Silvia Damiani Interview
シルヴィア・ダミアーニ氏インタビュー

ジュエリーに囲まれて
育ったプリンセス

Friday, May 24th, 2019

シルヴィア・ダミアーニ

1924年創立のイタリアの老舗ハイジュエリーブランド、ダミアーニ・グループ副社長。ダミアーニのコミュニケーションを総括する他、傘下のヴェネツィアングラスブランド、ヴェニーニのアートディレクションも担当する。

 

 

 今年創立95周年を迎えたイタリアのハイジュエリーブランド、ダミアーニは“唯一無二”の存在である。百年近い歴史を持ち、なおかつ今でも創立者一族によって経営されているジュエラーは、イタリア広しといえども、ダミアーニしかないのだ。

 

 多くのブランドが、巨大コングロマリットに吸収合併され、マーケティング偏重主義となってしまった今、創立以来の伝統を守り続けるダミアーニの存在は貴重だ。今回はそのオーナー一族、ダミアーニ三兄弟の紅一点、シルヴィア・ダミアーニ氏にインタビューする機会を得た。

 

「私は物心ついたときから、ジュエリーに囲まれて育ちました。子供の頃は、そんなに高いものだとは知りませんでしたが、皆が大切に扱っているのを見て、決して傷つけてはいけないものだと思っていました。子供の頃から、ジュエリーの持つ美しさに魅了されてきました。たぶんジュエリーを美しいと感じるのは、人間の本能なのだと思います。子供でも、その美しさはわかるのです。だから古代から現代に至るまで、人々はジュエリーを身につけてきたのでしょう・・」

 

 生まれながらにして、ジュエリー界のプリンセスだったシルヴィア氏は、その後ファミリーの一員として、ブランドの発展のために力を尽くしていくことになる。

 

「弟で長男のグィドが会長、次男のジョルジョと私がグループの副社長を務めています。私たち三兄弟はとても仲がいい。これがダミアーニの持つ一番の“財産”だと思っています。ファミリー企業のいいところは、自然と同じ目標を共有できるところですね。われわれは百年間続いてきた“美”に対するDNAを受け継いでいます。そこが他のブランドと決定的に違うところでしょう」

 

ダミアーニ三兄弟。左から、グィド、シルヴィア、ジョルジョの三氏。

 

 

 ダミアーニは1924年、北イタリア、ピエモンテ州に位置するヴァレンツァにて創立された。ヴァレンツァは古くから金細工職人の集まる街として知られ、初代のエンリコ・グラッシ・ダミアーニは腕のいい職人であり、ジュエラーで、その作品は当時の王侯貴族に愛されたという。

 

「ピエモンテ州の人々は、とても働き者なのです。そして忍耐強く頑固で、自らの仕事を突き詰めて考えます。ピエモンテのワインは(バローロ、バルバレスコなど)その高い品質で世界中に知られていますよね。ジュエリーも同じです。ピエモンテ人は品質に対して妥協することを絶対にしないのです。しかし、ピエモンテの人は内気で人付き合いが苦手です。その点、ミラノを主都とするロンバルディア州の人々は明るく開放的です。私の父はピエモンテ出身、母はロンバルディア出身でした。きっと父は、母の陽気さに惹かれたのだと思います。私も母の血を受け継いでいますね」

 

ソフィア・ローレン、ブラッド・ピットをはじめ、ダミアーニは古くから数多くのセレブに愛された。

 

 

 ダミアーニは、多くのセレブリティに愛されていることでも知られている。

 

 ウィレム・デフォー、ラッセル・クロウ、シャロン・ストーン、グウィネス・パルトロウなど、そのリストは枚挙に暇がない。その要となっているのが、社交的なシルヴィア氏である。

 

「ソフィア・ローレンは、私の母親と同じ歳なのです。そして本当の母親のような存在ですね。彼女の子どもたち、そして孫たちもよく知っています。三世代にわたる、家族ぐるみのお付き合いです。ブラッド・ピットとは、“ディ・サイド”というコラボコレクションを発表しました。初めて発表したのが2000年ですから、来年で20周年になります。それから日本の中田英寿氏ともコラボをリリースしました。“ナカータ”はイタリアでも人気があります。サッカー選手としてだけでなく、“コスモポリタン”として愛されているのです。彼はとてもセンスがいいし、装いもエレガント。収益の一部は、東日本大震災復興の支援金として寄付をしました」

 

 

中田英寿氏とコラボした“メトロポリタン”のシリーズより。ネックレス¥162,000 、ブレスレット¥136,000 both by Damiani/Damiani Ginza Tower Tel.03-5537-3336

 

 

 ダミアーニは男性のファンが多いことでも知られている。セレブリティのように上手にアクセサリーを着けるためには、どうしたらいいのか伺ってみると・・

 

「ダミアーニが男性に愛される理由は、上品なエレガンスを感じられるからだと思います。男性は女性に比べて身に着けられるアクセサリーの種類が少ない。ですから、より厳選されたものをチョイスすべきです。オニキスや瑪瑙(めのう)、ラピスラズリを使ったブレスレットや、クロスネックレスなどは特におすすめです。似合うものを見つけるコツは、ナチュラルな気持ちで身に着けてみること。そしてもし“自分らしくないなぁ”と感じたら、それは買うべきものではありません」

