Luxury Stay at The Capitol Hotel Tokyu
【試泊記】ザ・キャピトルホテル 東急で英気を養うおこもりステイ
March 2025
最寄り駅は溜池山王。一部の客室からは国会議事堂と皇居をまるっと一望できる「ザ・キャピトルホテル 東急」。きめ細やかなサービスと心地よい空間で、上質を知る人々をも虜にする、その魅力を宿泊レポート形式でお伝えしたい。
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周りの緑に調和した、寺社建築の木組みの構造をモチーフとしたデザインに眼を奪われるホテルエントランス。車を降り立つと頬に触れる日枝神社からの清い風に、すでに心が洗われる気がする。
2010年10月に新たな姿で生まれ変わったザ・キャピトルホテル 東急は、東京の中心にありながら豊かな緑に抱かれ、日枝神社に隣接したもはや聖域とも言うべき場所にある、日本が誇るべきラグジュアリーホテルだ。
今やホテルを象徴する存在となったオールデイダイニング「ORIGAMI」に、丁寧な仕事で定評のある中国料理「星ヶ岡」、国会議事堂と皇居を一望できる日本らしい落ち着いた内装のクラブラウンジ、そして和の設えが印象的で日本の美を感じる客室……。
国内に多数ある東急グループのホテルのなかで最上級カテゴリーに位置する同ホテルには、本物を知る人にふさわしい、洗練された空間が広がる。そして気品に満ちたスタッフのサービスが、さらにその魅力を引き立てている。
チェックインから順を追って詳しくご紹介していきたい。
右手には水辺、頭上には隈 研吾氏による美しいデザイン、中央には月ごとに変わる季節感あふれる豪華な草月流いけばなが広がるロビー。水・金・土は1日5回、琴の生演奏も行われる。
ホテルの魅力を余すことなく享受したいならば、選ぶべくはクラブラウンジアクセス付きのクラブフロア、またはスイートルームだ。対象の客室に宿泊すると、まずはチェックイン/チェックアウトが専用ラウンジにて可能(チェックアウト時は曜日・時間帯によってラウンジが閉まっていることもあるため要確認を)。レセプションのスタッフまたは車寄せのドアマンに宿泊の旨を伝えれば、ラウンジへ案内してくれる。
同ホテルのラウンジ「The Capitol Lounge SaRyoh(サリョウ)」は、和紙や組子細工、西陣織のアート作品などが散りばめられた、日本らしさとモダンな雰囲気が見事に調和した空間。窓の外には、国会議事堂と皇居を望むことができる。
上2点:クラブ専用ラウンジ「The Capitol Lounge SaRyoh(サリョウ)」。ラウンジからも皇居と国会議事堂を一望できる。
ラウンジの名は、この地が大正末期から昭和初期に北大路魯山人が主宰した、会員制料亭「星岡茶寮」として栄えたことに由来する。ホテルが建つ日枝神社の小高い丘は、古来より星の眺めがきれいな景勝地として知られていた場所であり、人々はこの最上の場所で親交を深めていたのだ。
フードプレゼンテーションは、滞在中全4回入れ替わる。まず到着時の「ティータイム」(14:00~16:00)、ディナー前後に利用したい「カクテルタイム」(17:00~21:00)、土・日・祝日限定の「朝食」(7:00~11:00)、そして人気のブレッドをミニサイズで楽しめる「イレブンシス」(11:00~13:30)だ。多彩な茶類をはじめこのラウンジでしか味わえないコーヒー(このラウンジのためだけの特別ブレンド)や、ソムリエが厳選したワイン・和酒も豊富に揃っている。
筆者が到着したのは、チェックイン開始直後の15時ごろ。終日提供されているシャンパーニュ「ペリエ ジュエ」をはじめ、紅茶やコーヒーなどのラインナップから好みのドリンクを楽しんでいるうちに、チェックインは完了した。まず客室へ移動してもよいが、ちょうどアフタヌーンティー提供されている時間帯だったため、スイーツをいただくことに。
他ではお目にかかれないようなユニークで、手の込んだ品々がずらりと並んでいた。ORIGAMI特製のあんぱんやバナナブレッドなどのベーカリー関連から、新鮮なフルーツ、レモンジュレ、クーゲル、コーヒームース、柑橘ガナッシュのパフェといった本日のデザート、そしてサンドイッチまで、すべてクラブラウンジのためだけに特別に作られたものだった(ポテトチップスやドライフルーツを除く)。
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左:終日提供されているミニサイズのあんぱん。ホテルのべカリーで人気を誇る一品だ。右:ラウンジ限定で使用されている器は、すべて有田焼の深川製磁のもの。
