Sharockan: The Best Beef and Nagano Ingredients

白馬で国際級の料理に舌鼓
「灼麓館ステーキダイニング」

January 2023

text KENTARO MATSUO

 

 

 

 

 北アルプスの名峰連なる長野県・白馬村に2022年11月、注目の高級レストランがオープンした。国際級のリゾートホテル「カノリーリゾーツ(Kanolly Resorts)」に併設された「灼麓館(シャロッカン/Sharockan)ステーキダイニング」である。白馬三山(白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳)を模した3つの三角屋根が目印となっている。「地元長野県産の食材をふんだんに使用し、その素材を生かした肉を引き立てる料理」をコンセプトとしている。

 

(1泊60万円という価格が話題のカノリーリゾーツについては、こちらの記事を参照されたし)

 

 手掛けたのは、極上の和牛を扱うことで知られるヤザワミートである。「焼肉 ジャンボ 白金」、「ミート矢澤」、「今福」、「BLACOWS(ブラッカウズ)」などの店舗を運営しているので、ご存じの方も多いだろう。シンガポール、ミラノ、ビバリーヒルズなどにも焼肉レストランを構え、和牛の美味しさを国内外に紹介している。

 

 

 

 

 ヤザワミートでは、神戸ビーフや松阪牛など、ブランド牛に頼ることをよしとしない。

 

「産地とブランドにこだわらないのがこだわりなのです」とは、総支配人・岩切博文氏の弁だ。

 

「それぞれの料理に合わせて、最高のものを部位ごとに仕入れます。目利きで買ったら、たまたま神戸ビーフだったということはあります。全国の生産農家様と深く繋がりを持ち、安心安全な餌を食べて育った牛のみを扱っています。私たちが目利きした“ヤザワクオリティ”がブランドなのです」と岩切氏は胸を張る。

 

 コロナ禍がピークで生産農家が困っているときには、港区白金の自社工場前に簡易テントを張り、精肉や加工品の販売も行ったそうだ。外食を制限された消費者と出荷できない農家の橋渡しをしたのである。そんな食肉のエキスパートが手掛ける灼麓館には、扱う和牛のなかでも、最上の一塊が送られてくる。

 

 

 

 

 しかしながら、ここ灼麓館は、焼肉店やステーキハウスではない。ミシュランの星も狙えるような高級レストランなのである。インテリアはウッドを基調としたシックなもので、壁には長野県特産の高級建材・鉄平石(てっぺいせき)があしらわれている。天井からはイタリアのデザイナー、ディエゴ・マーディガン氏による照明が吊るされ、温かい光を放っている。テーブルにはホワイトのクロスがかけられ、チェアにはしっとりとした質感の高級レザーが張られている。

 

 

 

 

 自慢のワインセラーには、常時500本を超えるワインが置かれている。欧米の銘醸ワインはもちろん、地元長野県産のワインや日本酒も取り揃えられている。

 

 

 

 

 セミオープン式の厨房で目立つのは、特注の肉焼き台である。この店のためだけに作られた1点もので、薪で火を起こし、ハンドルでグリルの高さを調整できるようになっている。

 

 

 

 

 厨房を任されているのは、ヘッドシェフの長屋英章氏である。1977年生まれの長屋氏は、25歳で単身フランスに渡り三ツ星レストラン等で修行。帰国後はヘッドシェフとして「レフェルヴェソンス」を立ち上げミシュランの星を獲得。その後、「NARISAWA」でアジアのベストレストラン50にてNO.1を経験した。

 

 2017年に香港へ移住し、レストラン・プロデューサーとして活躍。18年には「JAPANESE CUISINE TOP 5 CHEF IN HONGKONG」受賞。20年には「香港で活躍する8人の日本人シェフ」に選出された。

 

「香港にいた頃は、まさに富裕層相手のビジネスをしていました。食べに来るお客さんは、皆自家用ジェットに乗っているような人たちでした。彼らはフランス料理が食べたければ、フランスへ飛んで行きます。今回白馬の1泊60万円のホテルに併設されるレストランで、何をお出しすればいいのか深く考えました。そして地元ならではの食材を生かした、国籍の枠を超えた料理という結論に至ったのです。『HAKUBA』や『NISEKO』は英語でも通じる地名です。何十カ国から人が集まります。白馬には東京に匹敵する豊かな食文化があるのです。そしてジェットセッターが食べたがるのは、キャビアやトリュフではなく、そこでしか採れない地元の野菜なのです。例えば、芦島蕪(長野県木曽郡上松町で生産される幻の赤カブ)を低い一定の温度で4時間加熱したもの。こうすると煮崩れせず、素材本来の旨味・甘さが出てくるのです」

 

 

〜白馬三山の朝霧の情景〜

「白馬米ミルキークィーン・東御の信州胡桃・白馬農場雪下人参・ボタンエビ」

ライスクラッカーに載った地元ならではの食材を、サクサクとした食感とともに楽しむ一皿。

 

〜白馬の畑から〜

「丸ごと4時間火入れした“芦島蕪”・白馬伝統のみそ玉仕込み味噌・バーニャカウダ」

低温で長時間加熱したカブは、野菜本来の旨味・甘さが凝縮し、大地の力強さを感じさせる。料理はミシュラン星付き店でも多く使われている有田焼・カマチ陶舗の皿に載せて供される。

 

 

 コースには「フォッサマグナ」という名前が付けられている。昔社会科で習った、白馬村近郊を通り列島を縦断する断層のことである。かつて海底だった長野県の遠い過去に思いを馳せる意味があるという。コースには同名の料理〜フォッサマグナ〜も含まれていて、これは香箱蟹のビスクに白馬の野菜を合わせたものである。蟹の強烈な旨味が口いっぱいに広がる素晴らしい一皿だった(コース内容は季節、仕入れによって変わる)。

