PCKET GUIDE: MAN OF GÖT
世界のファッショニスタに学べ:サイモン・バーグ
October 2023
サイモン・バーグは、スウェーデンの名門テーラー、ゴッドリッヒが経営危機に陥ったとき、それを救おうと動いた。その結果、ストックホルムには、ヨーロッパの他の都市に匹敵するほどのビスポーク文化が育ったのだ。
text charlie thomas
photography alexander roxell
Simon Berg/サイモン・バーグ
1977年、スウェーデン・ストックホルム出身。起業家。ストックホルムで手技療法士のための専門学校を経営し、スウェーデンとノルウェーで数社の取締役を務める。ストックホルムでテーラーのゴッドリッヒ、およびバッグと革製品のバロンを共同経営している。
着用しているのはゴッドリッヒのビスポーク・スーツ。素材はヨークシャー・テキスタイルズのグレー・フランネル。彼が思う、スーツの魅力とは? 「これほど象徴的な衣服はなかなか思いつきません。歴史を通じて重要な役割を果たしてきましたし、権力や富を暗喩するという点では、フロイト的ですらあります。80年代のウォール街の男たちのパワースーツを思い出してください。スーツについては、さまざまなことが言われていますが、仕事で着る必要はなくなっても、これからも長い間存在し続けることは間違いありません」
サイモン・バーグが卓越したエレガンスを醸し出しているのは、優雅な物腰と非の打ち所のない服装のせいである。スカンジナビアン・カレッジ・オブ・ナプラパシック・マニュアル・メディスン(神経・筋骨格の痛みや障害の診断、手技による治療を教えるカレッジ)の理事を務める彼が、ファッション・ビジネスに関わるようになったのは、ここ10年ほどのことだ。
廃業寸前だったスウェーデン最古のテーラー、ゴッドリッヒ&Co.に投資したことがきっかけだった。サヴィル・ロウのテーラー、カッド&ザ・ダンディとともに、メゾンを救ったのだ。そのおかげで、ストックホルムの男性たちは、ロンドン、ナポリ、ミラノの一流テーラーに匹敵するスタイリッシュなビスポーク・スーツを、地元で作ることができるのだ。
サイモンはずっとテーラリングに携わってきたわけではないが、幼い頃からファッションに対して並々ならぬ興味を持っていた。その理由について、彼はTHE RAKEにこう語った。
「それは、私が7歳の頃から知っている旧友の影響なのです。彼は子供にもかかわらず、クラシックなメンズウェアが大好きでした。その年齢でクラシックに夢中になるのは少々変ですが、彼の着こなしはいつも抜群でした。彼はプロポーションや色の合わせ方について、天性のセンスを持っていました。そしてもともとはファッションの世界の住人ではなかった私は、いつも彼から着こなしについて学んできたのです」
この2001年製ロレックス・デイトジャストは、バーグの父親が所有していたものだ。「いつも身に着けています。スポーツをするときにもはめているし、スキーにも行きます。ドラムを叩くときだけ外します」
バーグは、ゴッドリッヒが別注した英国アルバート・サーストンのブレイシズを愛用している。「ブレイシズはこのブランド以外は考えられません」
アイウェアはオスカー マグヌソンを愛用している。「デザインにかける労力、製造技術、素材のクオリティ、すべてが最高です。このブランドのメガネやサングラスはたくさん持っています。どれも素晴らしい出来です」
「これは私の愛猫、ベンガルキャットのイジー。もう一匹、ゼルダという猫も飼っています」
足元はクロケット&ジョーンズのオックスフォードに、ブレッシアーニのロングホーズを合わせている。「この靴は15年くらい前に友人の結婚式のために買ったものです。初めて履いた日の夜は、靴ズレが酷くて、寝る前にホテルから氷をもらわなければなりませんでした。でも今は第二の皮膚のようです。履いたままハイキングにも行けるでしょう(笑)」
ネクタイの結び方はいつもプレーンノット。イタリア製のボールド・ストライプのシャツと合わせて。
オメガの懐中時計と並んでいるのは、バーグの父親が使っていたカフリンクス。「父は60年代にアメリカに住んでいて、家の一部をノルウェー人の家族に貸していました。しかし彼らは家賃が払えなくなってしまった。そこで代わりとして、これらのカフリンクスが渡されたそうです。60年代のシカゴで作られたものです。チェーン式のエナメルで“C”のロゴが入ったものがありますが、このCはシカゴ・カブスの頭文字だそうです」
THE RAKE JAPAN EDITION issue 54