同ホテルでは、SDGsにも力を入れている。全館で使用されているストローはプラスティックでも紙でもなく、間伐材を使った「木材ストロー」。口触りや使い心地も非常によい。
食器にもこだわりが光る。ラウンジで使用できるのは、有田焼の深川製磁。絵柄の美しさと際立つ重厚感が、ラウンジでのひとときにいつもとは違う高揚感を添えてくれた。
ちなみにクラブ専用ラウンジ内の特典は、併設ミーティングルーム1時間利用無料や、駐車場・バレーパーキングの利用無料(1室につき1台分まで)、無料プレスサービス(1滞在につき3着まで)、フィットネスクラブ のプール・ジムの利用無料、フィットネスクラブ レンタル品の利用無料(ゴーグル除く)など、非常に充実している。
アフタヌーンティーを楽しんだあとは、部屋に戻って一息つきたい。ディナー前にフィットネスクラブのジムやプールへ行って、お腹を空かせるのもいいだろう。今回筆者が宿泊したのは、「クラブ デラックス キング」(44.9㎡)という客室タイプだった。
「クラブ デラックス キング」。写真では見えないが、手前には仕事も捗るデスクも完備している。
入り口を入ると、二手に通路が分かれており、一方は洗面台へ、もう一方はお手洗いとバス・シャワーエリアへと続く。その先はいずれも、ひとつのベッドルームへと続いており、日本家屋の伝統的スタイルを取り入れたぐるっと回遊できるユニークな構造となっている。間仕切りとなっている障子を動かすことで、入浴しながら窓の外に広がる景色を楽しむこともできる。
客室は日本らしい設えが特徴。グラス等が入っているキャビネットの扉が深い朱色だったり、ベッドの高さは低めに設定されていたり、ベッドボードの紋様は花菱を彷彿とさせるものだったり、ベッドサイドのランプには和紙のような温かみのある素材が用いられていたり……日本ならではの美がそこかしこにさりげなく散りばめられていた。
些細なことではあるが、テレビ近くに窓の外に広がる景色をイラストと共に紹介した案内が置かれていたり、引き出しの中に充電用コードが常備されていたりとおもてなしの心が細部まで感じられる空間だった。仕事を終わらせつつ、客室を満喫した後は、クラブラウンジのカクテルタイムに舞い戻ろう。
ザ・キャピトルホテル 東急のクラブラウンジのカクテルタイムでは、本格的な料理を楽しめる。シェフによる鉄板でのライブ調理によって、メインディッシュのような一皿を堪能できるのだ。取材時には「鰤のポワレ」が提供されていた。肉料理やスープ料理など日によってメニューが変わるため、内容は当日のお楽しみに。
取材時の「鰤のポワレ」は、カリフラワーのピューレとともに、ホワイトマッシュルームとカリフラワーのスライス、ラディッシュや菜の花が添えられており、仕上げに柚子の皮を削り、香りまで豊かな一品だった。レストランのコースの一皿のような完成度だ。
ゆっくりと料理をいただきながら、シャンパーニュを数杯楽しんでいたら、もうディナーの時間。この夜はロビー階のひとつ下のフロアにある中国料理「星ヶ岡」へ。ラウンジではフレンチの一皿を楽しめるので、館内でのディナーには「星ヶ岡」を一番におすすめしたい。
同店では、シグネチャーメニューを楽しめるクラシカルコースに加え、数ヶ月ごとに日本各地の異なる地域にフォーカスを当てた特別なコースメニューを提供している。毎回、その土地土地の魅力を深く掘り下げるべく、シェフや同店のマネジャーを含めたチームが現地を実際に訪れ、食材探しに奔走。見つけた食材を余すことなく使用したコースメニューは、いわば現地の農家や職人の方々とゲストを繋ぐ一本の架け橋だ。そのおいしさを味わい、シェフやチームの熱量のある話を聞くと、実際にその場所を訪れたいと思わずにはいられないだろう。
中国料理「星ヶ岡」。少し照明を控えめにした、落ち着いた空間。
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有機農法の野菜や果物から、ひとつひとつ手で焼かれたあごでとった出汁まで、長崎の数えきれない魅力に溢れる食材を使った「長崎県食材フェア」(平日限定)で提供されているコースでの料理の一例。左:「平戸伝承の味 いりこ出汁香る尾ひれをどうぞ」は、運ばれてきた瞬間に出汁の優しい香りが漂う、滋味深い先付けだった。右:「壱岐直送 幸福のとらふぐ『壱岐七ふく神』の焼き霜仕立てローへイ」は、ふぐの弾力と、野菜のシャキシャキ感、そして「ゆうこう」という柑橘類を使った酸味を抑えたポン酢風味のソースとの相性が抜群。
