THE RAKE STYLE GUIDE: WOMEN IN SUITS
ザ・レイク・スタイル・ガイド:スーツを着た女性
November 2022
テーラードを着こなした5つのファッション・アイコンと女性のためのスーツについて考察する。
by THE RAKE
フランスに向けて出航する女優マレーネ・ディートリッヒ(1933年)。
近年、ウィメンズのテーラリングは、サヴィル・ロウでもよく作られるようになり、ランウェイでも常にフィーチャーされるようになった。今回は、ウィメンズ・スーツにおける、代表的な5つのファッション・アイコンをご紹介しよう。
マレーネ・ディートリッヒ
『モロッコ』(1930年)、『ブロンド・ヴィナス』(1932年)、『妖花』(1940年)でマレーネ・ディートリッヒが見せた白いタキシードとダブルブレストのスーツは、女性のテーラリングを初めてグラマラスなものにした。その結果、1939年に『ヴォーグ』誌が初めて女性のトラウザーズ姿を見開きで掲載し、40年代にはキャサリン・ヘプバーンがそれに続いた。
ディートリッヒは生涯を通じてテーラードを着続け、サヴィル・ロウのアンダーソン&シェパードでスーツをオーダーした最初の女性になった。
「ル・スモーキング」イヴ・サンローラン
1966年、イヴ・サンローランは、まだ女性のトラウザーズ着用に対する偏見が残っていたにもかかわらず、女性のためのフルディナースーツ「ル・スモーキング」を発表した。カトリーヌ・ドヌーヴをイメージ・キャラクターに起用したこのスーツは、瞬く間に上流社会で人気を博した。
1975年、『ヴォーグ』フランス版に掲載された、パリのオーブリオ通りで女優ヴィベケ・ヌードセンを撮影したヘルムート・ニュートンの写真は、このスーツの象徴となり、さらに脚光を浴びるようになった。
「ル・スモーキング」は、サンローランが意図したように、イブニングドレスに代わるウエアとして、スーツが女性に着られる転機となった。そして、その中性的なタッチは、ミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイのような男性の着こなしにまで影響を与えた。
ツイッギー
1960年代後半から70年代初頭にかけてのロンドンはボヘミアンにとってパラダイスだった。パンクロッカーやミュージシャン、アーティストたちは、ジェンダーレスな着こなしをしていた。その中心にいたのが、英国人モデル兼シンガーのツイッギーだ。
彼女はサヴィル・ロウのナッターズでエドワード・セクストンが仕立てたダブルブレステッド・スーツを着用し、彼女専用の杖を持ち、英国のダンディ・ルックに身を包んでいた。メイフェアの男たちのように颯爽と現れ、瞬く間に時代の寵児となったのだ。
ビアンカ・ジャガー
ミック・ジャガーの元妻ビアンカ・ジャガーも、元夫と同様、1970年代から80年代にかけて、アンドロジナス的な服装をしていたことで知られている。
1971年、ミック・ジャガーとの結婚式の日に、イブ・サンローランのスモーキングジャケットとバイアスカットのスカートで撮影された写真は、ポップカルチャーの歴史を代表する一枚となっている。彼女は、白いブライダルスーツの代名詞となったのだ。
それ以降、彼女は街に出るとき、いつも白のテーラードを着ていたし、今でもそうしている。
フラン・レボウィッツ
来ているのはスーツではなく、制服。少なくともフラン・レボウィッツ自身はそう定義している。カルチャーコメンテーターである彼女は、アンダーソン&シェパードのオーバーサイズのテーラードを、英国製のシャツとゴールドのカフリンクスと一緒に、30年以上にわたり着用してきた。
一見無造作だが、同じスタイルを続けることにより、彼女は偉大なスタイル・アイコンとなった。ピンストライプのブレザー、リーバイス501、ブラウンのブーツ以外の服装を想像できない女性、それがフラン・レボウィッツだ。