Neighborhood experience at HOTEL INDIGO KARUIZAWA

ホテルインディゴ軽井沢で至極のリトリート体験を

February 2024

text chiharu honjo

 

 

 

 

 ネイバーフッド(周辺の地域)にしかない、その土地の魅力に出会えるホテルとして世界的に広く知られているホテルインディゴ。アートに造詣が深くインテリアデザインも凝っており、各地にあるホテルはふたつとして同じデザインがない。そんな個性的なホテルに惹かれて、冬のホテルインディゴ軽井沢を訪れた。

 

 東京駅から新幹線で約一時間とアクセスのよい軽井沢駅からシャトルバスで5分。軽井沢は繁忙期になると道路が混雑するため、駅から近いのは大変都合が良い。辺りの景観は市街地ではなく、小川を隔てて軽井沢ゴルフ倶楽部に隣接しており、木々に囲まれた広い敷地には長閑な静けさが漂う。

 

 

 

 

 スタイリッシュなエントランスを抜けると、天井まである大きな暖炉がロビーで出迎えてくれ、長野県産の唐松の間伐材を使った木の温もりあふれる空間がモダンな印象の中に居心地の良さを感じさせてくれる。フロント正面には、タペストリー作家の佐伯和子氏が染色糸を巻き付けてパネルにした、樹林に降り注ぐ陽光を想わせるアートワークが飾られており、ホテルインディゴらしいモダンな演出だ。

 

 

 

 

 水辺に佇むロビー棟と客室棟は一本の美しい通路で繋がっており、途中にレストラン棟、スパ棟がある。独立したそれぞれの棟を移動しながら軽井沢の自然を肌で感じる仕掛けがなされており、忙しない日常で疲れたマインドをリセットする穏やかな時間が流れているのを感じた。館内が暖かいため移動時に感じる冷たい風はむしろ心地よく、立ち止まって木々を眺めながら自然に溶け込んだ美しい建物に魅入るほど。春の到来とともにフォレストガーデンという中庭にファイアーピットを囲む焚き火ラウンジもオープンするというから、訪れた際はドリンク片手にゆったりと寛ぎたい。

 

 

 

 

 8室ある64㎡のスイートルームは、プライベートガーデンに面した低層階に位置しており、あたかも別荘に来たかのような隠れ家的雰囲気を醸している。木材を基調とした温かみのあるデザインの室内は、落ち着いたアースカラーで統一されており、自然とアートが調和した空間。そして、広いバルコニーや開放感溢れる浴室の窓からは、季節の移ろいによって表情を変える景色を眺めることができ、鳥のさえずりや風に揺れる木々の音、緑陰に癒される。

 

 

 

 

 スパ棟には、タイの名門スパHARNN(ハーン)のトリートメントがうけられる「ザ・スパ by HARNN 」がある。このスパは、2023年のWORLD LUXUARY SPA AWARDS(ワールド ラグジュアリー スパ アワード)において2部門を受賞した実力派で、東洋医学と伝統的なメソッドを用いたトリートメントが特長だ。中でも男性の予約が多いメニューは、筋肉の深層部の張りに集中してマッサージし疲労を回復してくれるタイヨガストレッチマッサージの「ザ レジャー」だと言う。1人用と2人用の個室があるため、パートナーと一緒に利用することもできる。

 

 ほかに、炭酸泉露天風呂とサウナを備えた大浴場や、水の力を利用してワークアウトができるドイツNOHrD社の木製フィットネスマシンを完備した24時間利用可能なフィットネスセンターもある。スパ棟へは客室にある部屋着と羽織で移動してもよいため、リラックスしたまま行けるのが嬉しい。

 

 

 

 

 食事も旅の醍醐味のひとつである。レストラン棟には、カウンター越しにピザ窯で焼き上げる自家製ピザや、薪の炎でダイナミックに調理する肉料理を見ることができるオールデイダイニング「KAGARIBI」があり、ゲストの欲求を満たしている。地元の新鮮な食材を活かしたイタリアンレストランで、この日は季節ごとにメニューが変わる「DINNER 5 COURSE SET(ディナー 5 コース セット)」をいただいた。

 

 テーブルに運ばれてきたのは、脂ののった寒ブリにポロネギのピュレや蕪のバニェットをかけた「鮮魚のカルパッチョ」、長野県産の香り高い小麦を贅沢に使いアクセントに胡桃とディルをあしらった「ポルチーニ茸と海老のタリオリーニ」、天然の真鯛とトマトの出汁に浅利の旨味が溶け込んだブイヤベース「鮮魚と浅利のズッパ・ディ・ペッシェ」、季節野菜のソースに薪の香りを纏ったサーロインをのせた「国産牛サーロインのグリル」、メレンゲを使った軽い口どけの「カカオ生地のサンファリーヌ」のデザート。いずれも地産の野菜の美味しさが際立つ、ここでしか味わえない料理だ。

 

 

 

 

