National Opera of Ukraine

この冬、ウクライナ国立歌劇場の3年ぶり来日公演でウクライナの芸術文化に再び灯がともる

December 2022

12月17日神奈川県民ホールでの公演を皮切りに、バレエ「ドン・キホーテ」、「新春オペラ・バレエ・ガラ」、オペラ「カルメン」、オーケストラ「第九」、合計26公演を、1月15日まで全国14都市で行なう予定のウクライナ国立歌劇場。戦禍のウクライナで今なお舞台に立ち続け、ウクライナの芸術を守り続けている総勢約200名のアーティスト達の来日がいよいよ実現する。

 

 

 

ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)「ドン・キホーテ」の一幕。

 

 

 

ウクライナ国立歌劇場、戦禍の退避から公演再開の現在

 

 ウクライナ現地では、2022年2月からの情勢によりウクライナ国立歌劇場に所属するメンバーの半分以上が国外へ避難する事態となった。しかしその後、芸術活動を続けてほしいというウクライナ政府からの要請や、芸術を愛するウクライナ国民からの強い要望を受け、ウクライナ国立歌劇場では劇場地下の防空壕に入ることのできる人数を考慮し客席数に制限を設けつつ、5月より現地公演を再開。11月には、電力供給が不安定な状態のなか、日本公演でも上演予定のオペラ「カルメン」、バレエ「ドン・キホーテ」をはじめ約13公演を開催し、同時に今冬の日本公演に向けたリハーサルも行なっているという。

 

 その間の2022年夏には、限られた演者の来日により「キエフ・バレエ・ガラ2022」と題した日本全国公演を成功させ、日本のバレエファンを喜ばせ大きな話題となった。初日の前橋公演で記者会見に登壇した当時バレエ芸術監督であったエレーナ・フィリピエワ氏は、涙ながらにウクライナの現状と来日公演の意味について語り、この公演のために“ひまわり”という演目を創作した副芸術監督の寺田宜弘氏は、「ひまわりはウクライナの人々の未来への希望を象徴している」とそのコンセプトに触れた。

 

 しかしながらその一方で、 まだまだ来日への影響も少なくない。現在、ウクライナ国内では来日に向けたビザの発行が困難なため、隣国のポーランドまで赴き、演者約200名分のビザ発行を行なっている。さらに、キーウでは空港が機能していないため、来日時には一度全員でポーランドへ向かい、日本へ飛び立つ予定だ。このような状況下ではあるが、ウクライナや劇場を応援する日本のオーディエンスや関係者に感謝の気持ちを伝えたいという劇場側からの意向を受け、多方面からの支援・協力を受けながら、現在来日に向けた準備を一つひとつ進めているという。

 

 

夏の来日記者会見で現状を語る、当時ウクライナ国立歌劇場・バレエ芸術監督であったエレーナ・フィリピエワ氏(左)と来日公演に対する想いを語るウクライナ国立歌劇場・バレエ副芸術監督を務める寺田宜弘氏(右)。

 

2022年の来日夏公演のゲネプロでは、エレーナ・フィリピエワ氏が「瀕死の白鳥」の名シーンを披露。

 

 

 

 

ウクライナ国立歌劇場の来日公演がいよいよ実現

 

 このように現時点においても決して予断を許す状況ではないウクライナではあるが、平和を願うからこそ芸術活動を継続するという歌劇場側や招聘する日本の関係者の想いは熱い。そしてこの冬、ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)「ドン・キホーテ」、そしてウクライナ国立歌劇場(旧キエフ・オペラ)「カルメン」など全26公演が実現する。いずれもバレエ、オペラファンに広く愛される名演目。

 

「ドン・キホーテ」は、自分を中世の騎士だと思い込むドン・キホーテが訪れたスペインのバルセロナの広場で、恋人同士のキトリとバジルの結婚を軸に繰り広げられる騒動を描いたコメディ作品。色鮮やかに集う街の人々や、闘牛士たちのキレ味の良い踊り。エスパーダやジプシーたちの情熱的な演技。大きなジャンプ、目にもとまらぬ回転など華やかなテクニックが冴える、見どころ満載の陽気で楽しい人気作品だ。

 

「カルメン」は、スペインのセビリアを舞台としたオペラの代表的人気作。恋愛と失恋がもたらす悲劇というストーリーとドラマティックな展開が見どころ。ウクライナ国立歌劇場の管弦楽団、合唱団、そしてバレエ団という壮大な総合芸術は圧巻。

 

 

 

 

子供無料チケット・CHINTAIユースチケットなど、若い時だからこそ体験したい本物の舞台芸術を提供

 

 バレエ「ドン・キホーテ」では、文化庁子供文化芸術活動支援事業のひとつで小学生~18歳までのお子様を対象とした「子供無料チケット」の申込みを受け付けている。また、オペラ「カルメン」においては、株式会社CHINTAIからの協賛により実現した、25歳以下の方を対象とする「CHINTAIユースチケット」を4,000円で販売しており、劇場でしか体験することのできない、本物の芸術を生で鑑賞することの素晴らしさを、未来を担う次世代の方にもぜひ味わって頂きたい。

 

 なおこれらチケットの申込みは、株式会社光藍社公式webサイトのみでの取扱いとなる。

 

 

 

【ウクライナ国立歌劇場の主な公演概要】

 

CHINTAIクラシック・スペシャル ウクライナ国立バレエ(旧キエフ・バレエ)「ドン・キホーテ」

公演期間:2022年12月17日~2023年1月3日

www.koransha.com/ballet/ukraine_ballet/

 

 

CHINTAIクラシック・スペシャル ウクライナ国立歌劇場(旧キエフ・オペラ)「カルメン」「新春オペラ・バレエ・ガラ」

公演期間:2023年1月3日~1月14日

www.koransha.com/ballet/ukraine_opera/

 

 

写真提供:株式会社光藍社、株式会社CHINTAI

取材協力:ウクライナ国立歌劇場