MAZZI FINE ART SALON

麻布台から始まる、MAZZI FINE ARTの新章

October 2026

純金や純銀、独自の油彩と立体的な造形を組み合わせ、生命や自然の世界を描いてきたイタリア人アーティスト、フランチェスコ・マッツィ氏。そのアートブランド「MAZZI FINE ART」が、東京・麻布台に完全予約制のサロンを開設した。

 
 

text THE RAKE

 
 

東京・麻布台に誕生したMAZZI FINE ARTのプライベートサロン。フランチェスコ・マッツィ氏の作品が並ぶ空間には、コレクターとの対話を重視するブランドの姿勢が表れている。

 

 鮮烈な画面に浮かび上がる、金色の枝や可憐な花々。繊細な凹凸を持つその造形は、光の加減や見る角度によって異なる表情を見せる。絵画に彫刻的な奥行きをもたらす、独創的なラグジュアリーアートの世界。その生みの親が、フランチェスコ・マッツィ氏だ。自身の名を冠した「MAZZI FINE ART」で、自然や生命を主題とする作品を発表してきた。

 そのMAZZI FINE ARTが、東京・麻布台に完全予約制のプライベートサロンを開設した。ゆったりとソファやテーブルが配された室内には、作品がインテリアと調和して並ぶ。複数の作家を紹介する一般的な画廊ではなく、ひとりのアーティストが築いてきた世界を、コレクターにじっくり体験してもらうための場所だ。細部や素材の質感を確かめ、作品の背景を知り、購入や特別な制作依頼について相談することができる。

 2020年の始動から約6年。独自の芸術世界を築いてきたマッツィ氏が今重視しているのは、創作活動にいっそう専念できる環境を整えること。そこでMAZZI FINE ARTが掲げるのが「現代のルネサンス・ボッテガ」という構想である。

 
 

MAZZI FINE ARTの創設者であり、アーティストのフランチェスコ・マッツィ氏。自身のボッテガで制作に取り組む姿からは、素材と技法の探究を重ね、独自の芸術世界を築いてきた創作への姿勢がうかがえる。

 

 ボッテガとはイタリア語で工房のこと。ルネサンス期、芸術家が素材や技法を探究し、注文主との関係の中で作品を生み出した工房の精神を、現代に受け継ごうとしている。創作の場である工房と、作品がコレクターに出会うサロン。麻布台の新拠点は、その役割を明確に分け、結びつける試みでもある。

 マッツィ氏の作品を特徴づけるのは、絵画の枠を超える立体的な造形と、素材そのものが生み出す光の表情である。大理石を用いた繊細な浅浮彫によって画面に奥行きを与え、独自に調合した油彩と純金、純銀を幾層にも重ねる。光の当たり方や鑑賞する位置によって陰影や輝きが移ろい、平面の絵画とは異なる存在感を放つ。写真だけでは伝わりきらない魅力が、そこにある。

 
 

『Il Porto del Sole(太陽の港)』。大理石を用いた浅浮彫に、独自の油彩や純金、純銀を重ね、地中海の光と港の情景を立体的に描き出した。キャンバス59×29cm。¥2,860,000 Mazzi Fine Art

 

 その技法を生かし、近年は風景画へと創作の領域を広げている。『Il Porto del Sole(太陽の港)』には、地中海の港を行き交う人々や船、動物たちが描かれている。実在する港の景色をそのまま写したものではない。そこに流れる時間、肌に感じた空気、海を照らす光。マッツィ氏が記憶している地中海を、ひとつの世界として画面に立ち上げている。

 
 

『Terra di Luce(光の大地)』。トスカーナの風景に着想を得た一作。家々や木々、人々の姿を細やかに描き込み、画面全体に生命の息吹を宿す。キャンバス59×29cm。¥2,860,000 Mazzi Fine Art

 

 『Terra di Luce(光の大地)』では、その視線はさらに広がる。鮮やかな色彩で描かれたトスカーナの大地には、家々や木々、人々の営みが細やかに織り込まれている。そこにあるすべての存在に、等しく光が注ぐ。生命や幸福に優劣を設けないというマッツィ氏の思想が、この風景には息づいている。かつて一本の木や一頭の動物を通じて描いてきた生命への関心が今、風景全体へと広がっている。

 
 

『Amore di Papaveri – Con gli Amici(愛のポピー ― 友達とともに)』。トスカーナの野に咲くポピーと黄金色の麦穂を、蝶や蜂、テントウムシとともに描いた作品。繊細な浅浮彫と金銀の輝きが、自然の生命力と豊かな色彩を際立たせている。キャンバス59×29cm。¥2,530,000 Mazzi Fine Art

 

『Il Respiro del Bosco(森の呼吸)』。森に息づく生命と自然への畏敬を、青や金、銀などを重ねた色彩で表現。浅浮彫による立体的な造形と複雑な陰影が、静謐な森の奥行きと神秘性を描き出している。キャンバス59×29cm。¥2,860,000 Mazzi Fine Art

 

 MAZZI FINE ARTでは、完成した作品から好みの一点を選ぶだけでなく、コレクターとの対話から新しい作品を生み出す「ビスポーク・コミッション」も行っている。代表的なモチーフのひとつがオリーブの木だ。生命や平和、繁栄を象徴するその姿に、依頼主の記憶や大切なものを重ね、世界にひとつだけの作品を構想する。既存作品の色や大きさを変更するカスタマイズとは違い、依頼そのものが新たな創作の出発点になる。コレクターの想いを受け止めながら、ひとつの芸術作品へと昇華させる。その表現を担うのは、マッツィ氏自身だ。

 
 

『La Luce degli Ulivi L(光のオリーブ L)』。長い年月を生き抜いてきたオリーブの古木を、浅浮彫と純金を用いて表現した作品。キャンバス40×40cm。¥1,760,000 Mazzi Fine Art
※オリーブの木をモチーフとしたビスポーク・コミッションは¥2,640,000〜。横長タイプは¥3,080,000〜。

 

 こうした創作のあり方は、注文主との対話から唯一無二の一着を仕立てる、ビスポーク・テーラリングにも通じる。アートを所有するだけでなく、その誕生に関わることができるというわけだ。

 創作の場である工房と、作品がコレクターに出会うサロン。東京・麻布台に誕生した新たな空間は、MAZZI FINE ARTが約6年をかけて築いてきた世界観を体現する場所である。

 
 
 

MAZZI FINE ART SALON

東京都港区麻布台1-5-6 パレス麻布501

完全予約制

https://www.mazzifineart.com/