 同レストランにはソムリエが5名いる。料理に合わせてフランス産のピエルソン・キュヴリエから長野県産のソラリス ラ クロア、南アフリカのマリヌーまで幅広いペアリングの用意をしてくれるから、地元のワインの話を聞きながら食事を愉しむのもよいだろう。

 

 ちなみに、朝食もこちらを利用するのだが、地元の契約農家の野菜、焼きたてのブレッドや浅間小町卵のフリッタータなどビュッフェの品揃えがとにかく豊富で素晴らしかった。レストランはビジターでも利用できアラカルトメニューもあるから、軽井沢を訪れた際に気軽に立ち寄ることもできる。

 

 

 

 

 ホテルエントランスにあるロビーラウンジでは、週末(金・土・祝日)のバータイムになるとミクソロジストお任せのカクテルをオーダーできる週末限定のバーがオープンする。カウンターに並んだ食材の中から好きな材料を選びミクソロジストのインスピレーションでオリジナルカクテルに仕上げるもので、イチゴをたっぷりと使ったものや信州を丸ごと味わえる野菜ジュースのようなカクテルが好評を博している。

 

 そして、エキサイティングな演出も加わる「アイリッシュウイスキー」、「抹茶のデザートカクテル」も見逃せない。龍眼のブランデーや厚岸蒸溜所のウィスキー、マローロのグラッパなど静かにグラスを傾けたい旨い酒も揃えているので、その日の気分でリクエストしたい。

 

 

 

 

 このホテルの館内には至る所にアートワークが散りばめられている。客室の廊下にはスペイン出身の著名なイラストレーター、ルイス・メンド氏による軽井沢をテーマにしたポップなイラストが連なっており、街の様子や建築物、スポーツをテーマにした様々なイラストが印象的だ。

 

 また、室内にはオーストラリア出身の版画家テリーマッケーナ氏が軽井沢の自然をイメージした木版画を手作業で刷った作品や、左官職人が軽井沢のランドスケープを表現した漆喰のアートワークなどが飾られており、訪れる者の心を和ませる。

 

 テリー氏は、旧軽井沢にあるアトリエで木版画教室を開いており参加することも叶う。「Print experience」のコースでは、葛飾北斎の絵柄が彫られた版画を刷り、色の重なりが生む伝統技法の奥深さを体験できるので事前に予約したい。(軽井沢木版画:北佐久郡軽井沢町軽井沢東18-7 火・木10:00~/13:00~*要予約 お問い合わせ:experience@mokuhanga-school.jp

 

 

 

 

 同ホテルではコンシェルジュという役割をあえて作らず、すべてのスタッフがホテル周辺の魅力(ネイバーフッドストーリー)を案内できるストーリーテラーのような存在を目指しているという。車やカメラ、ゴルフ、ギターなど、それぞれが得意とする分野のイラストが描かれたネイバーフッドピンバッジをつけているため、気になるバッジをつけているスタッフを見かけたら話しかけるとよいだろう。

 

 今回は、スタッフ(ネイバーフッドホスト)が教えてくれた昨年完成したばかりの小諸蒸留所へ足を運んだ。イギリスの大手専門誌に「世界で最も訪れたい蒸留所3選」のひとつに選ばれ、世界中のウイスキー関係者が集う「World Whisky Forum」の開催地としてアジアで初めて選出された、知る人ぞ知る施設だ。

 

 創業して間もない小諸蒸留所がこれほど注目されるのは、権威ある賞を500以上受賞している世界最高峰のマスターブレンダーの一人であるイアン・チャン氏が共同創業者だからにほかならない。氏のこだわりが詰まった建物も必見だ。一歩足を踏み入れた瞬間、その洒脱なセンスに圧倒され目を見張ることだろう。小諸の清らかな水を使いシングルモルトのみを製造することに注力した蒸留所内では、特注のポットスチルから流れ出る一滴一滴を職人がデータをとりながら細かく管理しており興味深い光景だ。

 

 ガラス越しに蒸留所内が見えるように設計されたビジターセンターでは、ポットスチルを眺めながらバーで熟成前の原酒(ニューメイク)が堪能できるほか、蒸留所の見学、ウイスキーを飲み比べながら学ぶアカデミー、カクテル作りなどが体験できる。ノンアルコールドリンクや軽食もあるので、ウイスキーが苦手な人と一緒でも安心だ。

 

 

 

 

 刻々と変わる軽井沢の美しい自然に包まれて過ごすこのホテルは、暖炉で揺らめく炎や窓の外に降る雪、澄み渡った夜空に輝く星など冬の景色にも風情がある。アートと自然が見事に調和した洗練された空間で、都会とはひと味違う贅沢なひと時を過ごせる、軽井沢らしさに溢れた場所と言えよう。

 

 

ホテルインディゴ軽井沢

長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉字屋敷添18番地39

TEL. 0267-42-1100

https://karuizawa.hotelindigo.com/