 

 

 

 

 もちろんメインは肉料理、〜名物ヤザワミート厳選の灼麓館焼き〜である。ヤザワミートが威信をかけて選び抜いた和牛を、薪による直火で炙った一品だ。これがうまくないわけがない。肉質は信じられないほど柔らかくジューシーで、口中でとろけるようだ。今まで経験したことがないほどの美味であった。

 

 ところでヤザワミートでは、熟成肉という考え方はしない。

 

「フルーツでも採集して放っておくより、木になったまま熟成させたほうがいいでしょう。和牛も同じなのです。食肉牛は通常約28ヶ月間生育されるのですが、ヤザワミートでは肥育期間を更に長く、丹精込めて育てた牛を仕入れます。長い間手をかけたものを、フレッシュな状態でいただくほうが美味しいのです」と長屋シェフ。

 

 メニューには和牛の個体識別番号が印刷されており、生産地や生産者の名前が明示されている。調べれば祖父祖母の代の血統までわかるという。

 

 面白いのは、メニューのところどころに、〜白馬村で出会ったおばぁちゃんの〜との記述があることだ。これは長屋シェフが、本当に出会った老人から教えてもらったレシピや、分けてもらった材料を生かしたものだという。

 

「彼女たちは私が料理人だとは知らず、一生懸命作り方を教えてくれました。今の時期は、『もう野沢菜は漬けた?』が合言葉のようになっています(笑)」

 

 

 

 

 ワインリストからお好みの1本を選ぶのもいいが、ここは料理に合わせたペアリング・コースをおすすめしたい。総支配人の岩切博文氏はソムリエの資格を持つ。シャンパーニュから始まり、各皿に合わせたワインがグラスでサーブされる。中には信州で造られたワインや日本酒が含まれており、これらが地元の食材によく合うのだ。長野産のクラフトジンを使って、総支配人自らがシェイカーを振るカクテルなども供されて、ゲストを飽きさせない。

 

 

 

 

 この店には、もうひとつの秘密がある。2階にプライベート・ダイニングが設えてあり、カノリーリゾーツの宿泊者は、ここを貸し切って出張シェフの料理を楽しむことができるのだ。鮨さいとう、鮨あらい、鮓ふじなが、軽井沢くろいわ無二など、完全会員制や予約不可能といわれるレストランを招聘することが可能だという。

 

 ニューヨーク在住のアーティスト、松山智一氏の作品が掲げられた、まさに特別な空間である。

 

 

 

 

 灼麓館は、世界中から舌の肥えた富裕層が集まりつつある日本において、彼ら彼女らを満足させる数少ないレストランのひとつである。白馬の大自然に囲まれつつ、大地の恵みを生かした贅沢な料理の数々に舌鼓を打つ。これ以上の贅沢はないと言えるだろう。

 

灼麓館(シャロッカン)ステーキダイニング

〜フォッサマグナ〜コース:¥18,000(1コースのみの提供/サービス料なし/和牛を増量すると¥25,000)

ペアリング:¥18,000〜

住所:長野県北安曇郡白馬村北城1278-23

TEL.0261-85-4696

営業時間:17:00-23:00(L.O. 22:00) 不定休

https://kanolly.com/sharockan/

 

 

 

本格ピッツァ&BBQが楽しめる

白馬「サンフェルモ」

 

 

 

 

 灼麓館の向かいには、ヤザワミートが経営するもうひとつのレストラン、ピッツァ&BBQ「サンフェルモ(Sanfermo)」がある。こちらでも、ヤザワミートが総力をあげてプロデュースした料理の数々を堪能することができる。

 

 

 

 

 インテリアのセンスは相変わらず素晴らしいが、雰囲気はカジュアルであり、リラックスして食事を楽しめる。ホスピタリティの責任者はローマ出身のイタリア人で、店内は明るいムードに包まれている。

 

 ちなみに店名のサンフェルモは、ヤザワミートがミラノにて展開する焼肉レストラン「焼肉 矢澤」が面する通りの名Via San Fermoから取られたという。

 

 

 

 

 コンセプトは白馬村を中心とする信州の食材の恵みを生かすこと。地元で採れた野菜やキノコ類、米などが供される。どれも力強い大地の味がする。

 

 

 

 

 名物はローマ風の楕円形ピッツァ「ピンサ・ロマーナ」。もちっりとしたナポリ風とは違う、パリッとした食感が特徴である。一番人気は「自家製サルシッチャとキノコ 半熟卵のピッツァ」(写真、一番下)。他にも「矢澤ベーコンと濃厚ポテトソース」、「クアトロ フォルマッジ」など、お好みに合わせてどうぞ。

 

 

 

 

 ヤザワミートの十八番である黒毛和牛をこんがり焼いたスカロッパータは、必ず試してほしい逸品だ。肉のプロであるヤザワミートが、どうやったらベストな状態で和牛を召し上がってもらえるかを追求した一品だ。

 

 鮮度の高い野菜をふんだんに使ったサンフェルモサラダもおすすめ。自家製のハムやベーコンも見逃せない。どれも地元の素材を生かしきった料理である。

 

 オープンから一年が経ち、サンフェルモは白馬有数の人気レストランへと成長した。2022年12月初旬の時点で年内は満席だという。訪れる際は必ず予約を入れておきたい。

 

 

サンフェルモ(Sanfermo)

住所:長野県北安曇郡白馬村北城827-100

TEL.0261-85-4201

営業時間:Lunch 11:30~15:00/Dinner 17:00~21:00

定休日:水曜日

https://kanolly.com/sanfermo/