THE HISTORY OF THE PEA COAT
ピーコートの歴史
December 2018
さまざまなメンズアイテムは、
軍モノをルーツとしている。
機能的であること=いいデザインだからだ。
ピーコートはその白眉である。
by christian barker
スパルタ人は、勇猛な戦士として知られていたが、実際には実用を重んじる人々だった。深紅のチュニック(キートンと呼ばれていた)を纏っていたのは、戦闘によって敵味方の血がついても、目立たないという理由からであった。
レオニダス王とテルモピュライの戦いの時代から、何千年もの間、軍服というものは、まず“実用的”であることを優先してデザインされてきた。多くのメンズウェアは、軍服をルーツとする場合が多いが、それは機能的であることが、イコールいいデザインだったからだ。
チノパン、Tシャツ、トレンチコート、ネクタイ(クロアチアの傭兵が深紅のスカーフをしていたのは、スパルタ人が深紅を纏っていたのと同じ理由ともされる)、カーゴパンツ、デザートブーツ、ボンバージャケット、アビエーターサングラス、さらにはメンズスーツそのものまで、戦場から生まれて来たファッション・アイテムは枚挙に暇がない。そして今回取り上げるピーコートも同類である。
ブレザーなどと同じく、ピーコートは海軍をルーツとする服だ。18〜19世紀のオランダ、英国、アメリカの船員が着用したアウターに基づくと言われている。もともとはオランダ語の“ピージャッカ”が語源とされる。丈夫な青いウール布を意味する“ピー”と、メンズ用のヘビーなショート・ジャケットを意味する“ジャッカ”が合わさったものだ。念のために言うと、“ピー”は、英語でグリーンピースを意味する“ピー”とは、何の関係もない。
ピーコートは、スタイリッシュであるばかりか、実に機能的な服だ。着丈は足が動かしやすいように、短くカットされている。多くの動きを必要とされる甲板の上で、このコートはとても実用的であった。