THE RAKE FILM FEST: THE UNTOUCHABLES
映画『アンタッチャブル』のレイキッシュな衣装
September 2022
禁酒法時代を舞台にした映画『アンタッチャブル』(1987年)では、マフィアのボスが身に纏うレイキッシュな衣装に驚かされる。
by FREDDIE ANDERSON
左から:ジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア)、ジム・マローン(ショーン・コネリー)、エリオット・ネス(ケビン・コスナー)、オスカー・ウォレス(チャールズ・マーティン・スミス)の4人。
『ゴッドファーザー』(1972年)とその続編が大成功を収めた後、パラマウント社は実話を基にした『アンタッチャブル』の映画化に商機を見出した。だがこのプロジェクトのキャスティングとマネージメントは、複雑で困難を極めた。未知数の俳優と制御不能な監督との組み合わせを考えると、決して成功するとは思えなかったのだ。しかし結果的に、この映画は犯罪スリラーの傑作となっただけでなく、その驚異的な衣装においても賞賛されている。
シカゴのマフィアのボス、アル・カポネを演じたロバート・デ・ニーロの衣装には、完璧なリアリティがある。デ・ニーロは、アル・カポネと同じ服を着ることにこだわり、カポネの仕立て屋を探し当てたほどだ。
映画公開時のクレジットには間違いがあったが、デ・ニーロの衣装、特に法廷で彼が着ているライトグレイのスリーピース・スーツは、ニューヨークのヘンリー・スチュワートによるもの。パッドでビルドアップされた広い肩幅が特徴的だ。白いフェルトのフェドラ帽と膝丈のキャメルヘアのオーバーコートは、この映画の象徴的なアイテムである。
この作品では俳優がウエストコートを着用していないシーンはほとんどない。アンディ・ガルシア、ショーン・コネリー、ケビン・コスナー、チャールズ・マーティン・スミスらが、ウエストコートのさまざまな着こなしを披露している。このうち、アイルランドの警官ジム・マローンを演じたショーン・コネリーが、彼の生涯で唯一のオスカー(助演男優賞)を受賞している。彼の着こなしに注目してみたい。
コスナーやマーティン・スミスと比べると、より無骨な印象である。細畝のコーデュロイのジャケットに、首元までボタンのある淡い色のシャツ、赤い生地のウエストコート、アンクルブーツ、そしてニュースボーイ・キャップを身に着けている。映画評論家の中には、コネリーといえばボンドよりも『アンタッチャブル』を連想する者もいるが、それは彼の見事な演技に加えて素晴らしい衣装ゆえだといえるだろう。