POCKET GUIDE: Manish Puri
世界のファッショニスタに学べ:マニッシュ・プリ
February 2024
素晴らしい着こなしを披露しているのは、ニワトリの頭をポートレートにした男である。マニッシュ・プリのようなファッショニスタは他に誰もいないだろう。
text charlie thomas
photography luke alland
Manish Puri/マニッシュ・プリ
コラムニスト。クラシックなメンズ・ファッションを取り扱うサイト「Permanent Style」などで執筆活動中。またインスタグラムアカウント「The Daily Mirror」では、自身の毎日の格好をスナップ。しかし顔は出さず、その部分はなぜかニワトリの頭部のイラストに差し替えられている。
ドレスアップをするときでも、アイテムはミニマルに抑える。ヘビーウエイトのリネン・ジャケットとハイツイスト・ウール製トラウザーズはロンドンのジ・アンソロジーで買ったもの。シャツは100Handsで、北インドの彼の家族が住んでいた地域のそばに工房がある。タイはフィエレンツェのセブンフォールド。
メンズウェア業界には、自分自身をシリアスに捉えすぎる輩が多い。マニッシュ・プリは、彼らとは一線を画している。ファッション・コラムニストであるプリは、サルトリア界では有名人だ。
彼のインスタグラム・アカウント「The Daily Mirror」には、日々の着こなしが記録されている。スコット・フレイザー・コレクションのキューバンカラーシャツ、プリーツ入りのショーツから、カミソリのようにシャープなアンソロジー・スーツまで、そのバリエーションは多く、着こなしは見事である。
しかし、そこに彼自身の笑顔は見られない。その代わり、顔の部分には、漫画のニワトリの頭が貼り付けられているのだ。「これは私が自分自身を、そんなにシリアスに考えていないことを意味しているんだ」と彼は言う。
「私はライトな感覚が好きなんだ。フォロワーは、そんなところを気に入ってくれたんだと思う。『笑わせてくれるね。なんだか親近感が湧いたよ』って感じかな。見る人に、そう思ってもらいたいんだ」
金融業界で20年のキャリアを持つプリだが、メンズウェアは常に彼の人生の一部だった。
「私の家族は移民だったから、何にでも慎重で保守的だった。父はインドの織物の町の出身で、実家はニット製品を作っていた。そんな父が、唯一楽しんでいたのが衣服だった。例えば私が『パパ、レザージャケットが欲しいんだ』って言うと、『ああ、いいね。クールだね』って、いつも言ってくれた。父は服装に関することだけは、何でも肯定的だった。それが私がファッションが大好きになった理由さ」
プリが履いているローファーは、ジョン ロブのロペスで、ロンドン・ソックス・カンパニーのソックスと合わせている。「この靴を手に入れたのは、撮影の数日前なんだ。最初にオーストラリアの友人が貸してくれたんだけど、サイズが合わなくて……。親切にも彼は一足プレゼントしてくれたんだ」。
ピンからブレスレットまで、ジュエリーのコレクション。「バッジは学校の監督生だったときのもの。ピンはガールフレンドのジェマがプレゼントしてくれた」。
移動中はあまり荷物を持たない。ペプラーのこのバッグに必需品のすべてが詰め込まれている。リコーのカメラGR3は旅のお供だ。
ガールフレンドからのもうひとつのプレゼントはこのキーホルダー。「ROUND AND ROUND, AND BACK HOME AGAIN」と書いてある。ドラマ『マッドメン』のエピソード「TheWheel」からの引用だ。
プリのお気に入りの時計のひとつが、このロシア製のラケタ。スクエアケース、シルバーの文字盤、お揃いのメタルブレスレットが特徴だ。
ゆとりのあるピークドラペルに、巧みに結ばれたフォーインハンドノット。ポケットスクエアは、プリがその場で差し入れた。「ヒンドゥー教の寺院を訪れるときは、敬意を表して頭を覆う。そのため、インドの家庭では、引き出しのどこかに白いハンカチが仕舞われているものなんだ。これはリネン製で、おそらく寺院に行くときに使われていた布だと思う」。
彼の幅広い時計コレクションは、主に旧ソ連のヴィンテージ品である。ナイロンと革製のストラップが組み合わされている。サングラスはローマのAstrologo Otticaで購入したTejesta製。