Takeshi Sekiguchi Interview Vol.1

スーツに最も大切なのは
“フィッティング”

May 2018

オンワードパーソナルスタイル代表取締役社長

関口 猛氏 インタビュー

 

text yasuyuki ikeda(zeroyon) photography ikuo kubota(OWL)

 

 

Takeshi Sekiguchi  関口

1995 年、オンワード樫山入社。インポートブランドのライセンスビジネスに長く携わる。2012年より「五大陸」ブランドに携わり、2017年、オンワードパーソナルスタイル代表取締役に就任。同年10月、採寸から納期まで最短一週間というこれまでにないオーダースーツシステム、カシヤマ ザ・スマートテーラーをローンチさせた。

 

 

 

 デザイナーズブランドの既製スーツも、ヨーロッパの伝統技術を受け継ぐテーラーの仕立て服も、オンワードパーソナルスタイル代表取締役・関口猛氏には並列な存在だ。それぞれの良さを知り、ドレスもカジュアルも着倒し、熟知する氏にとって、スーツとはどのような服なのか話を伺う機会を得た。

 

 

  Q.これまで、どのようなスーツを着てこられたのでしょうか?

 

「海外のテーラーやデザイナーズブランドのスーツも着てきました。デザイナーズブランドの既製スーツにはスタイルという個性があり、テーラーの仕立て服には伝統に培われた良さがあります。とくにイタリアブランドの服は身体を包み込むように作られていますし、イギリスのテーラーの服は気合を入れて着なければならないようなものがあるなど個性豊か。日本人には、そのハイブリッドなところがちょうどいいと感じていました。

 毎年、春と秋に既製品、オーダー、合わせて10着ほど新しいスーツを揃えます。例えば今日のスーツは「KASHIYAMA Established 1927」。昨春、広尾店で仕立てたものです。採寸を担当してくれたフィッターは、長く私と仕事をしてきた技術者で、趣味や好み、性格やライフスタイルも知る間柄。スーツも私の好みと彼の意見を参考に作ったものです。仕上がりにはとても満足していて、ここ最近のスーツのなかでは特に気に入っている一着です」

 

 

デザイナーズの既製スーツも、テーラーのオーダースーツも、さまざまなスーツを着てきた関口氏は「それぞれに良さがある」と認めた上で、「海外で見ず知らずの人から褒められたスーツの多くは、オーダースーツであった」と話す。そんな氏の思いから昨秋誕生したオーダースーツサービスが「カシヤマ ザ・スマート テーラー」だ。

 

 

 

  Q.ではご自身がスーツを選ぶ際、一番大切にしていることは何でしょう?

 

「月並みかもしれませんが、スーツのプライオリティの筆頭はフィッティングです。既製スーツもサイズ感を気にしますし、オーダースーツなら流行やトレンドにあわせて微調整します。素材が良質なものであることは重要ですが、確かなブランドが取り扱うものなら信頼性もありますし、生地や色柄は意外とこれまで敬遠してきたものが似合うこともあるので、人の意見を取り入れることも大切だと思っています。

 シルエットやディテールデザインは流行やトレンドによって移り変わりますが、それでもフィット感に不満のあるスーツは、着る機会が少なくなるものです。厳選したつもりでも、すべてのスーツがぴったりフィットするわけではありません。細部まで手を入れたはずなのに、なんとなくしっくりこないこともあれば、既製品がやけに馴染むこともあるので、スーツは奥深いです。

 もちろんオーダースーツなら経験のあるフィッターと念入りに作り込むことで精度も上がります。できるだけ納得の行く仕上がりを得るためには、フィッターの経験と実力は不可欠です。弊社のフィッターは80%が勤続20年以上、95%が10年以上の経歴をもっていますので、お客様にご満足行く一着を仕立てるお手伝いができるのです。確かなフィッティングを得られたスーツには、自分だけの一着という思い入れが宿り、袖を通すと気分が違うもの。それは自分自身の背筋を伸ばし、胸を張る一助となります。あらためてスーツを着るという意味を再確認できるはずです」

 

 

スーツは「自分の身体にフィットするサイズ感」が最重要と関口氏。色柄やデザインなどは流行によって変化し、自分で思っても見なかった色柄が似合うこともあるため、 ショップスタッフのアドバイスを取り入れるなど柔軟に対応するのもいい。

 

 

 

  Q.自分だけの一着を手に入れるために、近道はありますか?

 

「近道は有って無いようなものだと思います。先にも申し上げましたが、私自身、年に10着ほど仕立てて、本当に気に入るスーツは1、2着です。そんな貴重なスーツだけがクロゼットに残っていきます。年に数回は海外出張に出ますが、仕事関係者だけでなく、ホテルやレストランでも褒められるスーツは、そんな自分だけのお気に入りの一着であることが多いように感じます。

 何着か作っていくうちに、本当に気に入ったスーツに出会う機会も増えていくのだと思います。高額なビスポークスーツを一着仕立ててもお気に入りになるとは限りません。同じテーラーで何着か作ってみて、ようやく出会えるものこそが本当の意味でのお気に入りの一着になることが多いですね。

 ならば同じコストを掛けるなら、高級ブランドの一着より、手頃なテーラーで何着かオーダーしてみるほうが、お気に入りの一着に出会える可能性は上がるのでは。昨秋ローンチしたカシヤマ ザ・スマートテーラーが大変御好評いただいている理由のひとつは、そんな自分だけの一着に出会える機会を増やせる場所だからだと思っています」

 

 

カシヤマ ザ・スマートテーラーは、これまでにない画期的なシステムを導入したオーダースーツブランド。全国13店舗(6月1日よりさらに6ショールームがオープン予定)で、「自分だけの一着」に出会える機会を提供する。

 

 

→Vol.2 「カシヤマ ザ・スマートテーラー」が、自分だけの一着のために目指したこと。