 

 

ダミアーニのラインナップより、男性に人気のコレクションたち。メトロポリタンコレクションのカフリンクス¥192,000、ディ・サイドブレスレット¥295,000  both by Damiani/Damiani Ginza Tower Tel.03-5537-3336

 

 

 さて、ダミアーニ・グループには誇るべきブランドがもうひとつある。ヴェネツィアングラスの老舗“ヴェニーニ”だ。1921年にパオロ・ヴェニーニによって創立された、イタリアを代表するガラス工房である。その作品はニューヨークのMoMAやロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館にも所蔵されている。2016年にダミアーニ傘下となり、2017年にはGINZA SIX内に日本初となるショップがオープンした。

 

GINZA SIX内にオープンした、ヴェニーニのショップ。店内はまるで美術館のようだ。

 

 

「ヴェニーニこそ、ヴェネツィアングラスを進化させてきたブランドです。昔のヴェネツィアングラスは、ゴテゴテと飾り立てた、職人の技巧を見せびらかすような作品ばかりでした。ヴェニーニはそこに“イノベーション”を持ち込んだのです。多くの有名デザイナーやアーティストとコラボして、シンプルで美しいフォルムの作品を、次々と生み出して来ました」

 

 関わってきたデザイナーには、カルロ・スカルパ、タピオ・ヴィルカラ、エットーレ・ソットサス、ピーター・マリノなど、世界的巨匠の名前がずらりと並んでいる。日本の安藤忠雄がデザインした作品も擁する。

 

巨匠エットーレ・ソットサスがデザインしたヴェニーニの代表作のひとつ“イエメン”。¥250,000 VeniniVenini Ginza Six Tel.03-3569-0027

 

 

「ヴェニーニは技術面でも業界をリードしています。ガラスの色の元となるスティックは“ケイン”と呼ばれますが、これをすべて自前で誂えているのはヴェニーニだけです。ヴェニーニほどたくさんの色を使える工房はありません。伝統の技術を使って作られる、新しいデザインのヴェネツィアングラス、それがヴェニーニなのです」

 

ヴェネツィア、ムラーノ島に位置するヴェニーニの工房では、熟練の職人たちが腕を振るう。

 

 

 そんなヴェニーニを象徴するようなエキシビションが、去る5月に東京・九段南のイタリア文化会館にて行われた“ミケーラ・カッタイ展”だ。ヴェネツィアングラスの伝統的な技法に依拠しつつ、新しい作品を送り出しているアーティスト、ミケーラ・カッタイとヴェニーニが共同製作した作品数十点が展示された。

 

「ミケーラとは2年ほど前に知り合いました。私が日本文化が大好きということを知っていて、“日本の茶の湯をテーマにした作品を作りたい”と持ちかけてきたのです。出来上がった作品————水差し、一輪挿し、棗(なつめ)などは、自然への愛が溢れたものでした。フォルムは川の流れの中で削られた石をモチーフにしています。アシンメトリーな佇まいは日本庭園を思わせるものです。またサスティナビリティにも配慮し、通常は捨ててしまう炉の底に溜まったガラスの塊を、あえて表面に貼り付けてあるものもあります。それはまるで宝石のような輝きを放っています」

 

ミケーラ・カッタイがデザインした作品の一部。炉の底に残ったガラスを表面に貼り付けてある。

 

 

 ビジネスとアートに精通したシルヴィア氏だが、最後にプライベート・ライフについて尋ねると、パートナーとの生活を語り、相好を崩した。

 

「もう十年も一緒に住んでいるパートナーがいるのです。いまだ結婚はしていないのですが、いつも彼のことを語るときは“ハズバンド”と呼んでいます。ボーイフレンドと呼ぶには、お互い年を取り過ぎていますからね(笑)。イタリアでは、こういった関係を“フィダンツァート”と呼ぶのです。英語でいうと“フィアンセ”ですが、ちょっと意味が違います。フィアンセとなると、“ではいつ結婚するのですか?”という話になるでしょう? でもフィダンツァートだと、“ああ、そうですか”で終わりです(笑)」

 

 現在は改築中の家のインテリアに夢中だそう。

 

「インテリアは大好きで、いつも考えています。ヴェニーニの作品を、家の中だけではなく、家の外にも置いたら、面白いことになるのではないかと思って。可能性が広がりますよね。プールサイドの壁一面をヴェニーニで何か作りたいと思っています。ヴェネツィアングラスの壁なんて、素敵ではないですか?(笑)」

 

 生まれたときから美しいものに囲まれて育ち、ダミアーニとヴェニーニという至高の美を追求し続けるファミリーの一員として活躍するシルヴィア氏の一番の魅力は、愛らしい笑顔にこそあった。

 

 

お問い合わせ先:

ダミアーニ 銀座タワーTel.03-5537-3336

www.damiani.com/jp/

ヴェニーニ GINZA SIX Tel.03-3569-0027

http://venini.com/en/