フィレンツェが生んだキャンバストート

レギュラーサイズのほか女性用のスモールサイズもあり、ともに5色展開。素材はフレンチキャンバス×フレンチカーフで、ライニングはチンギアーレ。レギュラーサイズ（写真奥のブラウン、グリーン、レッド）：W46（底面）×H35×D23cmで、各￥129,800、スモールサイズ（写真手前のワインレッドとネイビー）：W39（底面）×H29×D21cmで、各￥118,800 all by Saic／Afterhours

 

 

　フィレンツェに工房を構えるビスポーク鞄職人、サイクの村田博行氏が作る鞄が素敵なのは、ハンドメイド鞄特有の仰々しさがまるでなく、イタリアのクラシックな服に完璧に寄り添ってくれるところにある。シンプルかつ有機的なラインを描くサイクの鞄はいつも優しげだ。鞄は服を着て持つもので、サイクの鞄は決して主役になることなく、持つ人間を常にいい塩梅で素敵に見せてくる。世界中の洒落者たちから支持されている所以だ。

 

　そんなサイクのレディメイド キャンバストートがこちら。フィレンツェの工房にて村田氏自身が手がけており、氏がキャンバストートを作るとこうなるよな、という“らしさ”全開の表情をしている。愛用しているエルエルビーンのトートバッグを、村田氏のフィルターを通して昇華させたとのことで、素材にはフレンチキャンバスを使用。しなやかでありながらコシがあり、絶妙なソフトさが生み出すいい塩梅のクタッと感がたまらなくよい。

 

　男性がもつトートバッグはある程度のサイズがあるべき、という村田氏の大きなこだわりを表現しつつも、鞄がもつ柔らかな雰囲気を以て、程よい存在感にまとめている。組み合わせのフレンチカーフは5色。サイク的ビーントートといったところか。これなら、サルトリア仕立てのジャケパンスタイルにも難なく合わせられる。

 

 

中の革紐を縛ってマチを中に押し込むと、口がひょうたんのようになり、コンパクトに使える。口前の革がカーブしたフォルムも村田氏らしい。真鍮の金具はフランス製。

 

 

Hiroyuki Murata／村田博行

1984年、東京都生まれ。2009年にフィレンツェに渡ってシセイの大平智生氏に師事。鞄作りを学ぶ。2015年に独立し、フィレンツェ市内に自身の鞄工房を構え、サイクを始動。奥様の夕希子さんとふたりでビスポーク鞄を手がけている。次回の帰国受注会は5月を予定。