PETER LINDBERGH INTERVIEW
ピーター・リンドバーグ:黒と白の事実
October 2019
過去30年間にわたる膨大なファッション撮影に加えて、リンドバーグは、ニコール・キッドマン、ユマ・サーマン、ジェニファー・ローレンス、ジュリアン・ムーア、ケイト・ウィンスレット、ケイト・ブランシェット、アンジェリーナ・ジョリーなど、多数の映画スターたちを撮影してきた。
「俳優とモデルの大きな違いは、俳優が決してカメラを覗かないことを学んでしまっていることだ。カメラを忘れてしまうのだ。モデルについては、口で言うだけで済むが、俳優にカメラを覗かせることは、本当に難しい場合がある。時には彼らを上手に導かなければならないんだ」
彼はずっと前から、大スターに会ってもドキドキすることはなくなったと語った。
「それは完全になくなった。もしダライ・ラマに会ったらは、さすがに数秒の間、ちょっと緊張して無口になってしまうだろうけどね。しかし、シャイになることは、撮影を始める際は、よい方法であるとは言えない。写真を撮るために来て、おどおどしていてはダメだ。しかし同時に、傲慢にもなるべきではない。 ヴィム・ヴェンダースはかつて、彼の俳優に対する態度をこう言い表した。“私はあなたに感銘を与えようとは思わないが、あなたも私に感銘を与えることはできない” そんな態度こそ、いい関係を生む基本になると思わないかい?」
リンドバーグと私が会ったのは、ブラッド・ピット、シャーリーズ・セロン、ダニエル・ウー、アダム・ドライバーの写真をフィーチャーした、ブライトリングのキャンペーンが始まった時だった。すべての成功した写真家のように、リンドバーグの経歴は、エディトリアルとコマーシャルの仕事の積み重ねであり、ディオール、プラダ、アルマーニなどの広告を撮影した。彼は、アートとビジネス、両方のスキルを等しく使おうと努めてきた。
「かつて『アートフォーラム』誌と話し合ったことがある」とリンドバーグは回想した。
「彼らは、“注文された作品、委任された作品、細かく指定された作品は、果たして芸術と言えるのだろうか?”と尋ねてきた。私は“それでは美術館は、たくさんの絵を捨てなければなりません”と答えた。なぜなら、ティツィアーノ、ミケランジェロなど、これらすべての芸術家は、すべて“オン・デマンド”で働いていたからだ」
往年の芸術家たちについて、リンドバーグは冗談を言った。
「彼らは皆、クライアントの寵愛を得るために必死で、王様や貴族が好きそうなものなら何でも塗りたくっていた。彼らはすべての絵について、詳細な契約を結んでいた。絵がどのように見えるかを説明し、王の愛人が太っていたり、醜くならないことを保証していた。実際には醜かったとしてもだ。それは大昔のフォトショップのようなものだったんだ」
今は亡きピーター・リンドバーグは、すべてを“リアル”に描くことでキャリアを築いた。自然主義を貫き、モノクロームで真実を表現し続けたのだ。