THE CUTTING EDGE OF COOL
鴨志田康人のコーディネイト講座
February 2022
ウェルドレッサーとして世界にその名を知られる鴨志田康人氏は、THE RAKEが、そして世界中のクラシックファンがエレガンスの手本としているカリスマだ。
氏のスタイルに欠かせない定番品やお気に入り、装いをたっぷりとご披露いただいた。
photography TATSUYA OZAWA
text YUKO FUJITA
鴨志田康人/Yasuto Kamoshita
1957年生まれ。ビームスを経て1989年、ユナイテッドアローズの設立に参画。クリエイティブ ディレクターを経て2018年よりクリエイティブアドバイザーに就任。2008年より自身のブランド「カモシタ」をスタート。2019年よりポール・スチュアートの日本のディレクターも務めている。
リヴェラーノ&リヴェラーノのツイードジャケット、カモシタのタブカラーシャツ、シャルベのニットタイ、ウォレス&バーンズのオフホワイトの5ポケットピケパンツ、そしてベルジャンシューズ。鴨志田氏がいつも愛用している、タブカラーシャツ、ホワイトジーンズ、ベルジャンシューズの三つのアイテムは、鴨志田氏が考えるエレガントなスタイルを築くうえでとても重要な役割を担っている。重厚なツイード生地で仕立てられたジャケットが、なぜこれほど自然に、軽やかに見えるのか。そこに鴨志田流エレガンスの秘密がある。答えは後ほど。並べられたベルジャンシューズは、本家NYのベルジャンシューズを筆頭に、ボードイン&ランジ、マッシモ アルバの3ブランド。すべてproperty of Yasuto Kamoshita
鴨志田スタイルに欠かせない
定番アイテム3点!
鴨志田氏の装いにかなり高い頻度で登場するアイテムが、タブカラーシャツ、ホワイトジーンズ、ベルジャンシューズの3点だ。それらを愛する理由とは?
鴨志田氏のスタイルの根幹は、アイビーを好んだ学生時代の装いにある。ブルージーンズはあまり穿かずホワイトジーンズ主義だった氏は、オフホワイトのピケやコーデュロイ、裾を細く直してリーのウエスターナーを穿いていたという。同様に、タブカラーシャツも学生時代から愛用しているアイテムである。
「アイビー青年だった自分はタブカラーシャツは無造作にノータイで着てもカッコいいと思っていたし、その考えは今も変わりません。タイを締めたときも首元がキュッと締まるあの感じが好きなんです。一方、ベルジャンシューズを履きだしたのはここ7~8年です。軽やかな足元が好きなので、あの小洒落た佇まいがとても新鮮でね。自分のモットーとして、重厚なものは軽く、軽いものは深く、深いものは面白く着たい。これらのアイテムはそういうヌケ感を生んでくれるんですよね。ツイードジャケットにホワイトジーンズを合わせたら素敵じゃないですか」
鴨志田的 定番アイテム1:
ダブカラーシャツ
タブカラーシャツは、鴨志田スタイルを象徴するアイテムだ。左:シャツ Paul Stuart タイ Nicky/United Arrows Roppongi Hills 中:ブルックス ブラザーズのシャンブレーシャツとターンブル&アッサーのタイ 右:ヒルディッチ&キーのシャツは、ユナイテッドアローズの原宿店がオープンした90年に、ロンドンでバイイングしたもの。タイ Fratelli Luigi/United Arrows Roppongi Hills
鴨志田的 定番アイテム2&3:
ホワイトジーンズとベルジャンシューズ
グレイッシュなパステルトーンで組み合わせた、いかにも鴨志田氏らしいコーディネイト。「NYの店で買った緑のベルジャンシューズはまだ2回しか履いていないんです。この色だけはなかなか手ごわくて、カエルみたいになってしまうんですよね(笑)。タブカラーシャツはこのようにノータイで合わせたときでも、襟が無造作に出ている感じがとても好きなんです」。オフホワイトの5ポケットピケパンツはリーバイス ビンテージ クロージングの519。同モデルのようなスリムテーパードのシルエットが鴨志田氏の好みだ。シルクスカーフはヴィンテージ。ニット William Lockie for United Arrows シャツ Charvet/both by United Arrows Roppongi Hills
コーディネイトの仕上げ役
巻き物を楽しむのが鴨志田流
鴨志田氏のスタイリングでいつもとても目を引くのが、巻き物使いの上手さだ。
コツはあくまでさりげなく、格調高く見せないのが鴨志田流だという。
リヴェラーノ&リヴェラーノのスーツにシャルベのタブカラーシャツ、ルイジ ボレッリのタイ、そしてジョンストンズ オブ エルガンのシェファードチェックのウールカシミアマフラー。巻き物ひとつでスタイリングがグッと引き立ってくる。
