RAKISH ICONS: LENNY KRAVITZ

レイキッシュ・アイコン: レニー・クラヴィッツ

October 2022

レニー・クラヴィッツは、世界で最もクールな男性であると言えるだろう。ニューヨーク生まれのこのシンガー(時に俳優としても活躍)は、『自由への疾走』や『フライ・アウェイ』といったヒット曲で知られている。独特のボヘミアン・ブルース・スタイルがトレードマークだ。

 

 

 

by CHRIS COTONOU

 

 


1996年、ツアー公演が行われたイリノイ州ホフマン エステーツのポプラ・クリーク・ミュージック・シアターで、バイクに跨るレニー・クラヴィッツ。

 

 

 

 レニー・クラヴィッツのファッションセンスは、長年にわたって進化してきた。彼は常にオートクチュール・ピースとロックの定番アイテムをバランスよく組み合わせた。それは誰にでも似合うというわけではないが、彼は自分のスタイルを確立しているからこそ、ミュージシャンとしてだけでなくファッション・アイコンとしても時代を超越した存在となったのである。

 

 クラヴィッツのスタイルは、プリンスやデヴィッド・ボウイのように、ひとつのジャンルに捉われず折衷的であった。だから彼が2022年11月にCFDA(アメリカ・ファッション・デザイナー協議会)ファッション・アイコン・アワードを受賞するのも不思議はない。とはいえ、クラヴィッツはそこまでファッショナブルだっただろうか?

 

 1980年代後半から90年代初頭にかけて、クラヴィッツはサルトリアル的な服のチョイスで既に注目を集めていた。ダークスーツには、ネクタイの代わりにカラフルなクラバットやスカーフを合わせていた。レザーやメッシュのタンクトップ、ムートンや柄物のアメカジアイテムなどもよく着用していた。

 

 トレードマークのサングラスや眩いばかりのジュエリーとともに、彼は独自のイメージを生み出した。初期の頃から、そのどれもが偶然の産物ではなかった。若き日のレニー・クラヴィッツはファッション・ウィークの常連で、キャットウォーク、あるいはポール・ナトキンのようなミュージシャン写真家のレンズを通して、そのノーボタン・スタイルを披露していた。

 

 

 

 

 最も賞賛されるのは、イエロー、パープル、ピンクといった鮮やかな色合いと奇抜なレザーウェアをミックスする卓越したセンスで、時折、カルロス・サンタナ風のグルーヴィーな“ウッドストック的”アイテムを登場させることもあった。1998年秋のベッツィ・ジョンソンのショーでは、毛皮とレザーでできたウエスタンタイプのジャケットに、ヒッピー風の赤いレザーパンツを合わせた印象的なルックで登場した。

 

 スカーフは常にクラヴィッツの最も重要なアクセサリーだった。1995年に歌手カイリー・ミノーグと共演したときのセーム皮ジャケットや、フューシャピンクのカシミアのロールネックなど、スマート・カジュアルなアンサンブルを着ているときに彼はスカーフを上手に使っている。

 

 これらは、1970年代のスターたちがよくやっていたことだ。サンローランとパートナーシップを結んでいることもよく理解できる。クラヴィッツは、いつもロックンロール・スタイルの進化系なのだ。

 

 レニー・クラヴィッツは、30年以上もそれを体現してきた。おそらく彼は服を着ることを楽しみ、常にちょっと“過剰な”ルックを試し続けているのだろう。時代によるファッションの変化に合わせて自分のスタイルを再構築し、同時に強いアイデンティティを維持してきたのだ。

 

 1997年のグラミー賞授賞式での、シェブロン柄のトラウザーズとレザージャケットを身に纏った姿は、賞賛に値する。また1999年のパリでのショーでは、真っ赤なピークドラペルのジャケットにフレアーボトムという姿で登場した。

 

 

 

 

 クラヴィッツはいつも前ボタンを外して肌を露出させているが、それが彼のスタイルに奇抜さと楽しさをもたらしている。そして何より大事なことは、これらのアンサンブルが彼の音楽と完全に調和していたことだった。

 

 一方、クラヴィッツは驚くほど控えめに装う時もある。2006年、彼はシンプルなブラックスーツとネイビーのシャツでメットガラに出席した。2009年のカンヌ国際映画祭では、黒一色のスーツで登場し、フォーマルな装い方も心得ていることを証明している。その白眉は、シルクのボウタイとパテントレザーの靴を身につけた、2010年のアカデミー賞授賞式でのクラシックなタキシードルックだろう。彼はブラックタイを誰よりも上手に着こなすのだ。

 

 50代になっても、クラヴィッツのスタイルはそれほど変わっていない。今でもカラフルなレザーのアンサンブルや胸元の開いたベストやデニムのシャツを着ている。カラーリングやジュエリーも健在で、一貫したスタイルが貫かれている。

 

 

 

 

 彼は少しアップデートしたか、あるいはおそらく70年代のファッションがリバイバルした現在に自然に溶け込んだのだろう。とはいえ相変わらず実験的である。そのスタイルを初期から現在まで追ってきた人なら、彼がいかに今日のミレニアル世代のミュージシャンに影響を与え続けてきたかがわかるだろう。例えば英国のミュージシャンで、ワン・ダイレクションのメンバー、ハリー・スタイルズは、クラヴィッツから相当な影響を受けている(担当スタイリストが90年代のクラヴィッツのスタイルを踏襲している)。

 

 クラヴィッツは、雑誌の表紙を飾ることの価値や、ファッションショーの最前列に座ることの意味を理解した最初のロックスターであった。そのファッションはシームレスで、一貫したスタイルがある。そして最も重要なことは、ナチュラルであるということだ。

 

 彼は30年以上にわたって、ステージの上でも下でも、自分にとって何が効果的で、快適かを知っている。そこまでわかっていて、なぜ変える必要があるのか? レニー・クラヴィッツは紛れもないスタイル・アイコンなのである。