SIXTY YEARS OF BOND'S BEST WATCHES

60年にわたるボンドのベスト・ウォッチ

October 2022

ジェームズ・ボンドは高級時計を愛している。

オメガを身に着けたこの英国人スパイの広告を、何度も目にしたことがあるだろう。ボンドの腕にあるハンサムな時計は、いつも重要な小道具なのだ。

 

 

 

by CHRIS COTONOU

 

 

 

ジェームズ・ボンドを演じるロジャー・ムーア『007/死ぬのは奴らだ』(1973年)。

 

 

 

 すべての時計ファンと同様、007はブラックタイのイベントから悪党との戦いまで、その場に応じた時計をチョイスしている。ここでは、過去60年間に彼が身につけた時計の中から、最も象徴的な8本をご紹介する。

 

 

 

 

ロレックス サブマリーナー Ref. 6538

 

 

 6538が「ボンド・サブマリーナー」と呼ばれるのには理由がある。コネリーが出演した6作品のうち最初の4作品に登場し、コネリー自身の時計であったともいわれているのだ。サブマリーナーは海軍の将校に選ばれた時計であることを考えると、彼がたまたま持っていたのは嬉しい偶然だったといえるだろう。フレミングの原作のなかでのボンドも、ロレックス(彼の場合はオイスター パーペチュアル)を着用していた。

 

 劇中では、サブマリーナーの多用途性が見事に表現されている。『007/ゴールドフィンガー』(1964年)では、スキューバダイビングで密かにパーティ潜入するシーンで使用されている。彼はその後、白いタキシードに着替えるのだ。また、『007 /ロシアより愛をこめて』(1963年)ではギンガムチェックのオープンカラーシャツのように、カジュアルなスタイルにも合わせられている。6538は、諜報員の多忙な生活のあらゆる場面にマッチする、典型的なボンド・ウォッチなのだ。

 

 

 

 

 

オメガ シーマスター ダイバー 300M

 

 

 新しい世代のファンにとっては、ボンドといえばシーマスターというイメージがある。オメガとボンドの関係は、ピアース・ブロスナンの『007/ゴールデンアイ』(1995年)に始まり、最も長く続いているパートナーシップのひとつだ(不思議なことに、最初のモデルはクォーツだったが、『トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)より機械式となった)。

 

 この時計は、水深に耐えられるだけではない。劇中では、ボンドがこの時計を使ってガラス瓶の中の手榴弾の留め金を外し、メディア王エリオット・カーヴァーによる窮地を脱している。

 

 

 

 

 

ロレックス クロノグラフ Ref. 6238

 

 

 ジョージ・レーゼンビーが一度だけボンドを務めた『女王陛下の007』(1969年)は徐々にその価値を認められつつあるが、特に彼がデイトナ登場前のクロノグラフを着用したことは、今となっては特筆に値する。おそらく007シリーズに出てきた時計の中で、最も人気があるモデルのひとつだろう。

 

 ボンドがヒラリー・ブレイ卿として潜入捜査をしているときに着用していたこのクロノグラフは、ブロフェルドの子分たちからスキーで逃げるときや、悪党の本拠地に連行されるシーンで見ることができる。

 

 

 

 

 

ハミルトン パルサー P2(ハミルトンPSR)

 

 

 これはシリーズの中でも一際変わったチョイスだ。『007/死ぬのは奴らだ』(1973年)で、ボンドはパルサー P2という宇宙時代のテクノロジーを表現したデジタル時計を身に着けている。

 

 この時計は、イタリアのエージェント、カルーソとのロマンチックな逃避行のなかで、ベッドに横たわりながら時間を確認する場面で初めて登場し、忘れがたいものとなった。当時、この時計は最も成功した量産型デジタル時計で、エルトン・ジョンやキース・リチャーズも愛用していた。

 

 

 

 

 

セイコー G757 SPORTS 100

 

 

『007/オクトパシー』が公開された1983年当時は、自動巻きの時計は過去のものであると広く考えられていた。

 

 セイコーのG757は、追跡装置(ボンドがファベルジェの卵を追跡するシーンが印象的)をはじめ、目的に応じた一連のスパイツールを備え、ムーア演じるボンドにぴったりの外観だった。サブマリーナーほどエレガントではないかもしれないが、G757は確かに諜報員にとって役立つように見えた。

 

 

 

 

ブライトリング トップタイム

 

 

 ジェームズ・ボンドがカリブ海を旅するときに身に着けるのは何だろうか? 答えはもちろん、ブライトリングだ。

 

 1965年の『007/サンダーボール作戦』では、007はQから特別なガイガーカウンターを搭載したこの時計を手渡される。映画で使われたものは、より大きく広がったベゼルを持つケースに改造されている。

 

 この時計は、アフターマーケットにはあまり出回っていない。

 

 

 

 

セイコー 0674 5009 LC

 

 

 ムーア時代の時計は、今ではギミックと化しているものもあるが、実にユニークだ。中でも『007/私を愛したスパイ』(1977年)に登場するセイコー0674のプリンター機能は、忘れられないものだ。

 

 この映画では、ボンドはMI6本部からティッカーテープのように印刷されたプライベートなメモを受け取っている。当時、セイコーはデジタル時計の革命児と言われていたが、彼らでさえ、Qによるスパイツールには感心したことだろう。

 

 

 

 

オメガ シーマスター ダイバー 300M 007 エディション

 

 

 グレード2のチタンを使用したボディとメッシュ・ストラップ、アルミ製のトロピカルブラウンのダイヤルとベゼルが特徴的な、まったく新しいシーマスターだ。これまでのスチール製モデルよりも軽量で、ムーブメントにはコーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー8806を搭載している。

 

 このモデルは、ダニエル・クレイグがデザインに意見を述べたといわれており、これまでのところではジェームズ・ボンド・シーマスターの決定版といえるだろう。