アクセサリーといえば左手薬指のリングと腕時計をするくらいで、宝飾系のアクセサリーはあまり身に着けないシンプルな装いを好む鴨志田氏だが、スカーフを中心とした巻き物系は鴨志田氏の装いにおいて欠かせない存在だ。特にコンパクトなスカーフをサラリと巻いて首元に覗かせているイメージがあり、いつも自然体で我々の目にはそれがとても素敵に映るのだ。
「マフラーもスカーフもポケットチーフもたくさん所有しています。アクセサリーでコーディネイションの仕上げを決めるのはとても楽しいですし、着こなしにアクセントをつけるという意味で巻き物は不可欠ですから、気に入ったものを見つけたら、何に合わせようとか考えず、この色、この柄がいいなという感じで気軽に買っています。合わせを後から考えるのも楽しいですしね」
パリを訪れた際に、街中のカフェで冬場に道行く人を眺めていると、人と同じ格好をしないのをモットーとしているフランス人、特に女性はそれぞれが自分流の巻き方で上手に楽しんでいて、とても似合っている姿に見惚れたという。鴨志田氏が巻き物を楽しむ際、そういったところから影響を受けている部分は多分にあるとも。
「自分がマフラーやスカーフを楽しむ際にこだわるようになったのは、キマりすぎないようにすることです。無造作に巻いているように見えるくらいがちょうどいい。自然に溶け込んでいる感じが理想です」
鴨志田流 巻き方講座 1
柄の色を拾ってコートの上からマフラー
「バルマカーンコートにマフラーをする際は、上までボタンを留め、襟を立てて巻くのも好きですね。チェックの色を拾ってパープルを合わせましたが、センターからずらしたり、左右の長さに変化をつけたりして、きっちりまとめすぎないのがコツです」。カシミアマフラーはロロ・ピアーナ。バルマカーンコート Camoshita/United Arrows Roppongi Hills
鴨志田流 巻き方講座 2
スカーフの固結びは
結び目を左右にずらして
ミラノのジャンニ・カンパーニャで2002年に仕立てたスーツに、カモシタのロールネックニット、シャルベのスカーフを固結び。ロールネックニットとスカーフの合わせが首元にとてもいい感じのアクセントを生んでいる。鴨志田氏は私物のスーツが素敵なビスポークばかりで、生地選びといい、それを見られるのが非常に楽しい。すべて property of Yasuto Kamoshita
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「基本の結び方であっても少し崩してあげるだけで雰囲気がガラッと変わります。これは左右をクロスさせてひと結びし、もういちど結ぶ基本の固結びですが、結び目を正面にせずに左右どちらかにずらすと、無造作感が生まれます。差し色使いを楽しむのもいいですが、最初は色をちらかさずにトーンを揃えてあげると合わせやすいです。ロールネックニットとスカーフの相性もとても良いと思います」
鴨志田流 巻き方講座 3
アスコットタイはタイ結びで
ノットの上にボリュームを出す
ジョン スメドレーのヴィンテージのボーダーニットポロにラルフローレンのアスコットタイ。「ジャケットにポロシャツだけだとなんとなく寂しいときに、アスコットタイをネクタイ巻きでプラスすると、素敵なアクセントが生まれます。上にコーデュロイやツイードのジャケットを羽織ってもいいですよね」。ともに property of Yasauto Kamoshita
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「アスコットタイをそのままアスコットタイの結び方で結ぶと仰々しくなってしまうのであまり好きではないのですが、プリーツが入っていて首元にすっきり収まるので、巻き方をアレンジして愛用しています。よくするのはネクタイのプレーンノットと同じ結び方です。ポイントはノットを作ったあとにノットに通した側の生地を少し戻してノットの上にボリュームを作ってあげること。それときれいに結びすぎないことです」
鴨志田流 巻き方講座 4
大判スカーフは程よい色気を
出すつもりでサラリと巻く
「コートの前を開けてニットを合わせる際は、大判のスカーフを合わせても素敵です。その際タブカラーシャツを中に着ると、ノータイでもタブがアクセントになってくれます」。シルクスカーフはシャルベ、タブカラーシャツはブルックス ブラザーズ。セーター Sovereign/United Arrows Roppongi Hills
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「普段されない方には抵抗があるスカーフですが、スタイリングがあっさりしすぎかなというときにポイントを作れ、慣れると便利でとても楽しめるアイテムなんです。ドレスアップするわけではなくて、フランス的ってそういうことだと思うんですけど、程よい色気を出すつもりでサラリと巻けばいい。大判の正方形は対角線上の をそれぞれ畳み、片手で持てるくらいの幅にしたら、クルリと1回クロスさせて巻くだけです」