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平日限定の「長崎県食材フェア」で提供されているコースでの料理の一例。左:「平戸いのししの柔らか肉団子 江南スタイル」はいのししのバラ肉を挽肉状にし椎茸等の野菜と合わせて蒸してから揚げた、ほろほろと解ける肉団子の下に、優しい味わいのお粥を合わせた、甘味と塩味が見事に融合した一品。ジビエと言われないとわからないほどに臭みが皆無だった。右:取材時の「シェフおすすめ長崎県産品の御食事」は、長崎ちゃんぽん。上品な味わいで、具材もごろごろと入っている贅沢な締めの一品だった。
現在開催されているのは「長崎県食材フェア」。全9品で構成されるコースとなっており、今回は、平戸や壱岐、島原や雲仙まで行脚し、東京ではほとんど流通しない希少な食材ばかりがこのフェアのためだけに取り寄せられている。例えば、一品目は長崎の卓袱(しっぽく)料理の始まりとして最初に提供される“尾ひれをどうぞ”にちなみ、ひとつ一つ手で焼き上げられたいりこや焼きあごで引いた出汁をメインに、キジハタや菜の花、紅白の白玉を合わせた先付けのスープからスタート。香り高い出汁の香りと、温かさに食欲が掻き立てられた。
他にも、壱岐直送の「壱岐 七ふく神」を使ったサラダ、平戸で水揚げされた天然寒鰤「平戸ひらめおがみ」の唐揚げ、さらには同店のシグネチャーディッシュでもあるフカヒレに加え、なまこと鮑の俵物三品を醤油で煮込んだ贅沢な一品、「平戸いのしし」や「壱岐牛」のメイン料理、締めには長崎ちゃんぽん、そして壱岐産「黄金◯」やカステラを卵黄で絡めて糖蜜で揚げた長崎県平戸市の銘菓「カスドース」を使ったデザートまで登場するという、これ以上ないほどに贅が尽くされた、唯一無二のコースとなっていた。
次回は、3月31日〜5月30日まで、同店のシェフ・山橋孝之氏の故郷である島根県の食材が取り上げられる。浜田港で水揚げされる直送のサザエや白バイ貝、ウチワエビをはじめ、ブランド牛や芙蓉(ふよう)ポーク、さらには日本最高級の岩海苔ともいわれる「十六島(うっぷるい)のり」まで、シェフ自ら島根県を訪れて厳選した食材が並ぶ。東京にいながらにして島根の魅力を堪能できる食の旅をぜひ体験していただきたい。
客室アメニティのひとつであるオリジナルのバスソルトは、ホテル3階のビジネスセンターで販売されているもの。お湯に溶かすと白濁し、立ち上る桜の香りにうっとりする。ギフトにも最適だ。
静かな空間と快適なベッドでぐっすり眠れた翌朝のお楽しみは、オールデイダイニング「ORIGAMI」での朝食だ。卵料理に加え、バリエーション豊富な野菜やホテル自家製ブレッド、ハム&ソーセージやサーモン、チーズ、ドリンクなどが並ぶ「ORIGAMIビュッフェ」、和朝食、アメリカンブレックファースト、コンチネンタルブレックファースト、そしてヴィーガンブレックファーストから選択できる。
筆者はブッフェの充実具合に感動しつつ、個人的定番の和朝食を選択したが、パン好きにはぜひビュッフェを選んでいただきたい。多くのファンがいる同ホテルのパンを、思う存分食べられる。
筆者が選んだ和朝食はというと、日本料理「水簾」によるものだということもあって、旅館の朝食のように豪華な内容となっていた。焼き魚(この日は鮭の塩焼またはめぬきの西京焼から選べた)、ほうれん草のおひたしやなすの煮浸し、卵焼きにサラダ、炙り明太子や炊いた鮑、かまぼこ(他にもまだまだ…!)に、隠れた名物だという豚汁。豚や野菜の旨みが光る、身体にやさしく沁みる一杯だった。
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ホテルを満喫するためには、ホテルにこもっているのに限る。外が雨でも大事な靴が濡れてしまうことはないし、寒くても暑くても着るものを心配する必要はない。とびっきりのオシャレをしてディナーやカクテルタイムを楽しむのに最高の舞台は、館内にすべてを備えたラグジュアリーホテル以上にないだろう。
何も考えずにホテルの心地よいサービスと空間に身を委ねると、気がつかないうちに溜まっていた疲れも消え去るはず。都内近郊にお住まいの読者も、たまには今回ご紹介したザ・キャピトルホテル 東急のような近場のラグジュアリーホテルで、英気を養う滞在で自分を甘やかしてみてはいかがだろう。
ザ・キャピトルホテル 東急
東京都千代田区永田町2-10-3
TEL. 03-3503-0109
www.tokyuhotels.co.jp/capitol-h/index.html