THE BESPOKE REPORT “SARTORIA CORCOS”

実は優しいフィレンツェの服:サルトリア コルコス

September 2021

text kentaro matsuo
photography tatsuya ozawa

完成したジャケット。ラペルから裾にかけて、美しい乙の字形のカーブを描く。広めのラペル、長めの丈など、あくまでもクラシックだ。

 完成した服は、美しくラウンドしたフロントライン、ダーツのない前身頃、広めのラペル(チーフは半分程度しか見えない)など、フィレンツェならではのディテールを持つが、最大の特徴はソフトで着やすいことだろう。

 副資材は極力減らしてある。肩パッドはほぼないし、芯地と芯地が段差となって重なっているところでは、芯地を漉いて軽さを追求しているという。

 しかしいわゆるアンコンとはちょっと違う。例えば、私は極端ないかり肩・前肩なのだが、彼の服を着ると、随分とまともに見える。ネックポイントのバランスで、なるべくナチュラル・ショルダーに見えるように作っているのだという。

 今回できあがったグレイスーツでは、そんな特徴がさらに顕著となった。とにかく軽く着やすいのだ。肩回りの柔らかさは、これがジャケットであることを忘れてしまいそうだ。「それでいて、きちんと見えるでしょう?」と宮平氏。ここ2、3年で10kg近く痩せた私に合わせて( 健康的なダイエットですよ)、肩幅をやや広めにとり、胸回りにもある程度のボリューム感が出るよう工夫されている。コロナ禍が終わったら、フォーマルなパーティなどでも活躍しそうだ。

 見た目と着心地のギャップが、コルコス最大の魅力である。テーラー本人はややいかついが、彼の作る服は優しいのである。

サイズ記入シートと、オリジナルのスワッチ類。グレイ、ネイビー、煉瓦色など、フィレンツェならではのカラーパレットが特徴だ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 41掲載記事
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