THE ASCENT OF A MAN

エベレスト登頂に最適な時計

August 2020

コーリー・リチャーズ氏のエベレスト遠征中に訪れた束の間の穏やかな時間。

 

 

 ハイブランドのパーソナリティという存在で、リチャーズ氏ほど時計と深い関わりを持つ人物は他に思いつかない。それは、彼と過酷な環境との密接な関係を反映しているからだ。リチャーズ氏は語る。

 

「ハイレベルな登山の目標を達成しようとするとき、時間は最も重要な要素となります。時間と山登りの関係のひとつとして、山にはそれぞれ独自のリズムがあることが知られています。身の安全を守りたければ、それを頭に入れておく必要があるのです」

 

 彼は続けてこう加える。

 

「さらに重要なのが、こういう挑戦に身を投じたり人間の限界に挑んだりする場合、身体が正常に機能するのは一定の時間に限られているということ。その後は最終的に動けなくなってしまう。そういうものなのです。高地にいる時間が長ければ長いほど、その危険度は増します。安全のため、さらには登頂成功のためにも、自分の時間をしっかりと管理することが大切です。そして落石の後にいつ雪崩が起こるかなどの山のリズムを理解することが重要になります」

 

 

次の遠征に向け調査を行うリチャーズ氏。

 

 

 オーヴァーシーズ・デュアルタイム・プロトタイプの仕様に関して、リチャーズ氏は主に3つの点を求めていた。それは、最大の効率性、実用性、快適性だと彼は言う。

 

「優れたデザインの鍵となるのは、シンプルさと時計自体の有用性。今回の場合はつまり、気温や高度の変化といった過酷な冒険活動の状況下に耐える時計を実現する、ということです。遠征中は時計にさまざまなトラブルが起こる可能性があるので、非常に高い耐久性が必要なのです」

 

 一方、ふたつ目のタイムゾーンとなるアメリカ時間を表示することについては、より深い実存的な意味がある。

 

「オーヴァーシーズのデュアルタイムは、私にとって特別な存在です。私の人生を構成する、その他すべての要素を思い出させてくれるから。山で危険に身を晒すときや、最悪の結果として死が待ち受けるようなとき、アメリカ時間がそれらの要素を思い出させてくれるのです。デュアルタイムの機能があることで、このような冒険には挑戦する価値はあっても、それで死んでしまうほどの価値はない、ということに気づかせてくれます。デュアルタイムは、ミニマルかつ有意義なものという条件に対するシンプルで美しい解決策といえると思います」

 

 

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