。デザインはクラシックですが、装いにツヤを与えてくれるようなアイテムを加えるのです。ここにご紹介するジャケットは、ブラック系ですが、ベルベット・コーデュロイ素材なので光沢があり、ボタンもメタル製だから重い感じになりません。ニュアンス・カラーにも合わせやすい。お洒落ビギナーにも似合うし、いろいろと着こなしきたベテランの目にも新鮮に映るはずです。さくっと羽織って頂けるよう、シルエットはやや緩めに仕上げてあります」
―モード感のあるコーディネイトは、どうすればいいですか?
グレーのコート ¥638,000、スモーキーグレーのジャケット ¥148,000、スモーキーグレーのトラウザーズ ¥62,800(以上オーダー価格)、インナー ¥17,600 Nomiamo、シューズ¥204,600 Edward Green all by Salon de Plus
「オール・グレーのコーディネイトはいかがでしょうか? 全身グレーもサロン ド プリュスにおける王道の組み合わせです。同じグレーでも明度の変化をつけて、レイヤード感を演出します。ただし老けて見えないように、ツヤのある素材を選ぶのがコツです。こちらも色のコントラストをつけすぎず、できる限りハーフトーンで揃えます。ただし、足元はブラックで引き締めを。グレーは実に懐の深い色です。それぞれの生地の特徴が出ますし、シワのひとつひとつが美しく見える。これぞグレーという色の醍醐味だと思います」
サロン ド プリュスは間違いなく、いま最も話題となっているパーソナル・オーダーサロンのひとつである。実際のサンプルを見て、自分の好きな生地を選び、ぴったりのサイズでオーダーというスタイルが好評なのだ。
ズバ抜けたセンスを持つ店主・伊藤哲也氏への信頼も篤く、熱狂的なファンを増やし続けている。顧客の年齢層は40〜60代が中心、職業は一般のサラリーマンから経営者、医者、投資家までさまざまだという。
クラシック〜ソフトまで自由自在、ディテールや芯地の入り方まで細かく指定できるが、まずはサロンおすすめのリラックスしたスタイルをチョイスしてみよう。ラグジュアリーで、ややモード感があり、女性ウケもいい。
今回は贅沢な素材を使ったものを中心に紹介したが、オーダー価格はコート¥120,000〜、ジャケット¥90,000〜、スーツ¥120,000〜、トラウザー¥38,000〜とリーズナブル。
完全予約制だが、見学のみも大歓迎だというから、まずは電話かメールで気軽に連絡してみよう。伊藤氏の優しい人柄と的確なアドバイスは、他では得難いものである。
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東京都渋谷区神宮前3丁目6-4
フォーラムビル3F
TEL.03-6434-0470